【町田雪のLA発★ハリウッド試写通信 ♯05】
「LA発★ハリウッド試写通信」では、ロサンゼルス在住のライターが、最新映画の見どころやハリウッド事情など、LAならではの様々な情報をお届けします。

ある日、子どもたちとアイスクリームを買いに出かけた母。ふと気づくと隣には、頭部の骨格に障害のある少女が座っていた。その少女を見上げたとたん、3歳の息子は怯えて大声で泣きだしてしまう。女の子を傷つけまいと、とっさにその場から遠ざかろうと慌てる母。その姿を見た少女の母親は、少女に優しく穏やかな声をかけ、その場から立ち去った――。

母はその後、その親子が過ごしているはずの日常や気持ち、自分がとるべきだった行動、子どもたちに見せるべき大切な態度について、考え抜いた。そうしてその母、R.J.パラシオが執筆したのが、映画『ワンダー 君は太陽』の原作小説「ワンダー」だ。「ワンダー」は、2013年に発表され、全世界で800万部のベストセラーとなった。

「皆とは違う」のは、悪いこと?

主人公は、遺伝子の疾患により、皆とは違う顔で生まれ、宇宙飛行士のヘルメットでいつも顔を隠している10歳の男の子オギー。自宅学習を続けてきた彼は、小学校という外の世界に飛び出すことにより、自他ともに成長していく。ジュリア・ロバーツが母、オーウェン・ウィルソンが父、『ルーム』(2015年)で話題となった天才子役のジェイコブ・トレンブレイがオギー役を演じている。

勇気を出して足を踏み入れた学校の初日、オギーは周りからジロジロ見られ、チャームポイントの髪型をからかわれ、ひとりぼっちでランチを食べる。くじけそうになりながらも、家族の支えを胸に、また学校へ行く。次の日も、その次の日も。そんな彼の健気な姿と持ち前のユーモア、頭の回転の速さに、同級生たちは少しずつ魅了され、思いもよらぬ修了式を迎えることに。

『ワンダー 君は太陽』6月15日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
Motion Picture Artwork (C) 2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

初めて外界へ子どもを送る母が「神様、どうか彼を守って」と思わず口にする胸の内、落ち込んで殻に閉じこもる息子に「パパは大好きな君の顔を見たいんだ」とヘルメットを外す父の笑顔、厳しい挑戦を知りながら、毅然と足を踏み出すオギーの小さな体。愛に溢れる台詞やシーンの連続に、涙腺がゆるみっぱなしになる。

オギーばかり尊重されることへの姉の嫉妬

さらなる同作の魅力は、オギーの奮闘だけでなく、周りの子どもたちの心にも目線を向けているところだ。

オギーが心を開くイケメンでやんちゃな友達が抱える葛藤、オギーをいじめている子どもの驚くべき家庭環境、オギーが両親の関心を一気に集めているためにさみしい思いをしている姉のヴィア。ヴィアが唯一心を許せる仲だったのに、なぜか突然イメチェンし、彼女を避けて新しい友達とつるむようになった友人の女の子の本音……。

『ワンダー 君は太陽』6月15日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
Motion Picture Artwork  (C)  2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

それぞれの悩みに大小なんてつけられない。皆がそれぞれの世界の中で、精いっぱい我慢して悩んで、輝きを放とうとしている。一番つらい立場だと思われているオギーは「いつでも家族の中心にいる太陽で、自分たちはその周りをまわっている惑星なのだ」と、姉が心の声を吐露するシーンは印象的だ。

「人と違うこと」は当たり前

米国に住んでいると、人と違うことは当然で、「普通」という概念が通用しないことを日々感じる。肌の色も体の形も話し方も皆、違ってあたり前。特に筆者が住むロサンゼルスはリベラルだ。

子どもがスポーツチームに所属するときに、ありとあらゆる差別や身体的・精神的いじめ、悪口、物真似などをしないことが明記された“誓約書”に、子ども自身の手で署名することもある。学校のランチタイムは、ピーナッツ・バター・サンドイッチ、ピタ&ハマス、パスタ、カレー、キムチ、おにぎりと、子どもたちの持ってくるお弁当で多国籍料理レストランさながら。

米国の中学校の更衣室ドアに貼られている「いじめ禁止ゾーン」の貼り紙
撮影:町田雪

違うことは、素敵なこと。それでも、オギーが体験するような差別やいじめは、やはりある。それは子どもの世界や特定のエリアに限ったことではなく、世界中の大人の社会にも頻発している。だからこそ、「人は違っていて、それぞれが特別」という同作のメッセージは誰にでも響くものなのだろう。

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同作のなかで好きな台詞がある。「ボクはどうしてこんなに醜いの?」と泣くオギーに、母が自分の顔中のシワを指さして、「私だってシワだらけ」といったあとに、「顔は人の過去を表す地図、未来の地図は心にあるのよ。だから、あなたは絶対醜くない」と力強くいうもの。子どもにとっても大人にとっても、永久保存版の名言だ。

『ワンダー 君は太陽』は、6月15日(金)、全国ロードショー。

(Avanti Press)