テレビドラマ「半沢直樹」「下町ロケット」などの原作者として知られる池井戸潤の小説を初めて映画化した『空飛ぶタイヤ』。男たちの熱い闘いが繰り広げられる中、長瀬智也演じる運送会社社長・赤松徳郎を献身的に支える妻・史絵を好演した深田恭子が、本作への思いとともに、自身の結婚観、家族観についても語った。

長瀬との8年ぶりの共演に歓喜

Q:長瀬さんとは、テレビドラマ「華麗なるスパイ」以来、実に8年ぶりの共演だそうですね。

あれから8年……もうそんなに経つんだなと、正直、時の流れの早さに驚きました。10代の頃から何度か共演させていただいているので、撮影の空き時間には、昔の思い出話とか結構しました。うれしいと同時に、なんだか懐かしい感じがしました。

Q:長瀬さんとの夫婦役はいかがでしたか?

いろいろなものを背負いながら、企業の不正に立ち向かっていく後ろ姿が、男らしくてカッコよかったです。この作品を観て改めて思ったのですが、男性だからこそできる力強いアプローチというか、悪への立ち向かい方ってあると思いました。それは、長瀬さん演じる徳郎だけでなく、どの方にもそれぞれグッとくるものがありました。

Q:映画は池井戸ワールド全開の作品でしたが、ご覧になっていかがでしたか?

不正や圧力と闘う男性陣の熱い思いを通して、“信念”が伝わってきました。みんなそれぞれに“守るもの”があるんだなと。立場ごとに熱い思いがあって、激しく交錯するところがこの作品の面白さであり、見どころです。

Q:とくに深田さんの心に残ったシーンを挙げると?

長瀬さんが、佐々木蔵之介さん演じる同業の相沢さんから重要書類を受け取る前に、“おにぎり”を食べるシーンがあるんですが、腹ごしらえをして、「よし、これから行くぞ!」みたいな戦闘モードに入る感じがすごくカッコよかったです。あのワンシーンをはさむことによって、あんなに印象が変わるものなんだと印象に残っています。

Q:深田さんならではの視点ですね。そのほかにも濃いキャラクターがたくさんいますが、気になる方は?

長瀬さんと敵対関係にあるディーン・フジオカさん演じる沢田課長が印象的でした。自分の会社の不正に対して、徐々に気持ちが変わっていくところに、男の人って組織の中でどういう思いをめぐらせながら生きているのか、組織って、いったいどういうものなのかとか、すごく考えさせられました。ただ、当事者ではないので、やはりわかるようでわからない、というのは正直な感想です。

夫に重荷を背負わさない妻の愛情に共感

Q:悩める社長の妻であり、1児の母でもある史絵を演じて、共感するところはありましたか?

旦那さんが抱えているものがあまりにも大きいので、それを一緒に悩むのではなく、史絵は妻ならではの視点で、明るく前向きに励まします。例えば、子供が学校でいじめられたときも、夫に相談せずに解決してから報告するところが、「これ以上、重荷を背負わせない」という史絵の深い愛情です。普通は旦那さんに相談して、気持ちを共有したいと思うものですが、そこをぐっとこらえて1人で解決してしまうところが、彼女の強さだと思いました。

Q:いじめに対しての毅然とした行動力もすごいですよね。

真正面から対峙する史絵の行動力は、確かに大胆で驚きました。あれは、自分の気持ちや真実を、誠実に伝え続けたからこそ実現できたこと。決して攻撃的に向かっていったのではないと思います。自分を取り巻くコミュニティーの中で、どのような方法が最善か、あくまでも冷静に考えた結果だと思います。わたしだったら、ここまで気丈にはできないと思います。

Q:やはり、夫婦愛や家族愛が原動力になっているということですよね?

もちろん、そうです。守りたい家族があるからこそ、ここまでがんばれたのだと思います。史絵もそうですが、この映画自体、どのキャラクターに自分を置いても、何かしら守るべきもの、失いたくないものがあって、本当に考えさせられる物語だと思います。誰かが行動を起こさなかったり、口を閉ざしてしまったりするだけで、状況が一変してしまうので。

夫婦の絆がなければ家族は語れない

Q:本作で献身的な妻を演じて、結婚観や家族観が変わりましたか?

すごく変わったということではないのですが、やっぱりいつかは結婚したいなと思いました。ただ、母親になることとか、理想の家族像とか、今はイメージできないというのが正直なところです。今回の作品もそうですが、まず、旦那さんと奥さんの間に夫婦としての強い“絆”がないと何も始まらない。お互いを尊重し、支え合うという基盤があって初めて、子供のこと、家族のことが語れると思います。

Q:今回、長瀬さんをはじめ、たくましい男性陣がたくさん出てきますが、もし旦那さんにするなら?

わたしは何があっても“折れない人”が好きなので、岸部(一徳)さん演じる巨大企業の上役は、すごいと思います。もう、何があっても折れないじゃないですか。どうしてこんなに強靭な人になったんだろうと(笑)。昭和のバリバリ働く企業戦士というか、そこは敵役ながら、たくましいと感じました。

Q:意外なお名前が出て驚きました(笑)。

あくまでも極端なことを言えばっていうことなんですけどね(笑)。でも、家庭的な面がこの映画の中では感じられないし、総合的に考えると、やっぱり長瀬さん演じるわたしの旦那さんが1番! 仕事はもちろんですが、家族思い、従業員思いなところが本当に素敵だと思います。

取材・文:坂田正樹 写真:日吉永遠