6月23日公開の『ブリグズビー・ベア』は、クマの着ぐるみをめぐる、ちょっぴりダークなコメディ。外部と遮断され、両親と3人でシェルターで暮らし続けた主人公が、社会に出て真実に触れていく物語です。

過去にも、外部と遮断された生活を送っていた主人公が、外の世界への一歩を踏み出す姿を描いた作品がありました。生まれながらの文化や価値観を根幹から揺るがす世界に出合った時、主人公たちはどんなリアクションをしたのか? 本当の幸せ、価値観について考えさせられる作品たちの魅力に迫ります!

外の世界の広さを知った時、少年の目に映るもの…『ルーム』

『ルーム』(2015年)の舞台になっているのは、天窓しかなく、出入り口も施錠された狭い部屋。主人公の5歳の男の子ジャックは、ここで母親のジョイと暮らしています。実はこの2人、ある男の手により、7年もの間監禁されていたのです。

ジャックにとって、生まれ育った小さな部屋こそが世界の全てでした。そこが異様な世界であると知らない少年は、テレビの中のものは全て偽物だと教えられ、優しい母親との狭い部屋での日々を穏やかに、幸せに暮らしているように見えます。

しかし、ある日、ジャックはテレビの世界こそが本当なのだと知ることに。ジョイはジャックに外の世界を教えるため、部屋からの脱出を試みます。ジャックが初めて外へ出たシーンでは、それまでの暗い部屋の中と対比して、どこまでも広く青い空に、ジャックが眼を見張る姿が印象的です。

失われた時間を取り戻したい母親と対照的に、全く新しい世界へ飛び出し、謎だらけで不安だらけのジャックは、外の世界を「宇宙」だと言います。そして、監禁されていた部屋へ帰りたいとすら願うのです。子供の頃に感じた、新しい世界への不安な気持ちと、果てしない可能性を思い出す作品です。

普通でいることが幸せなのか?を問う…『はじまりへの旅』

現代社会に反発し、他者と関わることなく雄大な森深くに暮らす主人公、ベン・キャッシュと6人の子供たちの姿を描いた『はじまりへの旅』(2016年)。電気もガスも、携帯の電波も届かない土地で、彼らは狩った獲物を食べ、裸で暮らす自給自足のサバイバル生活をおくっています。ベンは子供への愛ゆえに、自分の全てを注ぎこみ子供たちを育てます。その甲斐あって、子どもたちはアスリート並みの体力を備え、6ヶ国語を操る頭脳の持ち主です。

ベンたちのサバイバル生活はちょっとハードな気がしますが、毎日が冒険のよう。激しいトレーニングをしたり、のびのびと本を読んだり、裸で生活をしたりと楽しそうです。都会の生活に疲れた人は、「こんな生活がしてみたい!」と思ってしまうかもしれませんね。しかし、母親の死をきっかけに、彼らは“普通”の生活をすることになります。初めて見るコーラもホットドッグも、子供達には未知のもの。魅力的に映るのに、「毒」と言い切るベンの姿からは、現代社会への強い拒絶を感じます。

しかし、普通でない彼らは、普通に暮らす親戚から見下されてしまいます。普通の人達より、身体能力も頭脳も優れているのに、普通でないことだけで世間から白い目で見られてしまうという不思議。普通でないことは不幸なのか? 映画を観た後に、家族で語り合いたくなる作品です。

時代が変わっても揺るがないもの…『タイムトラベラー ~きのうから来た恋人~』(1999年)

『タイムトラベラー ~きのうから来た恋人~』(1999年)の主人公は、生まれてから35年間にわたって核シェルターの中で過ごしてきたアダム。彼の父親カルヴィンは天才的な発明家で、1962年のキューバ危機の際に、臨月を迎えた妻ヘレンと共に、自らの手で作った核シェルターに立てこもることに。そのまま閉じ込められてしまい、そこで生まれた子供がアダムでした。

アダムはカルヴィンの教えに従って、時代遅れな50年代紳士に成長。しかし、35年後の1997年にシェルターのロックが解除されたことで、アダムたちは外に出ることになります。

この作品では1960年代と1990年代のギャップが鮮明に描かれており、ほんの35年で変わった時代のスピードに驚いてしまいます。きれいな街並みが失われ、ポルノショップが並ぶのを見て、カルヴィンが倒れてしまうのも無理がありません。しかし反対に、息子のアダムは初めて見るものに大げさに感動し、はしゃぎまくるのでした。見た目は大人なのに、純粋な心をもっているのはわかりますが、ちょっと笑ってしまいます。

はじめは時代錯誤なアダムのことを馬鹿にしていた周りの人々も、次第に彼の純粋な、そして相手を敬うことを忘れない真摯な人柄にひかれるようになります。ふるまいや考え方こそ時代遅れでも、相手を敬いゆずり合い、認め合えれば、価値観の差を乗り越えることができる……。そう思わせてくれる作品です。

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もし、誰かが自分を閉じ込めるために作った世界だと知らずに、そこで過ごしていたとしたら? 今回紹介した3作品は、往年の名作映画『トゥルーマン・ショー』(1998年)を彷彿とさせるシチュエーションですが、かの主人公トゥルーマンのように、勇気をもって新しい世界の扉を開けるべきなのかもしれません。

外の世界を全く知らず、毎週、楽しみに観ているテレビ番組すら作りもので、両親も偽物だった……。そんな、天地がひっくり返ったような世界へ放り込まれながらも、新しい一歩踏み出そうとする主人公の姿を描いたのが、6月23日公開の『ブリグズビー・ベア』です。

今の生活に行き詰まりを感じていたり、今いる場所で居心地の悪さを味わっていたりするなら、この作品たちを観て一歩踏み出す勇気をもらってはいかがでしょうか。

(文/サワユカ@H14)