死んだ人の姿が見えてしまう八雲御子の仕事は、事故物件に住み込んで事故の履歴を帳消しにする“ルームロンダリング”。池田エライザ演じる御子と出会う虹川亜樹人にふんした健太郎が、撮影の裏話や今後の目標について語った。

ルームロンダリングって?

Q:最初に映画『ルームロンダリング』の企画を聞いたとき、どう思いましたか?

マネーロンダリングは知っていましたがルームロンダリングってなんだろう? と思いました。いわゆる事故物件も、誰かが一度住むとその過去は浄化されたことになるというシステムって不思議ですよね。それを映画にするという発想が面白いと思いながら脚本を読みました。しかも、死んだ人が見える女の子が主人公なのに、映画自体は想像よりコミカルで、皆さんの予想を裏切ってくれると思います。

Q:ご自身が演じた虹川亜樹人は、御子の新たな引っ越し先の隣人ですよね? 

脚本から想像したキャラクターと監督の考える亜樹人像に、大きくズレた部分はありませんでした。彼は御子ちゃんとどこか相通じるところがあるんです。御子ちゃんは絵を描くのが好きで、亜樹人は小説を書いている。それでいて他人と話すのが苦手で、似ていると言えば似ていると思いました。

Q:御子のような女の子をどう思います?

御子ちゃんって恋愛に興味がなさそうというか、人を好きになるのを避けているように見えるから、そういう子がもし自分に男として好きという感情を抱いてくれたとしたらうれしいと思います。きっと簡単なことでは異性に惹かれたりしないだろうから、よっぽど強く想ってくれたのだろうなと思うから。

Q:ヒロインの御子を演じた池田エライザさんと共演した印象は?

ご一緒したのは初めてです。僕が観ていた作品で池田さんは、天真爛漫で明るい女の子を演じていることが多かったので、そんなイメージを持っていたのですが、実際にお会いするとどこか御子ちゃんと似ているところがあるなと。御子ちゃんと同じように漫画を描くのが上手かったり、読書がとても好きだったり。アーティスティックな部分を多く持っているのはちょっと意外に思えました。

Q:お芝居をする相手としての印象は?

撮影現場に入るとまさに亜樹人と御子ちゃんの関係のようで、最初のうちは話すこともあまりなかったのですが、劇中二人の距離が近づくにつれて、よく話すようになりました。別に役柄を意識していたわけではないのですが、僕も池田さんも人見知りなところがあるらしくて。二人が初めて心を通わせるシーンを撮ったあたりから会話する回数が増えた気がします。この映画ではほかの出演者の方も、それぞれに本を読んだり音楽を聴いていたり自分の時間を大切にする方が多く、みんなでにぎやかにおしゃべりをする感じではありませんでした。別に空気が悪いわけではないですよ (笑)! とても大人な撮影現場でした。

家訓は「人に迷惑をかけるな」

Q:ちなみにご自身は霊感があります?

ないです。だから、霊感のある人ってどんな気持ちなのだろう? って。劇中で御子が「人間のほうがコワイ」と言いますが、僕としてはお化けのほうがコワイんじゃないかなと(笑)。見えないから余計にそう思います。

Q:御子の家庭には「泣くな、笑え」という教えがあります。ご自身の家族に家訓はありましたか?

「人に迷惑をかけるな」ってことでしょうか。でも学生時代は友達とたくさんケンカをしたり、やんちゃなこともして、いろいろな方に迷惑をかけていたかも。がんばってその瞬間を生きていました(笑)。決して優等生と呼べるような格好いいタイプではなく、ただ友達といるのが楽しくて遊んでばかりいました。

Q:昨年二十歳を迎えて、心境に変化は?

お酒を飲めるようになったとか、周りから大人として扱われるようになるという変化はあります。でもそれで自分が大人になったかというと、そうでもないなって(笑)。十代の頃の自分が思っていた大人像に近づきたいとは思っているのですが。

目指すのは“カメレオン俳優”

Q:一生俳優をやろうという覚悟を決めたきっかけは?

たぶん、最初に受けたオーディションのときにそう決めました。でも具体的なきっかけはどこだろう? テレビドラマ「昼顔~平日午後3時の恋人たち」ではすごくしごかれたし、映画『ミュージアム』でも……その思いを強くさせる作品がいくつかありました。でも一番強く感じたのは、初主演映画の『デメキン』かも。そのときに感じたものは、その後の作品に大きな影響があったと思っています。

Q:もっと主演をやりたいという思いが?

もちろんそうした気持ちはありますが、あのときに感じたことをどんな作品でも忘れちゃいけないと思っています。だからときどき『デメキン』を見返しています。この作品ではキャストみんなが「自分が主演!」くらいの意気込みで参加してくれていたのを感じ、それが主演としてうれしかったんです。そういう思いがあればきっといい作品になるはずで、自分も常にそんな意気込みを持って役に挑みたいと思わせてくれた共演者のみんなに感謝しています。

Q:理想とするお芝居は?

僕だと気づかれたくないんです。顔の作りのせいか、髪型によってまったく印象が変わると言われます。それプラス、演技力を磨いて幅広い役柄を演じられるようになりたい。こういう役柄をやる傾向のある役者ではなく、どんな方向の役柄でも演じられるような役者になりたいと思っています。

取材・文:浅見祥子 写真:尾藤能暢