芥川賞作家の町田康が2004年に発表した同名小説を、宮藤官九郎の脚本で映画化した『パンク侍、斬られて候』が6月30日(土)に公開されます。主演の綾野剛をはじめ、北川景子、東出昌大、染谷将太、豊川悦司など、人気俳優が大挙して出演するなかで、今回は本作で久しぶりの共演を果たす永瀬正敏と浅野忠信に注目。しかもメガホンを取るのは、2人とも縁の深い不世出の異才監督・石井岳龍だけに、90年代の日本映画をよく知るファンであれば、特別な思い入れを感じてしまうはず!

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しゃべらない大悪党と猿の将軍!?名優たちの意外な役回り

『パンク侍、斬られて候』は、江戸時代を舞台に、ある隠密ミッションの発令によって始まった“ハッタリ合戦”を、ハイテンションに描いた異色時代劇。主演の綾野剛が自称“超人的剣客”の浪人・掛十之進を演じ、彼の“ハッタリ”を発端にして12人のクセ者たちが次々と現れ、怒涛の展開が繰り広げられていきます。

浅野が演じているのは新興宗教“腹ふり党”の残党・茶山半郎。悪虐非道な性格で知られる元幹部で、党の再興に乗り出すという設定です。

「石井監督とやるときは『メチャクチャやってやろう』と心に決めていました。こんなメチャクチャなことをやるのは石井組でしかないので散々はじけさせてもらいました」と浅野自身がコメントしているように、衣装や演技も超破天荒。緑のド派手な着物に身をつつみ、顔には奇妙なタトゥーがビッシリで、「ギャー!」とか「グゥアー!!」など、言葉にならない咆哮を放ちながら文字通りの大暴れを披露しています。

一方、永瀬が演じるのは、人間の言葉を巧みに操る猿・大臼延珍。国中の猿たちを自在に操る特殊能力を持つ猿の彼が、ひょんなことから腹ふり党との戦いに身を投じます。

近年、『あん』(2015年)などの河瀨直美監督作品でカンヌ映画祭の常連になっている名優・永瀬が、顔の原型を留めない大掛かりな特殊メイクで大猿に変身。完全に猿化した彼が他のキャストと渡り合う姿はどこかユーモラスです。演じる永瀬は「石井監督の作品は4回目なんですけど、呼んでいただける度にとても嬉しいです」と喜びをストレートに表現しています。

日本を代表する2人の演技派俳優に、クセの強いキャラクターを託した石井監督。浅野について「独特の存在感があり、誰が見てもエキセントリックな感じが出せる人」と評し、永瀬について「打ち合わせの際にニホンザルに徹する、と言ってくださった永瀬さんに、この人しかいないと確信できました」とコメントするなど、全幅の信頼を寄せています。

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石井岳龍作品での“再共演”で見せた2人のパンク精神

今作で久しぶりに顔をそろえた永瀬正敏&浅野忠信の共演に、心を躍らせたファンも少なくないでしょう。映画にこだわり、作品の規模よりも質を追求してきた2人には、佇まいやそのスタンスに近いものを感じます。

『沈黙 –サイレンス-』(2016年)や『マイティ・ソー』シリーズなどのハリウッド映画にも出演している浅野ですが、そんな彼が海外進出する前から“憧れの俳優”と明かしていたのが、永瀬正敏その人でした。

永瀬正敏といえば、前述した河瀨直美作品や『64-ロクヨン-』(2016年)などで見せる、静謐な佇まいが印象に残っているかもしれませんが、90年代は前衛的な作品に積極的に参加。当時10代だった浅野が憧れるにきっかけになったというジム・ジャームッシュ監督の『ミステリー・トレイン』(1989年)や、アメリカのハードボイルド小説を思わせる「私立探偵 濱マイク」シリーズ(1994~2002年)などはその代表例です。映画にこだわり続ける姿勢や、その作品選び、独自のセンスを醸すファッションスタイルまで、浅野のみならず、永瀬が当時の映画界に与えた影響はとても大きいものでした。

そんな永瀬と浅野が、石井岳龍(石井聰亙)監督とタッグを組んだのが、2000年公開の『五条霊戦記 GOJOE』と2001年公開の『ELECTRIC DRAGON 80000V』です。前者は、“牛若丸と弁慶”の物語を大胆な解釈で映画化したサイバーアクションであり、後者に至ってはカテゴライズ不可能な“ハイパー・エキサイトメント・電撃ロックムービー”。『ELECTRIC DRAGON 80000V』では、役者と監督という関係を飛び越え、石井監督と2人が競作して作り上げたといわれるほど、熱量を爆発させた現場だったそうです。

どんな奇抜なキャラクターであっても、全身全霊で作品に臨み、弾けまくることができるのは、彼らがパンクな作品で共闘した歴史あってこそかもしれません。

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キャリアや年齢的にも、ベテランの域に差し掛かり、重厚な存在感を発揮する役回りが多くなった2人。彼らが久しぶりにそろってアナーキーな石井作品に参加し、見せてくれるのは、リミッターを解除した怪演の数々。どこか楽しそうな熱演は、彼らが変わらず“パンク”であり続けていることを再確認させてくれます。

(文/スズキヒロシ・サンクレイオ翼)

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