文=木俣冬/Avanti Press

4月~6月のドラマを振り返って、視聴率的には一桁台の作品が多かったなか、日曜劇場「ブラックペアン」(TBS)は全話10%台で最終回は18.6%まで上がり圧倒的だった(ビデオリサーチ調べ 関東地区)。

「ブラックペアン」Blu-ray BOX/DVD-BOX 11月28日(水)発売
発売元:TBS 発売協力:TBSサービス 販売元:TCエンタテインメント
(c)海堂尊/講談社 (c)TBS

医療ものは強いとくくるのは簡単だが、昨今の医療ものに多い、予定調和の一話完結ものを見る安心感とはやはり違っていたと思う。サスペンス色が強く、患者のカラダに残されたままだったブラックペアンの真相や主人公・渡海(二宮和也)のダークな雰囲気、彼の最大の敵・佐伯(内野聖陽)との関係性など意外な展開に最後までハラハラし通しだった。

脚本・演出力も光る“番狂わせ”な最終回

月刊誌『TV Bros.』で私が連載しているテレビドラマのコラムに、“今期のドラマはある瞬間ハッとさせられる脅かし系のものが多かった”と書いた。一時期量産されていた、「水戸黄門」の何時何分には印籠が出るというように起承転結の構成がしっかりできていて安心して見られるドラマとは違った、“番狂わせ”みたいなものを目指すドラマが増えた気がする。

例えば、月9「コンフィデンスマンJP」(フジテレビ)は悪いことをして大金を稼いでいる人たちを騙して大金をせしめる信用詐欺師の話で、これ自体は毎回ある種のパターンを踏襲していたので、安心して見ていたら、最終回でフェイントをかけて来た。

毎回毎回騙し騙されのラリーを楽しんでいたので、最後はきっとラスボス的な人物との戦いになると想像するも、ひっくり返しはそこではなく、脚本家・古沢良太はまったく予想していなかった時系列の部分でひっくり返しを起こした。

最終回は、第一話よりも前の話、いわゆるエピソード0だったことには、心底ヤラれた! という気持ち良さ。これは映画にも舞台にもない、連続ドラマならではのカタルシスであるし、二度と使えない武器を惜しげもなく使ったといえるだろう。一試合完全燃焼の、古沢良太の作家としての潔さは尊い。

「コンフィデンスマンJP」DVD-BOX 9月19日(水)発売
発売元:フジテレビジョン 販売元:ポニーキャニオン
価格:DVD-BOX¥19.000(本体)+税、Blu-ray BOX¥23,500(本体)+税
(C) 2018フジテレビ ※ジャケットは監修中です

「あなたには帰る家がある」(TBS)は、中谷美紀と玉木宏演じる夫婦と、木村多江、ユースケ・サンタマリア演じる夫婦が玉木と木村の過ち(役の上です)に端を発する崩壊と再生を描いたドラマ。

人間の倫理観を追求する話ながら、玉木を追いかけ続ける木村の怪演によって話が弾んだのと、最後の最後まで、二組の夫婦の関係性が二転三転するところをノリの良い演出で見せた結果、最終回に明かされるユースケ・サンタマリア演じる夫の心情に驚愕させられた。脚本と演出と演技のトリプルプレーも見事だったが、なにより、迫りくる木村に恐怖する玉木のリアクションも鮮やかで、彼には勝手にリアクション大賞を差し上げたい。

「あなたには帰る家がある」DVD-BOX 9月28日(金)発売
発売元:TBS 発売協力:TBSサービス 販売元:TCエンタテインメント
(c)山本文緒/KADOKAWA  (c)ドリマックス・テレビジョン/TBS

「花のち晴れ~花男 Next Season~」(TBS)も、主人公(杉咲花)が平野紫耀(King & Prince)と中川大志のどちらを選ぶか、そこに飯豊まりえも加わって……という恋愛の混戦劇。

恋愛もののひとつの王道で、最後の最後まで主人公が揺れ続け、平野VS中川の剣道の試合で決着が……となり、その勝敗が偶発的なものというやや肩透かしに思えたが、その平野演じる晴(ハルト)は第一話でも偶発的なことを起こしたことからドラマがはじまっていて、全話が円環をつくっている。わらしべ長者じゃないけれど、予想し得ない、それも小さなことによってドラマは起こるのだという視点が面白かった。最初から最後まで、 運の強さでなんとかなってしまう状況を晴役の平野がいい感じに肩の力を抜いて演じていた。

「花のち晴れ~花男 Next Season~」Blu-ray BOX/DVD-BOX 10月26日(金)発売
発売元:TBS 発売協力:TBSサービス 販売元:TCエンタテインメント
(c)神尾葉子/集英社・TBS

役者の演技熱に引き込まれた秀作揃い

いま、挙げたドラマは皆、一話だけ見れば済むのではなく、全話を見ることで満足するように終盤のうねりに力が注がれている。過去と現在が謎のトランシーバーでつながるミステリー「シグナル 長期未解決事件捜査班」(カンテレ・フジテレビ)や、幸福の絶頂で陥れられた男が這い上がって戻ってきて復讐をはじめるサスペンス「モンテ・クリスト伯—華麗なる復讐—」(フジテレビ)などは一回見そびれるとわからなくなるため、必ず続けて見たい構成のうえ、毎回それぞれショッキングな描写があって、その刺激が次回の興味にもつながっていく力強い脚本と演出だった。

「シグナル 長期未解決事件捜査班」9月12日(水)発売
出演:坂口健太郎、北村一輝、吉瀬美智子、渡部篤郎
発売元:カンテレ 販売元:ポニーキャニオン
価格:DVD-BOX¥20.900(本体)+税、Blu-ray BOX¥25,850(本体)+税
(C) 2018 カンテレ

とりわけ「モンクリ」の西谷弘のハードボイルドな演出、「シグナル」の北村一輝の役の懸命さを伝える強烈な演技に惹きつけられた。

「モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-」11月21日(水)発売
発売元:フジテレビジョン 販売元:ポニーキャニオン
価格:DVD-BOX¥19,000(本体)+税、Blu-ray BOX¥23,500(本体)+税
(C) 2018フジテレビ ※クレジットは監修中です

続けて観ているうちにどんどん登場人物を好きになり応援し最後まで見続ける、その満足感の最高峰といえば「おっさんずラブ」(テレビ朝日)だ。

構造は「花のち晴れ」と同じ、主人公(田中圭)がふたりの男性(吉田鋼太郎、林遣都)の間で揺れるものだが、主人公も男、すなわち“全員、男”にした意外性によって、人を好きになる熱情と誰かと思い思われる多幸感などを描いたオーソドックスな恋愛ドラマが新鮮なものに生まれ変わった。

脚本も俳優も、真面目に人間の誠意に心を注いでいたことが好感度につながったと思う。視聴率は高くなかったが、ネットユーザーを中心に視聴熱は高く、番組終了後に関連本が発売されることが発表になったり、主役の田中圭が表紙巻頭になった『TV Bros.』が発売前に重版されたりと話題に事欠かず、視聴率の高低で語られることの多いテレビドラマに、別の話題がもたらされたことが喜ばしい。

田中のやけに鍛えた身体の筋線維の密度が、出来事に反応する感情表現を繊細かつ的確なものにすると教えられた気がして、田中圭には勝手にビビッドな演技大賞を差し上げたい。

「おっさんずラブ」DVD・Blu-ray 10月5日(金)発売
価格:Blu-ray 21,600円+税(5枚組)/DVD 17,100円+税(5枚組)
発売元:テレビ朝日 販売元:TCエンタテインメント
「おっさんずラブ」DVD・Blu-ray発売決定!!! セルBOXには特典ディスク付き!
未DVD化だった伝説の2016年のスペシャルドラマ版「おっさんずラブ2016」を収録!

演技といえば、新井英樹の漫画を真利子哲也が演出した「宮本から君へ」(テレビ東京)に主演した池松壮亮の無様なまでに這いずり回る主人公の姿と、彼の先輩役・松山ケンイチの妙なふてぶてしさが迫真で、飛び道具いっさいなしの秀作だった。こういうドラマも残ってほしい。

「宮本から君へ」10月3日(水)発売
発売元:「宮本から君へ」製作委員会 販売元:ポニーキャニオン
価格:DVD-BOX¥14.000(本体)+税、Blu-ray BOX¥17,000(本体)+税
(C)「宮本から君へ」製作委員会

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冒頭、今期は、安心して観られるドラマではなく、“番狂わせ”みたいなものを目指そうとするドラマが増えた気がする、と書いた。作り手が、観たことのないドラマティックなものを作り出し、視聴者の心を震わそうと、模索しているのを感じる。テレビドラマはまだまだ可能性がある。