文=高村尚/Avanti Press

毎月公開される高校生の恋愛を描く青春映画。その多くは、少女マンガが原作だ。だから当然のように主人公は少女。なのだが、2018年、主人公の在り方に変化が見えた。

それは、主人公が女子から男子に置き換えられていること。悩みや心情を一人称で吐露するのは男子となるが、男子高生を主人公にした場合、切ないほど純粋に相手を思う“キラキラ”だけでは恋心は描けないようで、時に“ギラギラ”、時に“むっはーん”と青春臭が漂うのが特徴となっている。

思わずバカだね~と言ってしまう!『虹色デイズ』

まず、7月6日公開の『虹色デイズ』から紹介していこう。

佐野玲於、中川大志、高杉真宙、横浜流星のカルテットが主演する『虹色デイズ』。バカをして笑って悩んで恋をする4人の高校生男子の恋愛模様が、躍動感あふれる映像で描かれる。

杏奈(吉川愛)に気持ちを伝えたいがうまくいかない奥手ななっちゃん(佐野)、男嫌いのまり(恒松祐里)に惹かれてしまうチャラそうに見える男まっつん(中川)、コスプレ好きで大人なゆきりん(堀田真由)を彼女に持つオタクでマイペースな秀才つよぽん(高杉)、周りに感化されて本当の恋がしたくなるドSのモテ男・恵ちゃん(横浜)。皆が口にする、しょうもない恋の本音が楽しい。

悶々とした思いを抱えた4人が季節外れのプールに飛び込んでいく場面には、思わず「バカだね~」と『男はつらいよ』のタコ社長ばりの言葉が口を衝いて出る。でも言葉とはうらはら。この美しい場面の持つ熱量に、そんな瞬間をも謳歌している彼らに、いつのまにか魅了されているのに気づく。GENERATIONS from EXILE TRIBEではキレキレのパフォーマンスを見せる佐野玲於のヘタレっぷりもキュート。

『虹色デイズ』7月6日(金)より全国ロードショー
(C)2018『虹色デイズ』製作委員会(C)水野美波/集英社

強くたくましいイケメンバカ!『走れ!T校バスケット部』

続いて、11月3日公開の『走れ!T校バスケット部』。名門校の元エースを演じる志尊淳を核に、佐野勇斗、戸塚純貴、佐藤寛太、鈴木勝大、西銘駿、阿見201が個性的なバスケット部員として活躍する。

バスケの強豪私立高校に特待生として入学した主人公が、いじめに遭って転校。編入した都立高校のなんとも頼りない弱小バスケ部を、ひょんなことから盛り立てることになる、汗と笑いと涙と恋の青春スポーツドラマ。

ドラマ「女子的生活」(NHK)のトランスジェンダー女子、NHK連続テレビ小説「半分、青い。」のゲイの美青年漫画家と、中性的な役が続く志尊淳が、元来の身体能力の高さに、元日本代表による特訓を加え、“バスケットの特待生”という設定を納得させる激しいアクションを見せる。

志尊とは、“かわいい”ライバルである千葉雄大もイケメン教師役で出演。

『走れ!T校バスケット部』11月3日(土)より全国ロードショー
(C) 2018「走れ!T校バスケット部」製作委員会

可能性が分からないから『あの頃、君を追いかけた』

そして、10月公開予定の『あの頃、君を追いかけた』。山田裕貴、佐久本宝、國島直希、中田圭祐、遊佐亮介が、最初から最後までわちゃわちゃしっ放しで、恋とそれぞれの未来を追いかける青春ドラマ。

規則の厳しい地方の高校に通う彼らは、未開の才能を抱えた、やればできる子たち。だが様々な可能性を持つものの、高校生の多くがそうであるように、それがどう花開くか自身の未来を知るはずもなく……。そんな誰もが抱えるもやもやを、自転車を飛ばし、肉まんを食べ、中国武術で汗を流しながら解明していこうとする。

春ドラマ「特捜9」(テレビ朝日系)では生意気な新米刑事役がキュートと話題になった山田裕貴が、何者かになりたい! 優等生の真愛(齋藤飛鳥)とつきあいたい! とあがく主人公、浩介像を、自らも様々なアイデアを出して魅力的なキャラクターに作りあげた。

浩介のアホで切ない恋を見守るのと同時に、他では観られない演技を披露するこの二人にも注目してほしい。まずは恋することで頑なな心を少しずつ開いていくヒロインを、映画初出演ながら自然に演じてみせた乃木坂46の齋藤飛鳥、そして実写ドラマ「この世界の片隅に」(TBS系)のすず役で注目される松本穂香が、本作で見せるボーイッシュな色気など。

本作は、若手俳優が花開くところを目撃する映画なのかもしれない。

『あの頃、君を追いかけた』10月より全国ロードショー
(C)『あの頃、君を追いかけた』フィルムパートナーズ

男子わちゃわちゃ高校生恋愛映画。実はこのドラマの系譜!?

冒頭でも記したように、この3作品の主人公は、男子高校生。主人公が女子高生の映画との大きな違いは、もやもやが煮詰まると“バカ”をするというところ。季節外れのプールに飛び込む、自転車で全力疾走する、雨の中を走る、殴り合う、じゃれ合う……。ささやかなバカなのだが、そうやって頭をカラにしてクールダウンしなければならないほど、熱を帯びる男子たち。

『虹色デイズ』7月6日(金)より全国ロードショー
(C)2018『虹色デイズ』製作委員会(C)水野美波/集英社

このジャンル、本来の観客層である“女子”の観方は、共感するのではなく、距離をおいて熱を帯びた彼らを観察するスタンスとなる。春ドラマのダークホースとなったドラマ「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)が支持されたのもそこ。イケメンたちが織り成す物語を、客観的に観ることができたからだと思う。『虹色デイズ』のキャッチコピーにある“この夏、本気で恋をする”男子の心情を、火の粉のかからないところから分析できるというわけだ。

偶然にも、『走れ!T校バスケット部』の脚本は「おっさんずラブ」の徳尾浩司。バスケットボールにのめり込む、ちょっと“おバカ”な男子らが、妙にいとおしく描かれている。

青春恋愛映画のジャンルに新風が吹いた

恋する女子の気持ちを丁寧に紡ぐことで成立させてきた高校生の恋愛ものを、構図自体は決して新しくないのだが、男子の側から描くことで青春恋愛映画のジャンルに新風が吹いた。

『走れ!T校バスケット部』11月3日(土)より全国ロードショー
(C) 2018「走れ!T校バスケット部」製作委員会

観客となった女子は、物語に自分の気持ちを重ねる代わりに、じゃれ合い、がむしゃらに走り、弱音を吐き、肩を組む彼らを、大笑いし、やれやれと思いながら、温かく見守る。そうしているうちに、今度は自身の熱が高まっているのに気づく。嬉しいかどうかは別として、リアルな世界ではありえない、彼らがふざけ合う輪の中に入る(近づく)ことで、触発され、熱が伝播してくるからだ。

10月12日には、主演の中川大志が、健太郎 甲斐翔真 若林時英らとともに、キュートなヘタレ男子を演じる『覚悟はいいかそこの女子。』も公開される。今年後半は、ぜひ彼らの世界にどっぷり浸る映画の楽しみ方を味わってみては?