1984年に公開された伝説的なロック映画『ストリート・オブ・ファイヤー』が、7月21日(土)からデジタルリマスター上映されます。

街でも名の知れたワルだった主人公が、ストリートギャング「ボンバーズ」から、かつての恋人を取り戻す……。アメリカ青春映画らしい王道の物語と、ド派手なアクション、ロックなBGMで1980年代に大ヒットした同作。ギャングのボス・レイブンをはじめ、作中には敵も味方もひっくるめて、魅力的な悪党が次々と登場します。

このハードボイルドな世界観の中で、観るものを虜にするような悪党の生きざまこそ、ウォルター・ヒル監督作の魅力的なところ。さらに、本作を含めた、監督が脚本も手掛けた作品では、彼らの思わず痺れてしまうような“決め台詞”もたまりません。今回は、そんなウォルター・ヒル監督&脚本作品の魅力を紹介したいと思います。

『用心棒』がハードボイルドな西部劇に!…『ラストマン・スタンディング』

黒澤明監督の『用心棒』(1961年)を、ウォルター・ヒル監督が西部劇にリメイクしたのが『ラストマン・スタンディング』(1996年)です。舞台となるのはメキシコの国境にほど近い、砂漠の真ん中にポツリとある町。禁酒法時代のアメリカで、酒を密輸する2つのギャングの抗争を描いています。

ブルース・ウィリスが演じる本作の主人公は、ジョン・スミスを名乗る正体不明の男。国境を越えてメキシコへと逃げる途中のようですが……。それ以外の過去は一切語られず、ただ冒頭で「俺はいつも追われていた/追われるのは平気だ/逃げる途中でも罪を犯す」といった、彼のモノローグが流れるだけ。『用心棒』の主人公・流れ者の三十郎ともまた趣の違った、悪党の流儀を感じさせるセリフに、早くもハードボイルドな気配が漂います。

ジョンは三つ揃えのスーツ、グレーのボルサリーノという紳士の装いですが、そこはブルース・ウィリスのこと。スマートなギャングの型にはまらない、男臭さを感じさせます。そんな彼独特のキャラクターが見事にハマったのが、殺し屋ヒッキーとその手下たちに、襲われたシーンです。

バスタブで入浴中だったジョンは、ヒッキーたちから一斉に銃口を突き付けられます。かすかに震えるジョンでしたが、「怖いのか?」との問いに、「湯が冷めたのさ」と強がりで返すという、この言い回しがいいですよね。「そうそう、そうこなくっちゃ!」と思うような、ツボにハマる台詞があふれているのが、ウォルター・ヒル監督が手掛ける脚本の魅力といえます。

男から女へ、姿を変えられた殺し屋の復讐劇…『レディ・ガイ』

2016年に公開された『レディ・ガイ』も、物語は主人公フランク・キッチンのモノローグから始まります。「俺は大勢を殺してきた/どいつも価値のない虫けらどもだった/でも人殺しはよくない」というその口ぶりは、どこか『ラストマン・スタンディング』を彷彿とさせるもの。ただ、その後のストーリーは、ハードボイルドとはある意味で真逆の展開を迎えます。

フランクは裏社会でもその名を知られた殺し屋ですが、裏切者に襲われたとき、銃撃戦の末に傷を負って倒れてしまいます。そして、目が覚めたとき、彼は女の姿になっていました。意識を失っている間に、フランクは強制的に性転換手術をさせられていたのです。ここから彼、改め彼女の復讐劇が始まります。

フランクの殺しのスタイルは、二丁拳銃で次々とターゲットをしとめるという、『ラストマン・スタンディング』のジョンに似たもの。ただ、その手口は彼のようにド派手なアクションというわけではなく、むしろその美貌にマッチした、極めてスタイリッシュなものでした。勝手に性転換された直後こそ、その動揺もあって激しい怒りをみせたものの、フランクは基本的に寡黙な人物です。特に殺しのときには、感情を押し殺して行動しているようで、淡々とターゲットを射殺していきます。そこには、冷たくも鋭い彼女の怒りが感じられます。

それと同時に、彼女の復讐劇は、まるでかつての自分を取り戻そうともがいているようでもあります。「フランクらしさといえば/この銃しか残っていない」と語るように、彼女が最も信頼する45口径の拳銃。それを振りかざす姿は、ただ凄惨なだけでなく、どこか美しいとさえ思えるのです。

エンドロールには「45口径は常に真実を語る/善行にも悪行にも銃は使える/でも45口径は絶対にウソをつかない」という、彼女のモノローグが流れます。その誌的な一文は、このスタイリッシュな彼女の復讐劇を締めくくるにふさわしい“決め台詞”になっていました。

監獄の中で、ストイックに強さを求める元ボクサー…『デッドロック』

『デッドロック』(2002年)は、刑務所内で囚人によるボクシング試合が行われているという設定。元ボクシングチャンピオンだった2人の囚人、モンローとジョージが、己の強さを証明しようと戦います。

この刑務所内ボクシングで67戦全勝と、無敵の強さを誇っているのがモンロー(ウェズリー・スナイプス)です。彼は寡黙で、真面目で、ひたすらに強さだけを求めてきた男。刑務所に入れられたのも、恋人を守るために彼女の元彼を殴り殺したことが理由と、“いかにも犯罪者”といった様子のほかの囚人とは一線を引いた存在です。

収監後もモンローは腐ることなく、黙々と身体を鍛え続けます。器具を使わずに筋トレを行い、フードを被ってランニングをするなど、そのストイックにトレーニングを続ける姿は、まるで試合に挑む前のロッキーのようです。

作中でモンローはある理不尽な理由から懲罰房に収容されますが、彼は文句を言うこともなくそれに従います。房内では折り紙で模型を作り続ける姿に、折れることのない孤高の精神が感じられました。ジョージ(ヴィング・レイムス)との試合を前に、まわりから八百長を持ち掛けられても、「俺はワルだ。だが卑怯者じゃない。よく覚えとけ」とクールに応える。そのセリフから、彼の生きざまが伝わってきます。

『ストリート・オブ・ファイヤー』/(c)1984 Universal Studios. All Rights Reserved. /7月21日(土)シネマート新宿ほかダイナマイトロードショー!以降全国順次公開

ジョンやモンローには、それぞれウォルター・ヒル監督が思い描く、「悪党とはこうあるべき」という美学が色濃く感じられます。それは、『ストリート・オブ・ファイヤー』の主人公トムも同じです。

かつて恋人エリンの歌手としての成功を願い、自ら黙って身を引いたトム。ボンバーズに誘拐された彼女の前に姿を現したときも、「報酬の金目当て」だと本音を隠し、彼女への想いを明かそうとはしません。そんな彼のキャラクターを一層魅力的にしているのが、ウォルター・ヒル監督の脚本らしい、痺れるような決め台詞です。エリンに対して、「俺は君の付き人になる男じゃねえ。だが、必要な時は俺がいる」と告げるシーンなどに、タフな男の格好良さが詰まっています。

「ぶっつぶせ(Kicks their ass)」や「分かったよ(Sure, tough guy)」など、耳に残るような英語のリズム感も、作中のセリフのカッコよいところ。ぜひ、英語音声で、そのセリフをかみしめながら観てほしい作品ですね。

(文/デッキー@H14)