7月27日公開の『ウインド・リバー』は、アメリカの先住民が暮らしている保留地で、実際に起きた事件に着想を得て作られた作品。雪深い保留地ウインド・リバーで起きた殺人事件を、新米のFBI女性捜査官ジェーンと、現地のハンター・コリーが追います。

この作品ではエリザベス・オルセンがジェーンを、ジェレミー・レナーがコリーを演じます。実はこの2人、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015年)からマーベル映画で共演しており、それぞれスカーレット・ウィッチとホークアイを演じていました。

マーベル映画ではホークアイがスカーレット・ウィッチに戦い方を教えていましたが、その関係は『ウインド・リバー』でも同じ。姿かたちこそ違いますが、まるで2人の姿を見ているようで、マーベルファンなら思わずほっこりしてしまうかもしれません。今回は、そんなマーベル俳優たちの共演作に、ヒーローたちの姿を垣間見てみたいと思います。

ハルクと秘書ペッパーの俳優2人が、今度は恋仲に

『恋人はセックス依存症』(2012年)の主人公アダムは、そのタイトルの通りにセックス依存症。5年間にわたって禁欲生活を続けていましたが、「禁欲を続けるのと、恋人がいるのは別の話」という周囲の助言もあって、新たな恋を探そうとします。そんな彼の前に姿を現したのが、自由奔放に人生を楽しむフィービーでした。

アダム役のマーク・ラファロと、フィービー役のグウィネス・パルトロウは、『アベンジャーズ』(2012年)で共演しています。その役どころはブルース・バナー(ハルク)と、トニー・スタークの秘書ペッパーでした。

マーベル作品でマーク・ラファロが演じたブルース・バナーは、人体実験の結果、心拍数が上昇すると緑色の巨人ハルクに変身する人物。ブルースはハルクに変身しないように、常に怒りなどをコントロールして、心拍数を抑えています。これは、『恋人はセックス依存症』でセックス依存症のアダムが自分を律している部分と、通じるところがあります。

『恋人はセックス依存症』における2人の関係は、一見アダムが主導権を握っているように見えますが実は逆。フィービーが性に積極的で、わざと行為を連想する言葉や行動でアダムをリードしています。たびたび理性を失って暴力的になり、誰の手にも負えないハルクが、この映画ではペッパーの手の中で転がされているように見えるのも面白いところです。

この映画の製作総指揮をしたのは、『インクレディブル・ハルク』(2008年)でハルクを演じたエドワード・ノートン。大人の事情でエドワード・ノートンは、本作以降ハルク役を演じなくなりましたが、その後任となったのがマーク・ラファロです。こんなところにもマーベルの繋がりがあることに気づくと、思わずニヤリとしてしまいます。

トニー・スタークとその運転手が、新たなビジネスパートナーに

『アイアンマン』(2008年)で、トニー・スタークの運転手ハッピーを演じたジョン・ファヴローが、監督・脚本・主演をつとめた『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(2014年)。主人公カールはひげ面で、タトゥーも入れていて、ハッピーと同じ人とは思えないかもしれませんね。

料理人のカールは、評論家と大喧嘩したことがSNSで拡散し、レストランをクビになってしまいます。そんな彼が次に始めるのが、フードトラックを使ったマイアミ名物のキューバ・サンドウィッチの移動販売。事業をはじめるにあたり、カールが頼ったのは、妻イネスの前夫で、建築機材レンタル会社を経営しているマーヴィンでした。

このマーヴィンを演じているのが、『アイアンマン』でトニー・スターク役を演じたロバート・ダウニーJr。ジョン・ファヴローが演じるハッピーとカールは、似ても似つかないキャラでしたが、トニー・スタークとマーヴィンは逆にそっくりな印象です。どちらも気難しいワンマン社長というキャラクターで、美人秘書に手を出していそうな雰囲気まで同じ。『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』の世界に、トニー・スタークがそのままやってきた……といっても通じそうな感じです。

作中にはカールの元恋人のモリーが登場します。彼女を演じるのは『アイアンマン2』(2010年)で、ブラック・ウィドウ役だったスカーレット・ヨハンソン。ブラック・ウィドウとハッピーは、マーベル作品でも言葉を交わすシーンがありましたが、そこには互いを信頼している様子がうかがえました。その様子に、ちょっとでっぷりとしたハッピーと、美人スパイのブラック・ウィドウの凸凹コンビは、意外と良い組み合わせかもしれないなぁと思ったものです。

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』では元恋人同士の2人ですが、互いのことを決して嫌ってはいない様子。ヒーローチームが仲良くしている姿が見られるのは、ファンにとっては嬉しいですよね! ジョン・ファヴロー監督もそうした思いを汲み取って、このキャスティングを実現させたのでは? との思いが頭をよぎりました。

ロキとニック・フューリー司令官の俳優2人の、善と悪が入れ替わる!?

『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年)で、トム・ヒドルストンが演じる主人公コンラッドは、元特殊空挺部隊の隊員。サミュエル・L・ジャクソンが演じるパッカード大佐率いるアメリカ陸軍ヘリコプター部隊によって、未知の島「髑髏島」に送り届けられます。
この2人は、マーベル作品で敵対関係の役を演じました。

『アベンジャーズ』(2012年)でヴィランのロキを演じたのがトム・ヒドルストン、アベンジャーズを率いるニック・フューリー司令官を演じたのがサミュエル・L・ジャクソンです。

『キングコング:髑髏島の巨神』ではある出来事をきっかけに怒り狂ったキングコングが、探検隊に襲い掛かります。不測の事態にあっても、冷静に行動しようとするコンラッド。その一方で、パッカード大佐は部下を殺された怒りから、無謀とも思える行動を取ろうとします。ロキとコンラッドはともに冷静キャラ。一方、ニック・フューリー司令官とパッカード大佐は熱血キャラと、2人の俳優のイメージにマッチした配役といえるでしょう。

しかし、『キングコング:髑髏島の巨神』では、パッカード大佐の方が、どちらかというと悪側のポジションで、『アベンジャーズ』の時と、善悪の役どころが入れ替わっているのです。キャラクターが似ていても、善にも悪にもなれるというのが面白くもあり、2人の俳優としての才能を証明しているようにも思えます。

その一方で、世界征服を企むためにニック・フューリー率いるアベンジャーズの言う事に耳を傾けないロキと、コンラッドの静止を聞こうとしないパッカード大佐。作中での行動が正反対なのも面白いところです。

『ウインド・リバー』/7月27日(金)より角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー/配給:KADOKAWA/(c) 2016 WIND RIVER PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『ウインド・リバー』では、事件現場に残された殺人犯の足取りを追う際、長年ハンターを続けてきたコリーがこれまで培ってきた経験が鍵となります。彼は雪に残された足跡、スノーモービルの軌跡の見方などを、女性捜査官ジェーンに教えます。コリー役のジェレミー・レナーが演じたホークアイは弓の名手。『ウインド・リバー』でも銃の名手で、こういう職人肌といった役どころが、彼にはよく似合いますね。

一方のジェーンを演じたエリザベス・オルセンは、この土地の厳しさを知らずに軽装で来るような新米捜査官ですが、捜査中に一触即発の危機に陥った時、その場を迫力の表情で納めようとする強い性根の持ち主でもあります。その様子には、未熟ながらもどこか心に秘めた強い信念を感じる、スカーレット・ウィッチの姿が重なります。

2人が捜査を続ける中で、また別の遺体が発見され、事件は混迷を深めていきます。果たして、このウインド・リバーで何が起きているのか? フロリダ出身という全くの部外者であるFBI捜査官ジェーンの眼を通して見る、居留地の知られざる実態。そして、自然の恐ろしさを、ぜひ大きなスクリーンで確かめてください。

(文/デッキー@H14)