2016年秋の撮影から約2年。ついに決まった『菊とギロチン』の公開に寛 一 郎の感慨は深かった。

「純粋に嬉しいです。でも、2年経っているから、そう思えるといいますか。たぶん、僕がいちばん見られたくない作品なんですね。理由は恥ずかしさ。それ以外ないです(笑)」

公開順こそ『心が叫びたがってるんだ。』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』に続く3本目の出演作品だが、出演順ではこの作品がトップだった。

「本当に(演技経験の)最初の作品。右も左もわからない状態で。でも、この作品を作り上げようとしていた方々の熱量はものすごかったし、感化もされました。ちゃんと公開されるというのはすごく嬉しいです」

オーディション自体が初めての体験

撮影=興村憲彦

大正末期の無政府主義者集団「ギロチン社」の一員、古田大次郎役。オーディションに臨んでの獲得だった。2016年5月のこと。

「メチャクチャ緊張しました。開けたオフィスみたいな場所が第一次オーディションの会場で、そこに仕切りみたいなものが4枚くらい立てられていて。待機していると、仕切りの向こうで(選考を)やっているのがわかるんです。オーディション自体が初めての体験で、会場にいる役者の目が怖い。みんな殺気立っていて、もうチビるなんていうレベルじゃありません(笑)」

古田が獄中でしたためた自伝に目を通すなどして、来る撮影に備えたという。

「古田は割とわかりやすいというか、今の人に近い部分があるというか……。決して大きい人間じゃないんですね。そもそもギロチン社自体がかっこよく暴れ回れるような集団ではありません。口だけのことがたくさんあって、個人ではやっていけない。(同時代のアナーキストの)大杉栄などと比べるとダサいです。だからこそ愛おしい存在なんですけどね。その中で、古田は“今しかない”と、いち早く行動に移してしまった人間だと思います」

目隠しをしたまま戦っている感じ

撮影=興村憲彦

そう、たとえば映画『大虐殺』(1960年/小森白監督)における古田をモデルにした主人公(天知茂)などと比較しても、ここでの古田はどうにもナイーヴな存在に映る。

「中濱鐵(東出昌大/ギロチン社の同胞)と比べてもみみっちいです(笑)。簡単に言うと、草食系ですよね。童貞臭さがあるし。自伝にも好きな人への接し方が書かれていますが、“ちょっとピュアすぎじゃね?”と(笑)」

もちろん、感じたことをそのまま実際の演技に反映させることができたわけではない。

「この作品については一切かっこつけることができないんですけど、わからなかったです。マジでわからずに演じていましたね。計算なんてなかったし、できなかった。頭ではわかっていても、それをお芝居で見せる方法なんて僕にはなかったんで、目隠しをしたまま戦っている感じです。どうしたらいいのか、本当に怖かった。ですから、古田がこの映画でどう生きていくかについては、東出さんにつくっていただいたといっても過言ではありません。鐵さんに支えられました」

インタビューの続きは『キネマ旬報』7月下旬特別号に掲載。今号では、1919年の創刊以来今年で100年を迎える『キネマ旬報』が「1970年代ベスト・テン 外国映画篇」を発表。誰もが知るあの名作もランクイン!? 評論家・ライターの作品解説とともに掲載している。

『菊とギロチン』
2018年・日本・カラー・3時間9分 監督:瀬々敬久 脚本:相澤虎之助、瀬々敬久 出演:木竜麻生、東出昌大、韓英恵 配給:トランスフォーマー ◎7月7日(土)よりテアトル新宿ほか全国にて

取材・文=賀来タクト/制作:キネマ旬報社