極寒の雪山で遭難した元アイスホッケー選手が、8日間にわたり壮絶なサバイバルを繰り広げた実話を映画化した『マイナス21℃』(7月21日公開)。凄まじい遭難体験をリアルに再現した本作のように、実話を基にしたサバイバル映画は名作ぞろい。これらの作品を振り返りながら、「これって本当に実話?」と思わずにはいられない、想像を絶する“サバイバル体験”に迫ります。

圧倒的な3D映像で史上最悪の遭難事故を体感!『エベレスト3D』

世界最高峰のエベレストにおいて、史上最悪とまで言われた1996年の大量遭難事故を忠実に再現した山岳映画が『エベレスト 3D』(2015年)です。

世界各地から集まったエベレスト登頂ツアーの一行は、予期せぬトラブルや未曽有の嵐に見舞われ、標高8,000m超という状況下で散り散りになってしまいます。そこは、人間が生存できないとされる死の領域“デス・ゾーン”。極端に低い酸素濃度に、目を突き刺すようなブリザードの直撃……。

これでもかと襲い掛かる大自然の猛威には、ベテランの登山家たちも為す術なし。実際に8名が犠牲になる大事故だっただけに、その過酷さは凄まじいものがあります。

劇中のシーンも、主演のジェイク・ギレンホールをはじめとする俳優陣が実際に登り、マイナス30度のエベレスト山中で撮影されたガチの映像。最新鋭の3D映像効果で体感する登頂の恐ろしさは、半端ではありません。

無情にすぎる時間と残酷な決断をリアルに描く『127時間』

次に挙げるのは、登山家アーロン・ラルストンの自伝「奇跡の6日間」をダニー・ボイル監督が映画化した『127時間』(2010年)です。

2003年、当時27歳だったアーロンは、ロッククライミングを楽しむため、ユタ州のブルー・ジョン・キャニオンへと単身向かいます。ところが、渓谷で落石に遭遇し、壁と石の間に右腕が挟まれてしまう事態に……。手元にあるのはたった150ミリリットルの水とナイフ、そしてビデオカメラ。身動きが一切取れない中で、彼の決死のサバイバルが展開します。

本作の特徴は、時間の経過にともなって変化していくアーロンの心情を、リアルにあぶり出した点にあります。絶望的な状況を自覚し、それを俯瞰した上で自ら行動できる精神力は、常人の域を超えていると言っていいかもしれません。

実際、彼が生き延びるためにとった“ある行動”が、映画でもクライマックスでまざまざと描かれるのですが、その迫力といったら……! 劇場公開時には失神者や途中退場者も出たほどの強烈な映像に仕上がっているのです。

極限状況で生き抜くために下した“ある決断”とは!?『生きてこそ』

サバイバル映画のマスターピースとして今も語り継がれる作品が、『生きてこそ』(1993年)です。

1972年、アンデス山脈に衝突・墜落したウルグアイ空軍機571便遭難事故を題材にした本作。ウルグアイの学生ラグビーチームと、その家族を乗せた総勢45名のチャーター機でしたが、墜落時の生存者28名のうち、無事に生還を果たせたのは16名でした。

死者29名。その事実より、むしろ驚かされるのは生存者が耐え抜いた“72日間”という日数です。極寒の雪山での生存は絶望的と、早々に捜索が打ち切られるほどの環境下で、彼らは水や食料はもちろん、ろくな装備すら持ち合わせていませんでした。飛行機の残骸をシェルター代わりにしたり、スーツケースで吹雪をしのいだりと、知力を尽くして救助を待ち続けますが、追い打ちをかけるように雪崩が襲い掛かります。そうして日数の経過とともに、一人、また一人と仲間の命が失われていったのです。

飢えと寒さにさらされる生存者たちは、生きるために“ある決断”を下します。映画でも、決断にいたる経緯や葛藤、生への凄まじい執着心が描かれており、大いに物議を醸しました。その行動は、あまりにも衝撃的ですが、それこそが実話ならではの圧倒的なリアリティといえるのです。

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極寒の雪山で人間の生存本能が試される『マイナス21℃』

『マイナス21℃』も、極寒の雪山で8日間にわたり、食糧なし、装備なしの壮絶なサバイバルを繰り広げた実話が基になっています。

元プロアイスホッケー選手で、スノーボーダーのエリック・ルマルクの体験を映画化した本作の舞台は、シエラネバダ山脈。立ち入り禁止エリアを滑走したことで、山奥に迷い込んだ彼は、山岳装備もなく、水・食料も持ち合わせていない状態のまま雪山で遭難してしまいます。

彼の生存本能を試すかのように、“マイナス21℃”という極限状況下で次々と困難が降りかかります。低体温症に凍傷、脱水症状と、体力が根こそぎ奪われていく中で、いかんともしがたい強烈な空腹感。さらに山に生息する野生のオオカミの恐怖にもさらされ、気力すら途切れがちになる絶望的な状況に追い込まれていくのです。

そんな過酷すぎるサバイバル映像を、CGを一切使わずに再現したのは、幼少期にエリック・ルマルクと一緒にホッケーをしたことがあるというスコット・ウォー監督。リアルな映像へのこだわりは強く、「この映画は実在する人物が経験した本当の物語だ。そこに込められた、“希望”や“あきらめない”というメッセージは全世界共通。だからこそ、山でエリックに何が起きたのかを誠実に伝えることが重要だと思ったんだ」と明かしています。

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まさに事実は小説より奇なり。九死に一生を得た実話には、思いも寄らない衝撃の物語が秘められています。こうした実話を基にしたサバイバル映画に名作が多いのは、寒さ、飢え、孤独……など、あらゆる極限状況下で、それぞれの人間性が浮き彫りになるからではないでしょうか。極限状態に陥った時、人間はいかにしてその困難を乗り越えるのか? その葛藤の生々しさに心が揺さぶられます。

(文/スズキヒロシ・サンクレイオ翼)