1999年に全米公開された伝説の音楽ドキュメンタリー『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』。全世界で破格のヒットを飛ばし、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にもノミネート。翌2000年には日本でも公開され、ミニシアターの枠を超える大ヒットを記録した。

あの感動から18年。今もなお活動を続けていた現メンバーが、グループによるステージ活動に終止符を打つと決意。そんな彼らによって行われた“アディオス(さよなら)ワールドツアー”を収めたドキュメンタリーの最新作『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』が、7月20日(金)より全国順次公開となる。

世界を魅了したキューバ音楽のレジェンドたち

(C)2017 Broad Green Pictures LLC

ローリング・ストーン誌が選ぶ「もっとも偉大な100人のギタリスト」にもランクインした世界的ギタリストのライ・クーダーと、レコードプロデューサーのニック・ゴールド。1996年にキューバを訪れた彼らが、これまで国外ではほとんど知られていなかった地元の老ミュージシャンたちとセッションしたことがきっかけとなり、当時92歳のギタリスト、コンパイ・セグンドや、キューバの偉大な歌姫オマーラ・ポルトゥオンドなど、かつてはキューバ国内の第一線で活躍していたベテランミュージシャンたちを集めてビッグバンドを結成。それが、「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」だ。

翌1997年、クーダー自身がプロデュースし、バンド名と同じく、かつてハバナに実在した会員制音楽クラブの名前をタイトルにしたアルバム「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」をリリースする。このアルバムは、それまで決して一般的ではなかったワールド・ミュージックというジャンルで異例の400万枚を売り上げ、世界で最も権威ある音楽賞と言われるグラミー賞において、最優秀トロピカル・ラテン・ポップ・パフォーマンス賞を受賞した。

キューバ以外ではほとんど知られることなく、完全に忘れられた存在だった老ミュージシャンたちとライ・クーダーが制作したアルバムは、キューバ音楽の素晴らしさをアピールし、世界中を席巻することとなった。

映画も異例のヒットを記録

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アルバムの発表から2年後の1999年、『パリ、テキサス』(1984年)や『エンド・オブ・バイオレンス』(1997年)の音楽を手掛けたことでクーダーと親交があった名匠ヴィム・ヴェンダースが、彼らの音楽と人柄の素晴らしさに触れたドキュメンタリー『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』を制作する。

映画ではコンサート映像やレコーディング風景を中心に、キューバの日常を映しながらバンドメンバーが自らの人生を語っていく。

バンド結成当時、ソ連崩壊の影響で経済的に苦しかったキューバでは、多くのメンバーは現役を引退しており、ヴォーカリストのイブライム・フェレールは、「ミュージシャンとしてのキャリアを捨て、生活のために靴磨きをしていた」と語る。著名なピアニストのルベーン・ゴンサレスも、「シロアリにピアノを壊されてしまい、修復することもできずに、何年もの間ピアノを弾いていなかった」と言う。

本作は全世界で破格のヒットを飛ばし、ヨーロッパの映画賞やLA映画批評家協会賞のドキュメンタリー映画賞など、数々の映画賞を受賞、第73回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にもノミネートされるほど、「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の名前は、音楽ファンだけでなく世界中に広まっていった。

人気は海を越えて日本にも届き、当時盛んだったミニシアター公開の枠を超える大ヒットを成し遂げる。その熱狂は音楽や映画にとどまらず、サルサダンスのブームやキューバレストランの流行、キューバ直行便の就航開始と、社会現象を巻き起こした。

ミュージシャンをはじめ、各界の著名人も本作を絶賛!

(C)2017 Broad Green Pictures LLC

音楽に携わるミュージシャンたちも、本作に熱い想いを寄せている。

 

「当時病気治療中だった僕はオマーラさんの声に泣きました」

坂本龍一(音楽家)

「音楽は愛であり愛は人生である事を、歌で、音で、生き様で奏で続ける姿。

何処までも深く悲しく強く儚く美しかったです」

三浦大知(歌手)

「何かもう色々と堪らない映画だった。きっと何回も何回も観ると思う、前作同様」

トータス松本(ウルフルズのヴォーカル)

「僕の音楽人生のバイブルに出会った気がする」

久保田利伸(ミュージシャン)

「彼らは一生をかけて音楽を愛しきり そして それ以上に音楽から愛された」

宮沢和史(シンガーソングライター)

「キューバの苦難の歴史の中で、彼等は彼等の音楽を誇り、愛した。その音楽は世界中に愛され、やがて歴史をも動かす」

ホリエアツシ(ストレイテナー)

世界が夢中になった「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の終着点

(C)2017 Broad Green Pictures LLC

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』は、単に彼らの“その後”を描いた作品ではない。

監督を務めたのは、『ヴィック・ムニーズ ごみアートの奇跡』(2010年)でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞、東日本大震災の被災者を描いた『津波そして桜』(2011年)で短編ドキュメンタリー賞にノミネートされた、今最も注目を集めるドキュメンタリー作家、ルーシー・ウォーカー。

一枚のアルバムから始まった「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」、そしてヴィム・ヴェンダースが監督した前作『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』は、彼らが巻き起こしたムーブメントの一つにすぎない。

だが、ある日突然、世界中から注目されるスーパースターになり、求められるがままに全世界を飛び回っていた彼らが、人生の最後に再び大きな花を咲かせた。

最初のレコーディングから20年以上が経過したことで、中心メンバーだったコンパイ・セグンドやイブライム・フェレールはこの世を去った。激動の18年間の中で、音楽のレジェンドたちは何を想い、どのように過ごしたのか。栄光と挫折の日々を、キューバという国の歴史や本当の姿、第一線で歌い続けたミュージシャンたちの本音と共に、ウォーカー監督は、時が経った今だからこそ、貴重な資料映像と共に丁寧に記録していく。

一時は生きる気力を失っていた彼らだが、迫りくる老いと死すら、彼らの音楽への情熱を止めることはできなかった。人生の最後まで歌い、演奏し続けるその姿には、ただただ圧倒されるだろう。

観る者すべての心を震わせる至極の音楽ドキュメンタリーを、ぜひスクリーンで体感してほしい!

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メンバー個々のより深い人生や音楽的ルーツについて本人が語ったインタビューを、彼らが若い頃の貴重なアーカイヴ映像を交えながら紹介する本作。その中には、彼らの代名詞ともいえるあの名曲「チャン・チャン」の誕生秘話や、BVSC の“声”であるイブライムと、“華”である歌姫オマーラ・ポルトゥオンドがまだ不遇だった50年代に共演していた映像もあります。時を経た続編だからこその見どころを、分析します。

文=SS-Innovation.LLC