都会育ちのイマドキ女子高生・理緒と田舎町に暮らすイケメン地元高校生・吟蔵のひと夏の恋を描いた南波あつこの人気コミックを、葵わかな&佐野勇斗のダブル主演で実写映画化した『青夏 きみに恋した30日』。『くちびるに歌を』で共演以来、3年ぶりの再会を果たした2人が、本作への熱い思いを語った。

役者としてもがいたそれぞれの3年間

Q:3年前、お二人が初共演した『くちびるに歌を』のイベントで、一生懸命に歌い、宣伝用のチラシを配っていたのを思い出しました。

葵わかな(以下、葵):確か有楽町マリオンの前の広場ですよね。全員で歌える最後の日だったので、みんな涙をこらえながら「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」を合唱したのを覚えています。

佐野勇斗(以下、佐野):そのイベント、僕も思い出しました。ちょっと懐かしいです。

Q:そんなお二人が、時を経て“ダブル主演”というカタチで久々の再会を果たしたわけですが、どんな印象でしたか?

葵:明るく元気な印象は、3年前と変わっていなかったです。ただ、前作は合唱部全員での演技だったせいか、ここまでお互いを意識して演じることはなかったので、「佐野さんって、こんなお芝居をするんだ」という新たな発見がありました。

佐野:わかなちゃんの印象は、もう20歳ということで女性っぽくなりました。撮影現場でもひときわ輝いていました。

葵:(照れくさそうに)本当に? いやぁ、そう言われるとうれしいです。がんばってきた甲斐がありました(笑)。

Q:どんな3年間を過ごしてきたのでしょう?

葵:とにかく濃い3年でした。成長というよりも、お芝居に対するさまざまな思いが、経験を重ねながら日々アップデートされていく感じです。お芝居が大好きなことには変わりはないですが、今は仕事として、プロ意識を持って撮影現場に臨むことができるようになってきたと思います。

佐野:『くちびるに歌を』は、僕にとって映画デビュー作ですが、当時はお芝居どころか、まったく周りが見えてなかった。そういった意味では、演技に対しても、自分の立ち位置に対しても、少しは冷静に考えられるようになりました。でも、基本的な部分はあまり変わっていないです。わかなちゃんのお話を聞いていて、同じ20歳として「見習わなきゃ」って思いました。

キャラクターに近づくための努力

Q:本作では“ひと夏の恋”を描いていますが、都会育ちの理緒、田舎育ちの吟蔵、それぞれどんな思いで演じましたか?

葵:台本を読んで、理緒の心の中を理解しようと思ったのですが、わたしとは逆の性格なので、なかなか難しかったです。すごく行動力があるけれど、慎重な部分もあるので、「いったいどんな気持ちで、吟蔵にあんなこと言ってしまうんだろう?」みたいな場面もかなりあって。でも、理緒は理緒なりに筋が通っているんだろうと想像しながら、とにかく必死に演じました。

佐野:原作の吟蔵って、すごく細くて、とにかくカッコいいんです。しかも、男の僕から見ても憧れるくらい男気がある。普通、気になる女子に「好き」って告白されたら、平常心でいられないですよね? 僕はダメ(笑)。ところが吟蔵は、「夏が終われば離ればなれになるから」と理緒を気遣ってわざと突き放す男らしさがある。心の底からカッコいい役なので、映画をご覧になる方を幻滅させないよう、体もかなり絞り込んで、身も心も吟蔵に成り切る思いでがんばりました。

Q:そういえば、ちょっと痩せましたね。精悍になりました。

佐野:そうですか? 今はもう、かなり元に戻ってきています(笑)。撮影当時は、みんながバーベキューを楽しんでいる横で、ひたすらがまんしていました。ちょっと体を露出するシーンもあったので、筋トレと食事制限で追い込みました。正直、つらかったです。

選んだ役者の道に後悔なし!

Q:理緒と吟蔵は、“葛藤”に苦しみ、やがて“決断”を迫られます。お二人はこういった経験はありますか? 

佐野:吟蔵には、理緒が好きだという気持ちとは別に、「デザイナーになるために東京へ行きたい」という夢がある。でも、実家を守らなければならないので気持ちを封印しています。その部分の葛藤は僕も愛知県の田舎に住んでいて、この世界に入るために上京して来たので、頭では理解できるんです。ただ僕の場合、性格がどちらかというと理緒タイプというか、直感で動く方なので、吟蔵のように引き裂かれるような思いはなかったです。即行動でした(笑)。しかも、周りに反対する人が1人もいなくて、むしろ「がんばってこいよ!」くらいの勢いでした。

Q:直感を信じてこの世界に入って、仕事でくじけそうになったことはなかったですか?

佐野:それが、「辞めたい」って思ったことが、正直1度もないです。でも、尊敬する先輩の俳優さんたちが、いろいろな壁を乗り越えて、今の地位を築いたということを聞くと、「自分はこれでいいのかな?」と思うことはあります。先輩方に「追いつきたい!」という強い思いは年々高まっています。まだまだ10割足りてないですから。

Q:葵さんはいかがですか? NHKの連続テレビ小説「わろてんか」など、大きなお仕事も乗り越えて来ましたが。

葵:このお仕事を始めるときは、佐野さんと同じように、「いいんじゃない?」と両親が背中を押してくれたので問題はなかったのですが、この世界に入ってからは、私生活との両立がなかなか難しくて葛藤がありました。例えば、お友達と遊ぶ約束をした日に仕事が入ったり、学園祭などの行事にスケジュールが合わなくて出られなかったりしたときは、「もう、辞めてやる!」って泣いていました(笑)。まだ中学生だったので仕方ないとは思いますが、あのとき早まった行動に出ず、仕事を続けていて良かったと、今は心から思っています。

取材・文:坂田正樹 写真:杉映貴子