7月28日から公開される『性別が、ない! インターセックス漫画家のクィアな日々』は、セクシュアリティについて悩む若者たちから支持を得ている漫画家を追ったドキュメンタリー映画。男性でも、女性でもなく、LGBTにもちょっと当てはまらない「インターセックス」にスポットを当てている。

男でも女でもない「インターセックス」とは?

まず、「インターセックス」という言葉を、初めて目にする人も少なくないだろう。

本作の公式サイトには、こう記されている。

“インターセックスとは、医学的には性分化疾患(DSD)と呼ばれる。男女どちらかで統一される性器や性腺、染色体の性別があいまいだったり一致しなかったりする疾患。性自認は男・女とはっきりしている人もいるが、新井のようにどちらでもない『中性』を選ぶ人もいる”(映画『性別が、ない! インターセックス漫画家のクィアな日々』公式サイトより)

本作の主人公である漫画家の新井祥は、30歳まで女性として暮らしてきたが、染色体検査でインターセックスと判明。現在は男性でも女性でもない「中性」として生活している。自らの体験を綴ったエッセイ漫画『性別が、ない!』は、同じような境遇の人々から熱烈な支持を集めた。

そんな新井と、アシスタントを務めるゲイの美青年・こう君との活動を1年に渡って記録した本作は、改めて多様なセクシュアリティがこの世の中には存在することを教えてくれる。当事者の秘められた本音とともに。

(C)ザ・ファクトリー

LGBTだけではないセクシュアル・マイノリティの世界

他者には理解されづらい自分の性を隠すことなく、自身に対しても、社会に対しても理解を深めようと試みる新井は、1年の間でさまざまな場所に向かい、さまざまなセクシュアル・マイノリティと対話を重ねる。

香港の漢方医でインターセックスでもある細細老師、タイで「ガトゥーイ」と呼ばれる女性の姿で社会生活を送る男性など、当事者の話を聞くために、時には海外へ出向く。また、作品中には、女性・男性のいずれの性別でもない、または決められないという立場をとる「Xジェンダー」の青山先生という友人も登場する。

そこで飛び出す発言には、少々びっくりするかもしれない。たとえば女性の体に生まれたXジェンダーの青山先生は、こう明かす。「男性ホルモンを注入して、ひげがある顔とボインの姿を鏡で見たとき、一番しっくりきた」と。

こうした当事者たちの発言からは、セクシュアル・マイノリティの間でも性の自認はさまざまで、恋愛対象も個人によってまったく異なることが浮かび上がる。

セクシュアル・マイノリティに対する理解は進んだのか?

レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー……。

確かにLGBTという言葉は飛躍的に日本に広まった。それは一見するとセクシュアル・マイノリティの理解が進んだように映るが、ほんとうにそうだろうか?

LGBTが指すのは、あくまでセクシュアル・マイノリティの一部にすぎない。社会には多様なセクシュアル・マイノリティが、もっと存在している。まだまだ彼らにとって生きづらい世の中がある。いわれなき差別がある。そうしたメッセージが本作には見え隠れする。

ただ、そこに甘んじているわけではない。新井をはじめここに登場する人々は、セクシュアル・マイノリティ界を牽引する、さながらトップランナーのよう。その生き方は力強くたくましい。それは、自らが行動することで「自分が自分らしく生きる道」が拓けることを体現してみせている。

セクシュアル・マイノリティに関して、さまざまな問題提起がされている昨今。実情はどうなのか? 日本社会におけるセクシュアル・マイノリティ、さらには多様なセクシュアリティの現在地点が、本作に記録されているといっていいのかもしれない。

(文/水上賢治@アドバンスワークス)