【町田雪のLA発★ハリウッド試写通信 ♯09】
「LA発★ハリウッド試写通信」では、ロサンゼルス在住のライターが、最新映画の見どころやハリウッド事情など、LAならではの様々な情報をお届けします。

2004年にアカデミー賞長編アニメ賞を受賞した『Mr.インクレディブル』の14年ぶりの続編として、全米興収5億ドル超えの大ヒットを飛ばし、いよいよ8月1日(水)に日本公開となるピクサー・アニメーション映画『インクレディブル・ファミリー』。ここでは、その本編前に同時上映され、全米を食欲と笑いで包んだ短編作品『Bao』について紹介したい。最高にチャーミングで、心あたたまる8分間の物語だ。

「空の巣症候群」の母を描いた物語

一人息子が巣立ち、空の巣症候群(子どもが家を出たり、結婚したりしたときに、親が感じる憂うつのこと)となった母がある日、ため息つきつつ、肉まん(バオ)を作っていると、そのひとつが小さな赤ちゃんに変身(形は肉まんのまま)。

『Bao』
8月1日(水)全国ロードショー『インクレディブル・ファミリー』と同時上映
(c) 2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

“第二の子育て”に心がうるおい、過保護ぶりを発揮する母だが、そんな肉まん息子も実息子と同じように成長し、反抗し、彼女を見つけ、離れていく……という、コメディタッチの切ないあるある物語。米国でも、『インクレディブル・ファミリー』の試写会場を埋め尽くした記者たちが終始、大ウケだった。

ピクサー初の女性監督による短編映画

メガホンをとったのは、28歳の中国系カナダ人女性、ドミー・シー。インターンを経て、ピクサー入社を果たし、ストーリーボード・アーティストとして『インサイド・ヘッド』(2015年)や『トイ・ストーリー』最新作(タイトル未定・2019年6月に全米公開予定)に携わった人物だ。

あるとき、箱入り娘だった自分とヘリコプター・ペアレント(ヘリコプターのようにわが子の頭上を旋回する過保護な親)だった自身の母から着想を得た『Bao』のアイデアを、ピクサーの大先輩であるピート・ドクター監督(『モンスターズ・インク』シリーズ、『インサイド・ヘッド』など)にプレゼン。

中国文化に特化したアイデアのため、まさか共感されるとは思わなかったが、そのユニークさが逆に採用の決め手となったと言われたそう。ピクサーはこれまで20本の短編作品を生み出してきたが、女性監督による作品はこれが初めて。ときに「ボーイズ・クラブ」と批判されてきたピクサー史に名を刻むこととなった。

徹底的な探求とアニメ愛が生んだ特別な表現

同作製作にあたっては、「作品のカギとなる肉まんの調理法や動きの完成度を上げるべく、アーティストたちとたくさんのレストランに通い、母に肉まん作りの実演を頼み、あらゆる角度から肉まん研究をした」という。

フードプロセッサを一切使わず、皮を作り、肉を挽き、ひたすら素材を刻んで……カナダ風にメイプル・シロップを隠し味にしたりする母の姿は、シー自身の“肉まん観”をガラリと変えたと同時に、母の献身へ感謝するきっかけにもなったよう。

ちなみに、中国語の「バオ」には、「肉まん」のほかに「大切な宝物」という意味もあるそうだ。こんなにおいしそうで、キュートで、抱きしめたくなる肉まんは他にないが、その表情の豊かさと躍動感は、シーのアニメ&マンガ愛から生まれたもの。アニメーターたちに参考として、自身が大好きな日本アニメを山ほど観せたという。

『Bao』だけじゃない!実験的なピクサーの短編映画たち

今回の『Bao』に限らず、ピクサー映画の前座として流れる短編ムービーには、それ独自のファンも多い。長編と同レベルの技術&クリエイティブ性が数分に凝縮されているうえに、実験的で冒険心がプラスされているのだから、最強なのだ。

近年では、『ファインディング・ドリー』(2016年)と同時上映の『ひな鳥の冒険』がアカデミー賞短編アニメーション賞を受賞。「忘れ物預かり箱」に住む生き物ルーといたずら好きな少年の駆け引きを描いた『LOU』(『カーズ/クロスロード』と同時上映、2017年)も、印象深い秀作だった。

アニメ&マンガ好きな中国系カナダ人の若き女性監督が、自身の体験をもとに作り出した肉まん物語。これ以上ないほどキャッチーな短編映画をぜひ、劇場で。

『インクレディブル・ファミリー』
8月1日(水)全国ロードショー
(c) 2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved

短編映画『Bao』は、『インクレディブル・ファミリー』の同時上映作品として、8月1日(水)より全国ロードショー。

(Avanti Press)