文・写真=平辻哲也/Avanti Press

映画祭――国内外に多数あるが、映画祭とはなんのためにあり、どんな役割を持つものなのだろう?

次世代クリエーターの登竜門と言われるSKIPシティ国際Dシネマ映画祭(7月13~22日)。埼玉県川口市の映像施設「SKIPシティ 彩の国 ビジュアルプラザ」を拠点に開催された。

第15回を迎えた今年は「飛翔する監督たちfrom SAITAMA」と題して、『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』(2017年)の入江悠氏、『横道世之介』(2013年)の沖田修一氏ら埼玉県出身の監督がQ&Aに登壇。

また、インディーズ映画として異例の拡大興行となった大ヒット中のソンビ映画『カメラを止めるな!』(2018年)の上田慎一郎監督が、VR映画『ブルーサーマルVR -はじまりの空-』(2018年)をひっさげ、トークイベントを開催した。 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭とはどんなものなのか?

 

左から上田慎一郎監督、沖田修一監督、入江悠監督、映画祭マスコットのデジたるくん

あの監督も埼玉出身!
映画祭だから観られるHOTなラインナップ!!

期間中は連日、35度を超す猛暑。別のトークイベントにゲスト出演した押井守監督が、「あんまり暑くて、引き受けたことを後悔した」と得意の毒舌を吐くほど。そんな中、午後5時からにもかかわらず、午前から行列ができたのは、「飛翔する監督たちfrom SAITAMA」部門で上映された『横道世之介』。主演俳優の高良健吾、沖田監督が登壇し、観客の質問に答えた。

「飛翔する監督たちfrom SAITAMA」部門に『横道世之介』で参加した沖田修一監督(左)と高良健吾(右))

会場は女性ファンで満席状態。中には、高良の出身地である熊本から駆けつけた女性ファンの姿も。観客はそれぞれに映画への思いを口にし、沖田監督は「この映画を好きという人の声を聞いて、大変励みになりました。高良君と話せて、楽しい時間でした」。高良も「6年前に出た映画を、こんなふうに上映してもらえたことがうれしい。誰かの心に残る映画になったんだと思いました。今日は幸せな1日になりました」と笑顔を見せた。

一方、深谷市出身の入江監督は「10代の頃は、この町から出なきゃとか、没個性の町だなと思っていました。高校までは深く人に出会っていなかったので、故郷の面白さが分からず、閉塞感を持っていました。ようやく相対化して見ることができたのが『SR サイタマノラッパー』(2009年)を撮ったときです」と地元愛を語った。

ほかには、吉田恵輔監督のヒューマン・コメディ『犬猿』(2018年)、2017年キネマ旬報ベスト・ワンに輝いた石井裕也監督の青春劇『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(2017年)も上映された。

『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』の入江悠監督

入江監督以外は、初めて埼玉出身の監督と知ったが、こうした括りで映画を観る特集を企画できるのも映画祭ならでは。

共通点を聞かれると、「沖田さんも吉田さんもひねくれているところがあって、そこが創作したときに面白さとなっていると思います。それが埼玉と関係があるかは分かりませんが、生まれたのが東京だったり、風光明媚な町だったら、違ったのかもしれません」と入江監督。惜しむらくは、埼玉出身監督が一堂に会するシンポジウムを開催できなかったこと。

新しい映画体験を -VR映画の最前線-

新しい技術による映像を見せてくれたのは、全天球カメラで撮影された2作のVR(ヴァーチャル・リアリティ)上映だ。

8月3日、TOHOシネマズ日比谷で行われる“感染”拡大公開御礼舞台挨拶のチケット489席分を、2分で完売させた『カメラを止めるな!』の上田慎一郎が監督した『ブルーサーマルVR -はじまりの空-』(12分)は、大学の航空部の青春群像を描いた人気漫画「ブルーサーマル-青凪大学体育会航空部-」(小沢かな著/BUNCH COMICS)の実写化。埼玉県とSKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザが製作した。

田口清隆監督の『ウルトラマンゼロVR 大都会の戦慄 エレキング対ゼロ』(6分)は東京都港区のオフィスビルで会議中、突如宇宙怪獣エレキングが出現し、非常口の扉を開けると、巨大怪獣とウルトラマンゼロがバトルを繰り広げられていた……というストーリー。田口監督によれば、ミニチュア怪獣アクションのVR作品は世界初だという。2作は今年のカンヌ国際映画祭のVRシアターで上映され、話題になった。

2作品のポスター

観客は360度回転する丸型の専用ソファーに座り、VRゴーグルを着用し、映画を鑑賞する。全天球カメラでの撮影なので、ソファーを回転させたり、視線を動かしても、眼の前に映像が広がる。2作は主観カメラで撮影されており、主人公となって、物語を体感するというスタイル。

『ブルーサーマルVR -はじまりの空-』では、航空部に入部することになった大学生という設定で、最後はグライダーに乗り込むと……という展開。

一方の『ウルトラマンゼロVR 大都会の戦慄 エレキング対ゼロ』はエレキング対ゼロのバトルの目撃者の視点で描かれる。ウルトラマンの足元から見上げたりできるのは、異次元の感覚だ。

上映されたのは、7月14日(土)、15日(日)の両日午後1時から4時半まで。無料で限定8席、1日8回上映とあって、全回満席の大盛況だった。

360度回転する丸型の専用ソファー

また、同時開催されたセミナーイベント「VR映画の未来―映画としてVRは生き残れるか?―」では田口監督と上田監督が登壇。

田口監督は「ゲームとしてのVRは可能性を感じますが、映画は客観的に観るものだけども、VRでは主観で描くところに難しさがあります」と言いながらも、「観客がVRを観ていることを忘れさせることができれば、すごい。探偵が360度の視界の中で、手がかりを見つけて、謎解きをするみたいなものは面白いかもしれない」。

上田監督も「3つの物語を同時並行で描くみたいな話は面白いかな」と話した。アイデア豊富な2人の監督が次はどんなVRを見せてくれるのか。

『ブルーサーマル』上田慎一郎監督(左)と『ウルトラマンゼロ』田口清隆監督(右)

映画祭の魅力とは?

映画祭は、映画のショーケースであり、“発見”が最大の魅力だ。長編3本以下の新人監督で競われる国際コンペティションでの上映作は世界80以上の国と地域から集まった選りすぐり。プレミア上映作をいち早く観て、お気に入りを見つけることができるはず。

Q&Aでは、製作者の思いを生で聞くことができ、お目当てのスターや映画人にも会うこともできる。映画人にとっても、観客にとっても、映画祭は特別な空間だ。TPOさえ守っていれば、快くサインや写真撮影にも応じてくれるはず。世界の映画祭でも、サイン帳を持っているファンの姿をよく見かける。

映画祭の中には無料上映という粋な計らいもある。15周年を記念した特別企画「名匠たちの軌跡」では、『万引き家族』(2018年)でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督がテレビドキュメンタリー時代に、2人の台湾監督の姿を追った『映画が時代を写す時―侯孝賢とエドワード・ヤン』(1993年)など3作品のドキュメンタリーが無料上映された。いずれもなかなかスクリーンで観られない作品で、貴重な機会となった。

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国内には大小100以上の映画祭があると言われている。映画祭の情報を見かけたら、まずは上映作品、登壇者を隅々までチェックするのがオススメ! 映画の楽しみ方が変わるかもしれない! 来年はぜひSKIPシティ国際Dシネマ映画祭に、お出かけを。