文=金田裕美子/Avanti Press

犯罪プロフェッショナル集団“オーシャンズ”を率いて数々の強奪を成功させた、あのダニー・オーシャンには妹がいた! それも、兄と同じく凄腕の大泥棒の妹が――。ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモン、ジュリア・ロバーツ、アンディ・ガルシアらのオールスター・キャスト、仰天の犯罪トリックと洒脱なユーモアで大ヒットしたシリーズ、『オーシャンズ』が帰ってきました。

4作目となる今度の『オーシャンズ8』では、“オーシャンズ”のメンバーが全員女性。サンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、ヘレナ・ボナム・カーター、リアーナら、こちらも華麗なオールスター・キャストです。彼女たちは超豪華なファッション・イベント、メットガラから1億5000万ドルのネックレスを盗み出すべく、それぞれの得意技を持って集結するのです。

『オーシャンズ8』8月10日(金) 全国公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.,
VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC.
AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

映画の冒頭は、シリーズ第1作『オーシャンズ11』でダニー(クルーニー)がニュージャージーの刑務所から出所してくるオープニングとそっくり。ダニーの妹デビー(ブロック)が、5年の刑期を終えて仮出所してきます。さっそく犯罪仲間のルー(ブランシェット)に声をかけ、軽い食事をしながら、5年8カ月12日かけて(刑務所に入っていた時間……)練りに練った宝石強奪計画に誘います。

このシーンが撮影されたのは、ニューヨークの老舗ウクライナ料理店「ヴェセルカ」。ふたりは同店の名物料理、ポテトパンケーキとピエロギを食べながら、強奪計画について話します。デビーは、サワークリームをのせ、乗り気じゃないルーの口元に「食いついて」と、小さく切ったポテトパンケーキを差し出します。今回は、このポテトパンケーキとピエロギを作ってみたいと思います。

NYで本格ウクライナ料理を!
老舗「ヴェセルカ」のレシピに挑む

デビーが狙うのは、カルティエ秘蔵のダイアモンド・ネックレス“トゥーサン”。普段は厳重な金庫に保管されているこのネックレスを、世界最大のファッションの祭典“メットガラ”にかこつけて持ち出させ、大胆にもガラの最中に強奪しようというのです。

メットガラは、メトロポリタン美術館コスチューム・インスティテュートが主催する資金集めイベント。毎年5月上旬に行われ、各界のセレブ達がその年のテーマに合わせて「これでもか!」というゴージャスな装いで参加する様子は、ニュースとなって世界中に配信されています。

『オーシャンズ8』8月10日(金) 全国公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.,
VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC.
AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

1995年からこのイベントのホストを務めているのは、ファッション誌『ヴォーグ』の名物編集長で、メトロポリタン美術館の理事でもあるアナ・ウィンター。『プラダを着た悪魔』(2006年)でメリル・ストリープが演じた、あのキョーレツなキャラの編集長・ミランダのモデルとなったお方ですね。『オーシャンズ8』にも、ガラのシーンでウィンターご本人がちらりと姿を見せています。メットガラをもっとよく知りたい方は、ドキュメンタリー映画『メットガラ ドレスをまとった美術館』(2016年)もどうぞ。

さて、デビーとルーがウクライナ料理を食べているヴェセルカは、マンハッタンのイーストヴィレッジにある、庶民的な24時間営業のコーヒーショップ。実はわたくし、ここのボルシチの大ファンでありまして、何度も訪れたことがあります。

なにせ美味しい、安い、具だくさんでボリューミー。ボルシチとパンだけでお腹がいっぱいになってしまうゆえ、ほかのものをオーダーしたことはあまりありませんでした。有名なポテトパンケーキも食べたことがない。デビーはパンケーキを小さく切ってサワークリームをのせ、ルーに食べさせていましたが、そもそもウクライナのポテトパンケーキって何?

これです! このボルシチ♡

そんな疑問にばっちり答えてくれる素晴らしい本を発見しました。その名も“The Veselka Cookbook”。同店のレシピを解説した、お店公認のレシピ本です。これさえあればメニューの再現はこっちのもの! です。

作ってみよう! カリッとポテトパンケーキ

本を頼りに、まずはポテトパンケーキを作ってみます。メインの材料はもちろんポテト。レシピには「アイダホ・ポテト」とあります。アイダホ州で獲れたじゃがいもはみんなアイダホ・ポテトと呼ばれるんじゃないの? と思ったら、ここではじゃがいもの種類のこと。粘り気のあるメークインよりホクホクの男爵に近い種類だそうなので、男爵を用意しました。

玉ねぎとにんにくをピューレ状になるくらいまでフードプロセッサーにかけます。じゃがいもは皮をむき、千切りスライサーで千切りに。ボウルに先ほどのピューレ、じゃがいも、とき卵、塩を入れ、よくかき混ぜます。ここで水っぽいようなら様子を見ながら少しずつ小麦粉を加え、生地の固さを調節します。

フライパンに1センチくらいの深さにサラダ油を入れ、スプーンで生地をすくって直径10センチくらいになるように落とします。片面3分くらいずつ、きつね色よりちょっと濃いくらいの色にカリッと揚げ、ペーパータオルなどで油を切ります。付け合せのアップルソースは、りんごを角切りにしてひたひたの水、砂糖とともに鍋に入れて火にかけ、やわらかくなったらフォークなどでつぶします。

パンケーキは油で揚げるような感じ。アップルソースはフォークでつぶすくらいの粗さでOK

パンケーキにお好みで塩こしょうを振り、サワークリーム、アップルソース、オニオンソテーを添えて出来上がり。

全宇宙で有名? 水餃子みたいな「ピエロギ」

お次はピエロギ。これはウクライナやロシア、ポーランド、スロバキアなど、東欧諸国でよく食べられている水餃子のような料理。『メン・イン・ブラック』(1997年)では、猫を連れた宝石商のおじさん(実はアルキリア星人)が、同星の外交官とレストランで落ち合った際に、なぜかこのピエロギを注文していました。宇宙人にも人気なのでしょうか。彼らが話すアルキリア語(?)のなかに「ピエロギ」という言葉が入るのが笑えます。

ピエロギの具はマッシュポテトやチーズ、挽肉などがポピュラーですが、チョコレートやフルーツを使うデザート感覚のものもあるんだとか。ヴェセルカでは1日に3,000個も作る人気メニューで、具は数種類あるなかからいくつか選べるようになっています。わたしもがんばって何種類か作ってみます。

具のバリエーションはお好みで!

はじめに皮を作ります。小さなボウルに卵黄、牛乳、水、サラダ油を入れてよく混ぜます。大きなボウルに小麦粉を入れ、先ほどの卵黄その他の液を3回くらいに分けて加えて混ぜ、まとまったらよく練ります。生地がなめらかになったら、ラップで包んで冷蔵庫で20分ほど休ませます。

生地を休ませている間に、付け合わせと具の準備。付け合わせのオニオンソテーは、スライスした玉ねぎをバターで飴色になるまでよーく炒めます。具その1はポテト。マッシュポテトにオニオンソテーとカッテージチーズ、塩、こしょうを加えて混ぜておきます。

具その2、ザワークラウトとマッシュルーム。粗く刻んだマッシュルームをバターで炒め、ザワークラウトと小麦粉少々、こしょうと和えておきます。ザワークラウトはキャベツを発酵させて作る漬物。今回は瓶詰のものを使いました。

具その3、ハムとチーズ。マッシュポテトと細かく切ったハム、チェダーチーズ、塩、こしょうを合わせておきます。

4種類の具、そろいぶみ

もうひとつ、ヴェセルカではクリスマス・メニューとして特別に出されるという、ピエロギとは形がちょっと違った「リトルイヤー(小さい耳)」も作ってみます。こちらの具は、マッシュルームとポルチーニ。鍋にサラダ油を入れてみじん切りの玉ねぎを透き通るまで炒め、マッシュルームと水でもどした乾燥ポルチーニを粗く刻んだものを加えて炒め、塩、こしょうします。

生地はのばしやすい大きさに分けます

いざ、包んで茹でましょう

休ませた生地は粉を振った台で2ミリくらいの厚さにのばし、クッキーカッター(なければグラスのふちなどでも)で丸く切り抜きます。真ん中にそれぞれの具をのせ、まわりに卵白を塗って半分に折り、ふちをフォークの背で押して生地を閉じます。

リトルイヤーは、同じように具をのせて半分に折ったものを、イタリアのパスタ、トルテリーニのように丸く巻き、両端を卵白で貼りつけます。

ふちはフォークの背で押さえます。右はリトルイヤー

これでピエロギ&リトルイヤーの準備はOK。鍋にお湯を沸かして塩を入れ、沸騰したらピエロギ&リトルイヤーを入れます。

たくさん入れるとくっついてしまうので、数個ずつ何度かに分けて。3分ほど茹でて浮いてきたら引きあげ、水気を切ってお皿に盛り、サワークリーム、アップルソース、オニオンソテーを添えればピエロギ&リトルイヤーの完成です!

ヴェセルカ名物、そのお味は?

さっそく実食。ポテトパンケーキは、パンケーキと言われて思い浮かべる甘くふわふわのものとは違い、カリカリのハッシュポテトのよう。サワークリーム、アップルソース、オニオンソテーとのそれぞれのコンビネーションが楽しめます。

ピエロギは、じゃがいもやマッシュルームを具のメインにしているせいか、思ったよりあっさり。その分、何個でも食べてしまえそうです。次にニューヨークに行く機会があったら、ぜひヴェセルカで本物を食べてみたい!

ちなみに『恋人たちの予感』(1989年)でメグ・ライアンが偽のあえぎ声を上げてまわりの客の度肝を抜いた「カッツ・デリカテッセン」は、ヴェセルカから徒歩15分程度のところにあります。

そのほか、『プラダを着た悪魔』に登場した「バビーズ」「マグノリア・ベーカリー」、『セックス・アンド・ザ・シティ』(2008年)の「マーサーキッチン」「ラウルズ」、『コヨーテ・アグリー』の「コヨーテ・アグリー・サルーン」など、映画ファンなら「あ、あの店!」とテンションのあがりそうな店が、この近くだけでも何軒もあります。ヴェセルカから徒歩で「映画の料理、食べ歩いてみたら」という企画もできちゃいそうです。

もちろん、『オーシャンズ8』に登場するメトロポリタン美術館やプラザホテル、ピエール・ホテル、ロックフェラー・プラザにあるオークション会社クリスティーズ、高級百貨店バーグドルフ・グッドマンなど、ちょっとハイソなロケ地を巡るのも楽しそう。それにしても、こんなにゴージャスな宝石や衣裳がわんさか登場するのに、パンケーキとピエロギばかりに目が行ってしまう自分って一体……。

デビーの真似してマティーニで乾杯(詳細は映画にてご確認ください!)

【材料】
《ポテトパンケーキ》
じゃがいも(男爵)、玉ねぎ、にんにく、卵、小麦粉、塩、こしょう、揚げ油、サワークリーム
《アップルソース》りんご、砂糖、水
《オニオンソテー》玉ねぎ、バター
《ピエロギ》
皮 :小麦粉、卵、牛乳、水、サラダ油、塩、こしょう
具材:マッシュポテト、カッテージチーズ、玉ねぎ、マッシュルーム、ザワークラウト、ハム、チェダーチーズ、乾燥ポルチーニ、バター、塩、こしょう
サワークリーム
【映画っぽい雰囲気を盛り上げる小道具】
ダイヤモンドのネックレス、有名デザイナーのドレス、ナインボール、いかさまトランプ、水増しウォッカ、マティーニ(シェイカーも)