世界的なヒット作となっただけでなく、アカデミー長編アニメーション作品賞をはじめ、数々の賞を受賞したディズニー/ピクサーのCGアニメーション『Mr.インクレディブル』(2004年)。あれから14年の歳月を経て、一足先に世界各地で公開された最新作『インクレディブル・ファミリー』は、これまでの全米アニメーションの歴史を塗り替える驚異的な大ヒットを記録した。

前作はなぜ支持されたのか、そして数多くのヒーロー映画が公開されている今、なぜこの最新作がこれほどヒットしているのだろうか。

2004年の『Mr.インクレディブル』はなぜ支持されたのか?

インクレディブル・ファミリー 前作比較

(C) 2018 Disney / Pixar. All Rights Reserved.

前作『Mr.インクレディブル』の公開は2004年。今でこそ、マーベル・コミックスやDCコミックス作品を中心にヒーロー映画が次々と公開されているが、当時はサム・ライミ監督の『スパイダーマン』(2002年)や、『X-MEN』シリーズも、まだ2作品しか公開されていない頃で、現在のアメコミ映画隆盛にはほど遠い時期だった。

そんな中、『トイ・ストーリー』シリーズや『モンスターズ・インク』(2002年)、『ファインディング・ニモ』(2003年)など、次々に世界的ヒット作を飛ばしていたピクサーが初めて人間のドラマを描き、主人公をヒーローにしたことで、これまで描かれていなかった激しいアクションシーンを革新的な映像で見せたのが『Mr.インクレディブル』だ。

当時のアメコミヒーロー映画は、“苦悩するヒーロー”の物語を描くのが主流。本作はアメコミではないが、スーパーマンをはじめとしたヒーローたちをモチーフにしており、“ヒーローがヒーローとして生きられなくなってしまった世の中で苦悩する”という設定で描かれている。

しかし、監督のブラッド・バードは、最先端のCGアクション、テンポのいい脚本、そして家族の団結をパワフルかつコミカルに描き、暗いトーンは排除しながら、悪党が“倒される”のではなく“死ぬ”という、それまでのディズニー作品では考えられない展開を実現させた。こうしたリアルな物語が、子どもだけでなく大人にも受け入れられたことがヒットした要因と言えるだろう。

『インクレディブル・ファミリー』は予想を超える爆発的ヒット

インクレディブル・ファミリー 解説

(C) 2018 Disney / Pixar. All Rights Reserved.

ハリウッドではヒットするとすぐに続編が作られるが、ピクサー作品においては、『モンスターズ・ユニバーシティ』(2013年)や『ファインディング・ドリー』(2016年)など、続編が公開されるまで10年以上の歳月を要している。

いずれも月日が経ったにも関わらず大ヒットを記録したが、『インクレディブル・ファミリー』は、この2作に比べるとキャラクターの知名度などでやや劣る印象があっただけに、さすがに爆発的大ヒットとはいかないだろうと予想されていた。

しかし、予告編が公開されるやいなや凄まじい反響が起こり、動画再生回数は全米アニメーション歴代1位、前売りも爆発的な売り上げを記録した。そして全米で公開されると、全米歴代アニメーション作品1位の週末オープニング興行収入記録を樹立。公開から24日間での興収も歴代1位となり、7月23日時点での全世界興収は9億4000万ドル(※Box Office Mojo調べ)を超えるという、凄まじい成績を叩き出している。

ヒットの要因は様々な議論がなされているが、メインのファミリー層に加えて、10代後半から20代の若年層が多く劇場に詰めかけたことが大きいと考えられている。前作の公開時に劇場で観た少年少女が大人になり、再び劇場に詰めかけたというわけだ。

それに加えて、2004年という時期はちょうどVHSがDVDに移行される過渡期。ブラッド・バード監督が「ピクサーの目標は、50年後も現在とまったく同じ鮮度で鑑賞できる映画を作ること」と話すように、この14年間に、レンタルだけでなくDVDが家庭に広く普及し、色褪せない素晴らしい作品が、自宅で気軽に鑑賞できるようになった。このことで、劇場公開が終わったあとも新たなファンを獲得し続け、今回のヒットに繋がったのだろう。

飛躍的な進化を遂げた圧巻のアクションシーン

爆発的ヒットの最大の要因は、各批評サイトなどでの評価からもわかるように、やはり本作の出来栄えが素晴らしいからこそだ。

14年間でCG技術は飛躍的に進化。「CGはもはや革新的な技術を生み出すものではなく、そこら中にあるもの」と監督が言うように、新しい技術で革新的な映像を生み出すのではなく、数多くの会社が短期間で一気に作品を作り上げ、その中でいかに違いを出していくかが競われる時代である。

本作が凄いのは、そんな時代背景がありながらも、前作のラストからそのまま物語が始まるという点だ。もちろん、当時これほどクオリティの高い映像が作られていたことにも驚かされるのだが、前作を観た直後に最新作を観ても、主人公たちの見た目に技術的な違和感はなく、スムーズに入り込めるのだから素晴らしい。

しかし、アクションシーンのスケール、爆発の炎、砂埃のリアルさなどは格段に進化しており、オープニングで展開する凄まじいアクションに引き込まれるだろう。

インクレディブル・ファミリー あらすじ・ネタバレ

(C) 2018 Disney / Pixar. All Rights Reserved.

他にも最先端の技術が余すことなく注ぎ込まれているのだが、注目すべきは今回の物語の中心人物である“ゴム人間ママ”こと、イラスティガールのバイクチェイス。

超スピードで繰り出されるゴム人間の能力を最大限に生かしたド迫力アクションの数々は、CGアニメーションでしか描けないだけに、本作の醍醐味と言えるシーンに仕上がっている。

多くのアメコミヒーロー映画がひしめき、強い女性が描かれた作品がヒットしている昨今。本作で世界中のヒーロー復権の担い手となるのは“ママ”である。となれば、その間に家庭を守るのは当然パパ。時代の流れもあり、夫婦関係が前作とは逆の関係で展開していくのも面白い。

最新作というよりは、前作と本作で一つの映画と言ってもいい作品なので、ぜひ前作を観てから映画館に行くことをおすすめしたい。

コミカルでテンポのよいストーリーはそのままに、昨今のヒーロー映画に負けないド派手なアクション、そして家族の絆。ついに日本でも公開となった『インクレディブル・ファミリー』は、そのすべてを高いレベルで実現させた、映画史に残る傑作に仕上がっている!

文=SS-Innovation.LLC