【町田雪のLA発★ハリウッド試写通信 ♯11】
「LA発★ハリウッド試写通信」では、ロサンゼルス在住のライターが、最新映画の見どころやハリウッド事情など、LAならではの様々な情報をお届けします。

6月上旬に米公開となった女性オールキャストのクライム映画『オーシャンズ8』(日本では8月10日公開)は、公開週末興収トップ(翌週2位)、かつ、シリーズ前作の『オーシャンズ11』『オーシャンズ12』『オーシャンズ13』すべてを上回る好スタートを切った。

そもそも『オーシャンズ』シリーズとは

人気シリーズの女性版として、2016年に公開された『ゴーストバスターズ』と何かと比較されることが多いが、失敗作との烙印を押された同作のカタキを討つことができるのか? 2作の比較を交え、女性主役映画の未来を占ってみたい。

『オーシャンズ8』 8月10日(金) 全国ロードショー。
(c) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC

『オーシャンズ』シリーズとは、1960年に公開されたフランク・シナトラ主演の『オーシャンと十一人の仲間』をスティーブン・ソダーバーグ監督がリメイクした『オーシャンズ11』(2001年)と、その続編『オーシャンズ12』(2004年)、『オーシャンズ13』(2007年)のこと。

ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモンをはじめとする豪華キャストに加え、犯罪映画ながら、銃撃や殺戮シーンを使わない紳士性が特徴である。

『オーシャンズ8』は、その大ヒットシリーズの女性版として、サンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイらを配して製作された。それぞれに得意分野を持つ女性8人の犯罪ドリームチームが、世界最大のファッションの祭典メットガラを舞台に、前代未聞の強奪を実行する――。

興収とキャストで比べる『ゴーストバスターズ』と『オーシャンズ8』

では、同作と『ゴーストバスターズ』の違いは何なのか? まずは、データを比べてみたい。公開初週末の興行成績においては、『オーシャンズ8』が予算7,000万ドルで興収4,150万ドル、『ゴーストバスターズ』が予算1億4,400万ドルで興収4,600万ドル。予算は2倍以上、興収もわずかに後者が上回っていることがわかる。

『オーシャンズ8』 8月10日(金) 全国ロードショー。
(c) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC

ただし、公開初週末ランキングでは、『オーシャンズ8』がトップ、『ゴーストバスターズ』は当時、公開2週目のアニメーション映画『ペット』(2016年)に次ぐ2位だった。

観客動員のカギとなるキャストは、米国内だけを見れば、ともにメジャー級だが、世界市場を考えると、圧倒的に『オーシャンズ8』に軍配が上がる。

『ゴーストバスターズ』にも、メリッサ・マッカーシー、クリステン・ウィグら、米国内で言えばプレミア級のコメディエンヌたち(かつ、このコンビは『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(2011年)を大ヒットさせた女性主役映画の成功者)が出演しているが、『オーシャンズ8』には、世界的スター&オスカー受賞歴あり&単独で主役映画をヒットさせられるという前述のトップ3がズラリ。

さらに、リアーナ(歌手)やミンディ・カリング(コメディエンヌ)ら、それぞれの分野で大人気の顔ぶれがそろっているのだから、敵なしだ。

女性映画をバッシングしているのは…?

ソーシャルメディア動向においては、『ゴーストバスターズ』は『スター・ウォーズ』シリーズと同じように、女性キャラクターのキャスティングや内容をめぐる炎上に見舞われたが、『オーシャンズ8』へのバッシングは少ない。

専門家によれば、「こうしたオンライン・バッシングを主導しているのは、これらの作品とともに、子供時代、青年期、成人時代を過ごしてきて、作品にそれなりの影響力を与えてきた大人の男性。だから意見も強い。一方で、(ソダ―バーグ版)『オーシャンズ』シリーズは比較的新しいため、そうした存在に叩かれるチャンスが少ないのだ」という。

つまり、上記を総合すると、『ゴーストバスターズ』が失敗作と位置付けられた主な理由としては、公開興収トップをとれなかったこと、予算が膨大で採算が合わなかったこと、キャスト的に海外興収が苦戦したこと、ソーシャルメディアの否定的な動きなどがあげられる。

様々なプレッシャーを抱えて公開された映画

『オーシャンズ8』は、こうした先例の結果による「女性リブート版はダメだろう」的なムードに加え、性別・人種の多様性やチャンス平等を求める「Time’s Up」ムーブメントやインクルージョン・ライダー(俳優が出演契約に盛り込むことができる、撮影現場における人種・男女の平等を保障する条項)の台頭、言うまでもないオリジナル・リメイク版の巨大な存在というあらゆるプレッシャーを抱えて米公開された。

『オーシャンズ8』 8月10日(金) 全国ロードショー。
(c) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC

レビューには、「内容がセーフ過ぎて物足りない」「男性映画の真似事ではなく、新たな女性主導シリーズに挑戦すべき」など、厳しい声も混じるが、キャスティングにおいて人種の多様化を実行したこと、ファッションや女性ならではのウィットで十分楽しませられることを見せただけでも、大きな一歩ではないだろうか。

データによれば、同作公開初週末の観客層は、女性が69%。ブランシェットが常々声高に叫ぶ「世界中に女性の映画を観たい女性がたくさんいる」という、あたり前のようで見過ごされてきた事実も証明された。

これからの“女性主役映画”はどうなるのか

興収の成功、内容の新鮮さ、社会への貢献度など、すべてを1本の映画に求めてハードルを上げ、女性主役映画に暗雲をかぶせるより、たくさんの女性主導アクション、スパイ、アドベンチャー、ホラー映画が生まれるなかで、各映画の特長を楽しむことができればいいのではないだろうか?

ヒーロー映画においても、マーベルが今後、ブリー・ラーソン主演の『キャプテン・マーベル』をはじめ、スカーレット・ヨハンソンが演じるブラック・ウィドウの単独映画、イスラム教徒の女性ヒーロー『ミズ・マーベル』の映画化などを進行中。あらゆるジャンルの女性主役映画が登場予定なのだ。

個人的にも、『オーシャンズ8』を観る直前のワクワク感は、今までに感じたことのないものだった。女性同士のおでかけ映画としておすすめであるし、もちろん、男性だって楽しめる作品。難しいプレッシャーを課さずに、楽しんでほしい。

『オーシャンズ8』は、8月10日(金)、全国ロードショー。

(Avanti Press)

【特集記事】『オーシャンズ8』あらすじ&キャスト、見どころを紹介

スティーブン・ソダーバーグ監督のもとに、ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモン、ジュリア・ロバーツ、アンディ・ガルシアなど、“ありえない”超豪華キャストが集結して描かれた『オーシャンズ11』。シリーズ化され、2003年に『オーシャンズ12』、2007年に『オーシャンズ13』と、2本の続編も作られた。そこから、11年の月日が流れ2018年。キャストを一新して“オーシャンズ”が再始動! 最新作『オーシャンズ8』のキャスト、あらすじ、みどころを紹介!