10年付き合った恋人に振られ、腹いせに誘拐してきた恋人の飼い猫ムチャチャとともに、パリの街をさまよう31歳のポーラの破天荒な日々を、ポップに切り取った『若い女』(8月25日より公開)。監督を始め、プロデューサーからデザイナー、作曲家、撮影監督に至るまで、全て女性スタッフのチームで作り上げた、まさに“若い女たち”のパワーが詰まった骨太ガーリー映画の魅力に迫る!

アラサー女子の悲惨な日常も、モフモフ猫の可愛さと音楽で救われる

「嘘つきで、泣き虫で、見栄っ張り」という、身近にいたら絶対友だちにはなりたくないタイプの主人公、ポーラ。

猫を連れてきたばかりに友人宅や安宿からも追い出され、頼みの綱だった実家に戻ろうとするも、実の母親にすら拒絶される始末。学生と偽ってなんとか住み込みのベビーシッターのアルバイトを探し出し、ショッピングモールの中にある下着屋で働き始めるも、なんと元カレの子どもを妊娠していることに気づき、ひとり途方に暮れるのだ。

失恋の痛手を負い、お金も、職も、住むところすらないなんて、なんとも悲惨極まりない状況ではあるのだが、モフモフした猫のムチャチャの可愛さは絶品。一見足手まといのようでいて、実はムチャチャがこの作品のムードメーカーとして、大事な役割を果たしているといっても過言ではないだろう。

また、新進気鋭のフランス人作曲家ジュリー・ルエが紡ぎ出すポップなサウンドも、ポーラの毎日に寄り添ってくれるのだ。

(C)2017 Blue Monday Productions

ジーナ・ローランズを彷彿とさせる、体当たり演技で話題の女優レティシア・ドッシュ

エキセントリックなポーラに扮するのは、女優のみならず、ダンサー、作家、演技監督としても活躍するレティシア・ドッシュ。感情むき出しの演技が、どこか若かりし頃のジーナ・ローランズを彷彿とさせるが、過去に話題になった舞台が「レティシアは屁をこく」というタイトルであることからも、彼女が只者ではないことが想像できるはずだ。

本作での体当たりな演技が認められ、2018年のリュミエール賞最有望女優賞に輝いた彼女だが、ドアに頭突きするシーンの撮影中に、熱演のあまり流血してしまったというエピソードも。額の傷を前髪で何とか隠そうと工夫した結果、劇中で笑いをかっさらう「エイミー・ワインハウスの物まね」が生まれたというから、転んでもただでは起きない、彼女のたくましさに驚愕させられる。

今年9月には自ら裸になって本物の馬と対峙する、自作自演の舞台公演も控えている。レティシアのぶっ飛んだ才能は、今後話題沸騰となること間違いなしだ。

監督を務めているのは、フランス国立映画学校・脚本制作コース出身の若き俊英、レオノール・セライユ。なんと卒業制作の脚本を基に完成させた長編デビュー作でありながら、昨年のカンヌ国際映画祭で見事カメラドール(新人監督賞)に輝くという快挙を果たした本作は、その後も数々の映画祭で賞を獲得。さらには、フランスで最も権威のあるセザール賞にもノミネートされるなど、まさに驚きの処女作として脚光を集めている。

(C)2017 Blue Monday Productions

8月11日から公開される『タイニー・ファニチャー』のレナ・ダナム監督しかり、本作のセライユ監督しかり、「痛い女性をありのままに描く」彼女たちが生み出すヒロインたちは、時に「自虐が過ぎる!」と思うほど、みじめでみっともない姿をさらけだす。だが、実はそれこそが過酷な現実社会でなんとか生き抜くための、唯一無二の処世術なのかもしれない。ポーラの破天荒ぶりを、ぜひ見届けてほしい。

(文/渡邊玲子@アドバンスワークス)