豪華スター共演により、プロの窃盗団の活躍を描いた『オーシャンズ11』(2001年)は、3作品が制作される人気シリーズとなった。現在公開中の最新作『オーシャンズ8』は、女性版としてキャストを一新。全米で公開されるや過去シリーズを超える大ヒットを記録している。早くもシリーズ化の話も聞こえてくる、本作のレビューをお届け!

デビー・オーシャンを演じるのはサンドラ・ブロック

オーシャンズ8 感想ネタバレなし

(C) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

新しく生まれかわる『オーシャンズ8』が発表された時点で、誰がオーシャンの役割をつとめるのかは非常に気になる点だった。ユーモアと風格があるチームのリーダーで、前に出すぎず、でもおいしいところは持っていく。そんなポジションに選ばれたのは、ダニーの妹であるデビー・オーシャン。そして、そのデビー役に抜擢されたのがサンドラ・ブロックだ。

人気女優のアン・ハサウェイは、「サンドラ・ブロックが女性キャストで新しい『オーシャンズ』をやるらしい」という噂を聞きつけた時点で、「それって最高の仕事じゃない?」と、早々に出演を決めたという。また、本作の制作は“サンドラありき”で進んでおり、彼女にオファーが出された時は、脚本も完成していなかったというのだ。

人気女優から愛されるだけでなく、その高い演技力からスタッフの信頼も厚いサンドラの配役は、作品を観れば誰もが間違っていなかったと確信するだろう。男性版でジョージ・クルーニーが演じた兄ダニー・オーシャンと同様、そこにいるだけでリーダーだとわかる存在感を持つサンドラが扮したデビーは、冒頭のシーンで、高級ホテルのスタッフを見事な手際で欺き、無料で宿泊する“詐欺”を披露してくれる。

サンドラといえば、数々の出演作をヒットさせ、コメディエンヌとしての評価も高く、オスカーも獲得している実力派女優だ。今作で演じるのは“犯罪者”だが、彼女が演じることで、高級ホテルのスタッフがあっさりと欺かれても、“仕方がなかった”と納得せざるを得ない、気品すら感じられるシーンになっている。

さもすれば憎まれるであろう役柄にも妙な説得力を持たせ、颯爽と演じてしまう実力こそが、“オーシャンズのリーダー”に抜擢された要因なのだろう。

オーシャンを取り巻く、個性的すぎるメンバーたち

オーシャンズ8

(C) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

デビーが信頼する相棒・ルーを演じたのは、オスカー女優のケイト・ブランシェット。ルーは男性版でブラッド・ピットが演じたライナスの役どころと似ていて、作戦全体をマネージメントする立場だ。作戦を実行するにあたりリスクになると判断すれば、たとえそれがリーダーのデビーであっても、メンバーから外してしまう厳しさを持っている。

男性版において、ダニーと相棒のライナスはわがままな兄としっかり者の弟のような関係。本作のデビーとルーも同じような関係ではあるのだが、ケイトが醸し出すクールで大人な雰囲気と、サンドラの天真爛漫な性格のせいか、ルーの方が姉のように見えてしまう(実際はケイトが5歳年下)ところも、観ていて面白いポイントだろう。

オーシャンズ8 レビュー

(C) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

さらにもう一人、本作への出演を快諾した世界的人気女優のアン・ハサウェイは、オーシャンズのターゲットであるカルティエのネックレスを身に付ける女優、ダフネ・クルーガーとして登場する。本人自身がハリウッドの人気女優だが、普段の彼女が見せる落ち着きのある立ち振る舞いに比べると、少し高飛車なダフネを大げさなリアクションで楽しそうに演じている姿が印象的。

アンが、「ダフネはみんなが思っているより、ずっと頭がいいんですよ」と語っているように、彼女はこの作品のカギとなる、あなどれない存在。そんな彼女が絡む物語の顛末は、ぜひ劇場で確かめてほしい。

サンドラ・ブロックとケイト・ブランシェットに、アン・ハサウェイという3人のオスカー女優が共演しているというだけで、これは観るべき映画なのかもしれない。しかし、このシリーズが本当に面白いと思える映画になっているのは、世界的スターたちに加えて、確かな実力を持った女優たちが演じる、超個性的なメンバーの存在があるからだ。

エキセントリックで危なっかしい落ち目のデザイナーのローズ(ヘレナ・ボナム=カーター)がプライドを捨ててダフネに近づけば、盗品売買のスペシャリスト、タミー(サラ・ポールソン)はMVP級の活躍を見せる。

常に冷静な判断でチームに貢献する宝石職人のアミータ(ミンディ・カリング)や、放っておくと何でも盗んでしまうが、周りをアッと言わせる凄腕スリ師のコンスタンス(オークワフィナ)、性格に難はあるが、チームになくてはならない存在の天才ハッカー、ナインボール(リアーナ)。じゃじゃ馬リーダーのデビーと姉御肌のルーのもとで、それぞれに強烈な個性を持った女優たちが本作のキャラクターを楽しそうに演じているからこそ演技の化学反応が起き、それを観た観客は笑い、ハラハラし、一緒に窃盗に挑んだかのように、オーシャンズが見せる見事なチームワークに酔いしれることができるのだろう。

劇場で観るべし!豪華絢爛な“メットガラ”

オーシャンズ8 メイキング

(C) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

オーシャンズの面々は次々と襲いかかるトラブルを解決し、少しの不安要素を残しながらも強盗作戦に挑んでいく。物語のテンションが最高潮に達するその舞台は、世界最大級のファッションイベント“メットガラ”。世界中のセレブがノーギャラで集う中、本物のメトロポリタン美術館で撮影された。

このシーンの圧倒的な豪華さと情報量には、誰もが驚かされるだろう。次々と本物のセレブが顔を出すパーティの裏で、用意周到なオーシャンズのメンバーが鮮やかなチームワークを披露していく。同時に次々と問題が起きるため、セレブたちの顔ぶれや豪華な衣装は、とても一度の鑑賞では追いきれない。女性版オーシャンズにふさわしい豪華絢爛なシーンは、何度も劇場に足を運んで観る価値ありだ!

オーシャンズ8 衣装

(C) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

『オーシャンズ』シリーズは、クライム映画でありながら、カーチェイスや爆発シーンもなく、さらにシリーズを通して銃を使わないため、派手な銃撃戦や残酷な殺人シーンもない。主人公であるオーシャンズのメンバーたちが、ターゲットをまんまと盗むという爽快感だけでなく、本人たちがそれを楽しんでいる姿が最大の魅力であり、幅広い層に支持された理由だろう。

本作の監督をつとめたゲイリー・ロスは、作品の伝統をよく理解した上で、最高の女性キャストたちの魅力をうまく脚本に盛り込み、一度は終わったと思われたこのシリーズを新たな形で復活させた。ヒットを受け、女性版オーシャンズは新たなシリーズとなるのか。それにも期待しつつ、まずはシリーズが帰ってきたことを喜びたい!

文=SS-Innovation.LLC