日本でもヒットした韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』を再構築した『SUNNY 強い気持ち・強い愛』。1990年代に一世を風靡(ふうび)した高校生・コギャルたちの青春と、その後の人生を描いた本作で、主人公・奈美を演じた篠原涼子。青春時代を振り返ることができると作品の出来に自信をのぞかせた篠原が、撮影秘話や“転換期だった”という90年代の自身について語った。

感情を抑える演技を心掛けた

Q:オリジナルの韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』がすごくお好きだと聞きました。

何回も観ていて、そのたびに号泣してしまうぐらい良いシーンがいっぱいある映画で、自然と自分の青春時代を顧みてしまうんです。こういう作品が日本でも作られたらいいなと思っていたので、お話をいただいたときは信じられないぐらいうれしかったです。

Q:思い入れが強い作品だったのですね。

そうですね。でもわたしが演じた奈美は、とても平凡な主婦で、あまり感情を表に出さないような女性だったのですが、これまでいただいてきた役は、どちらかというと、感情をしっかり出すようなキャラクターが多かったので、油断すると癖で大げさになってしまうんです。大根(仁)監督からも基本的には任せていただいたのですが「あまり感情が入りすぎないようにやってください」と言われていたので、その点は意識しました。

Q:大根組はいかがでしたか?

大根監督自身がせかせかしていない方なので、すごく穏やかな撮影現場でした。作品の世界観にぴったりで、大根監督も“監督”というより“友達”になってくれるような方でした。

Q:穏やかな撮影現場で冷静な役柄とのことですが、あふれ出るように感情を吐露する場面もあり、全体的にグッとくるシーンが多かったです。

それぞれのメンバーたちに会いに行くことによって現実を知っていくところは、わたし自身も役柄に投影しながら、心が震えていきました。あるシーンで唯一、感情をあらわにするのですが、涙があふれて止まらなかったです。感情のバランスをとるのが、難しくもあり楽しかったです。

小室さんのおかげで自分は救われた

Q:2015年公開の『アンフェア the end』以降、映画出演はしばらく空いている印象を受けました。なにか理由はあったのでしょうか?

特に意図的なものはないですけど、たまたま出会いがなかったというのが一番の理由ですかね。あとは、テレビが好きという思いもあり、テレビドラマのお仕事が続いたからかもしれません。

Q:映画の撮影現場は篠原さんにとって、どんな場所ですか?

テレビドラマとの違いは、スケール感です。カメラさんにしても照明さんにしても、人数が違いますし、セットも豪華です。空間に染まれるという点では、役者側としてはやりやすいし、空気感を大切にしてもらえるのも映画ならではだと思います。でもなによりもわたしが好きなのは、映画もドラマも、スタッフとキャストが一致団結して物づくりに盛り上がれるところです。

Q:スタッフの一員という意味で、本作は小室哲哉さんが音楽を担当されていますね。

わたしにとって小室さんは、育ての親的な存在であり、東京のお兄ちゃん的な親しみやすさもある方。小室さんのおかげで自分は救われたと思っているので、そんな方とお芝居と音楽という形は変わりましたが、またご一緒できることはすごくうれしいですし、安心感があります。

篠原涼子の生きるテーマは「なにごとにもトライすること」

Q:劇中「不幸はみんなに平等に訪れるのよ」というセリフがありますが、この言葉はどう捉えていますか?

不幸は経験したくないけど、それによって変わることもできると思うんです。ピンチをチャンスにしちゃおうみたいな気持ちってすごく大切にしています。不幸なことって生きていれば避けられないですが、どうせだったら覚悟を決めて、なにかのきっかけにしちゃうぐらい強い人間になりたいと思っています。

Q:これまでピンチをチャンスに変えた経験はありますか?

歌が売れなくなったときですね(笑)。わたしにとって一番好きなことが歌うことだったので、それができなくなるのは「まずいな」と思ったんです。でもそのとき、売れなくてもいいから一生懸命やってみようと気持ちを切り替えました。

Q:具体的にはどんなことをされたのですか?

いままで人に書いてもらっていた歌を、自分で詩を書いてみようとか、自分なりの世界観をつくってみようと試みました。それがなにかの打開策になるとは思っていませんでしたが、自分から能動的に動くことで、自分の知らない自分に出会えました。後づけかもしれませんが、詩を書くことってすごく想像力が必要だし、人に向き合わなければならないので、演じる上でも大きなプラスになっていたと思うんです。これって、歌が売れなくなったことによって得られたことなんですよね。

Q:意識を変えたことで、視界は広がりましたか?

成功しなくても、自分でなにかをやることによって形になっていくことは自信になりました。なにごとにもトライすることって言うほど簡単じゃないので、わたしの生きる上でのテーマになっています。

取材・文:磯部正和 写真:齊藤幸子