音をききつけると襲いかかってくる“なにか”に支配された世界。この恐ろしい状況の中、生き延びようとする家族を描いた話題のホラーが『クワイエット・プレイス』(9月28日公開)です。

全米が90分沈黙する緊迫のシチュエーション

© 2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

とにかく敵はどんな音も聞き逃さず、見つけた(聞きつけた)相手を虐殺します。まさに“地獄耳”がはびこる地獄のような状況です。だから、この家族は音をたてられない。しゃべることが出来ないから、手話でコミュケートします。そしてこの家族には大きな心の傷があり、さらに母親は大きな“問題”をかかえていました。それは、普通の世界であれば“問題”でもなんでもない。しかし、この世界では大変なこと。それがまた大きなサスペンスを生むのです。

この母親役を演じているのがエミリー・ブラント(素敵です!)。多くの方にとっては『プラダを着た悪魔』(2006年)でしょうが、僕にとっては『ウルフマン』(2010年)で狼男にとどめをさし、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014年)でエイリアンと戦った方です(笑)。

そんな彼女にとって史上最大の危機と言っても過言ではない、ぐらい大変な出来事が起こる! のです。

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“音を立てるな!”という切り口で思い出すのは『ドント・ブリーズ』(2016年)ですが(この作品も面白かった)、同作において主人公たちが声を立てられない緊迫シーンは、全体の三分の一ぐらいかと思います。ところが『クワイエット・プレイス』は、映画が始まった時からすでにこの異様な世界になっており、出演者たちのセリフもほとんどなく手話でストーリーが進む。だから映画館自体がまさに“クワイエット・プレイス”状態。広告コピーに“全米が90分沈黙した”というのがありますが、本当にこれは嘘じゃない。観ている方も固唾をのんで見守るしかないのです。

しかも『ドント・ブリーズ』の場合は、自らそういう状況につっこんでいった主人公たちに問題が起こるわけですが、『クワイエット・プレイス』の場合、ある日突然、全世界がそういう状況になってしまうのです。

恐怖…だけじゃない!沈黙の世界が映す現代への警鐘

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本作は90分と、比較的最近のハリウッド映画の中では短めの上映時間ですが、それも納得。これ以上長くは耐えられない緊張感。そのくらい見入ってしまいます。僕らはこの家族に音を立てるなと祈りながら、音を立てなければ事件が起こらないので(そしてホラー映画としてはそこを楽しみにしているわけだから)早く音を立てて、とも思ってしまう(笑)。こういう相反した気持ちでこの家族を見続けました。

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世界規模で人類滅亡の危機が迫っている……という設定の中で、ある家族だけにスポットをあて物語がすすむという展開は、M・ナイト・シャマラン監督の『サイン』(2002年)やトム・クルーズの『宇宙戦争』(2005年)、『10 クローバーフィールド・レーン』(2016年)的。また、五感のうち視覚を失った人類が植物怪獣に襲われる古典SF映画『人類SOS!』(1962年)も彷彿させますが、僕は意外にも、日本のある怪獣映画を思い出しました。これはネタバレになるのでこれ以上書きません(笑)。

本作は見応えある“ホラー映画”でもありますが、「音を立てたら殺される」というギミックを使って描かれる、思う存分話すことができなくなった“家族の物語”です。相手に自分の想いや、伝えたいことを伝えるのが、いかに大切なことかという寓話でもあります。深読みすれば“声を上げれば、すぐ殺されてしまう”は、“言いたいことが言えなくなる世界がいかに恐ろしいか”の比喩なのかもしれませんね。

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『クワイエット・プレイス』
9月28日(金) 全国ロードショー
配給:東和ピクチャーズ
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 文・杉山すぴ豊

【特集記事】【ネタバレなし】『クワイエット・プレイス』ストーリー&見どころを紹介!

歴代ホラー映画No.1ヒットを記録した『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)を筆頭に、近年洋画のホラー作品から次々と大ヒット作が誕生している。そんな中、またしても記録的な大ヒット作が登場。荒廃した世界を舞台に、セリフも音楽もほとんどなく、登場人物も少人数で構成された物語は、全編を圧倒的な恐怖と緊張感が支配し、観客をスクリーンにクギ付けにする。大注目作のストーリー&見どころを紹介!