9月7日公開の『500ページの夢の束』は、自閉症のウェンディが“ある目的”のために、数百キロの道のりを経てハリウッドを目指す物語です。

旅の目的は、ウェンディが『スター・トレック』脚本コンテストに応募すること。1966年のテレビドラマ放送以降、アメリカで絶大な人気を誇る『スター・トレック』が本作にとって重要なキーワードとなっています。例えば、家族に黙って旅に出た彼女を探しに来た警察官が、彼を警戒するウェンディに、『スター・トレック』に登場するクリンゴン語で話しかけるといった具合です。

『スター・トレック』の大ファン、通称“トレッキー”は本作のみならず、これまでもさまざまな映画に姿を現しています。今回は、過去の映画に登場した『スター・トレック』オマージュをピックアップして紹介します。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』やあのセリフも…

マイケル・J・フォックスが、主人公のマーティを演じた大ヒット作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)。30年前にタイムスリップしたマーティは、若かりし頃の母・ロレインが自分に惚れてしまったため、あの手この手を使って本来の相手である父・ジョージと結ばれるように画策します。

その一環としてマーティは宇宙人の変装をして、深夜に父親の寝室に侵入。「俺の名前はダース・ベイダー。バルカン惑星から来た宇宙人だ」とSFオタクの父親に話しかけ、母親をダンスパーティーに誘わないと、脳を溶かしてしまうと脅迫するのでした。

ダース・ベイダーといえば、言わずとしれた『スター・ウォーズ』の人気キャラ。そしてバルカン惑星は、『スター・トレック』に登場する宇宙人の住む星の名前です。映画を観たSFファンたちが、思わず笑ってしまうシーンでした。なぜなら、マーティンがタイムスリップした1955年は両作品とも世に出ていませんから。

エンタープライズ号に関係するオマージュネタ

原子力潜水艦を舞台に、核戦争の危機を巡るドラマを描いた『クリムゾン・タイド』(1995年)では、主演のデンゼル・ワシントンが演じたハンター副官がトレッキーでした。

無線機の故障を直さなければ、世界で核戦争が起きてしまうという極限状態の中、ハンターは無線機を修理中の部下に「スター・トレックを(観たことあるか)」と聞きます。さらには、2人の間で「君はチャーリーだ。無線を修理してくれ」「わかりました」というやり取りが……。

“チャーリー”は、『スター・トレック』で主人公たちが乗る宇宙船U.S.Sエンタープライズ号のエンジニアの名前。『スター・トレック』では危機的な状況の中、チャーリーがギリギリでエンジンや防御スクリーンを修理するという場面が何度かあります。トレッキーの多いアメリカでは、思わず鼓舞される言葉なのでしょう。

U.S.Sエンタープライズ号に関するネタが登場する映画といえば、ブルース・ウィリスが主演をつとめ日本でも大ヒットした『アルマゲドン』(1998年)を忘れてはいけません。

ブルース演じるハリーは、地球に衝突しようとする小惑星に穴を掘り、核爆弾を仕掛けるという壮大なミッションに挑戦します。集めた部下に事情を説明し、「どうする?」と参加の意思を尋ねるハリー。それに対して、一人が「Beam me up, Scotty」と答えます。このセリフ、日本語では「チャーリー、転送を頼む」と訳されている、『スター・トレック』シリーズの最初の作品「宇宙大作戦」(1966~1969年)に登場した有名なセリフの一つです。

U.S.Sエンタープライズ号が船外の間を移動する方法は「転送」。船長であるカークが、機関主任のチャーリーに自身の転送を指示した際に発したのが先程のセリフで、ハリーの部下はそれになぞらえて、参加の意思を示したのです。このセリフは、同作のみならず様々な作品でオマージュされています。ちなみに、日本語訳ではチャーリーと変更されていますが、本国での名前は「Scott(スコット)」で、「Scotty」はアダ名です。

感動シーンにも登場するトレッキー

トム・ハンクスが、祖国で起きたクーデターによってアメリカの空港から出られなくなった男・ビクターを演じた『ターミナル』(2004年)にも、重要な役どころでトレッキーが登場します。

ビクターは、親しくなった空港で働くフードサービス係のエンリケの頼みで、彼が恋する入国係官の女性トーレスの趣味を聞き出すことになりますが、その趣味こそが『スター・トレック』。つまり彼女はトレッキーだったのです。その後、2人の仲が進展するのですが、感動的なシーンで、トーレスがみせたのが「バルカン・サイン」です。バルカン・サインとは手をあげて、人差し指と中指、薬指と小指をそれぞれくっつけ、中指と薬指の間を空けるポーズのこと。『スター・トレック』に登場する宇宙人・バルカン星人の挨拶です。感動的なシーンでも『スター・トレック』オマージュが使われるのは、アメリカ映画ならではと言えるかもしれません。

一方で映画そのものが『スター・トレック』のパロディ、という作品もありました。2000年公開の『ギャラクシー・クエスト』は、伝説的な人気を集めたという作中SFドラマ「ギャラクシー・クエスト」の出演者が、本物の宇宙人にスカウトされて、悪の宇宙人と戦うという物語です。

この「ギャラクシー・クエスト」という番組は、どこからどう見ても『スター・トレック』が元ネタです。宇宙船から転送を使って移動したり、宇宙人の副長が行う挨拶も同作そっくり。「きっと制作陣はガチなトレッキーなんだろうな」と、ネタが分かってみていると、思わずニヤニヤしてしまいます。

映画の中で登場人物たちが、まるで常識であるかのように『スター・トレック』のことを話しているのを見ると、いかに同作がアメリカで愛されているのかが分かりますね。『500ページの夢の束』では、『スター・トレック』を通じてどんな物語が生まれるのか、ぜひ劇場で確かめてみてください。

『500ページの夢の束』/(c)2016 PSB Film LLC/2018年9月7日(金)より新宿ピカデリー ほか全国ロードショー

(文/ハーバー南@H14)