『モテキ』から7年。この間、常に新作を待望され、いずれもその期待に応えてきた大根仁の長篇第5作は、韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』のリメイク。何をやっても「定評のある」大根は、人々の記憶にも新しいヒット映画をどのように見せてくれるのか。

―オリジナルの公開当時、劇場に3回見に行ったそうですね。なぜですか?

すごく面白いと思った映画は、仕事として、何度も見に行くようにしているんです。1回目は普通の観客として見ているので、2回目で脚本、撮影、照明、編集、音楽などを確認する。3回目は「なんでこんなによくできているのか」を総合的に分析しつつ、CGの使い方やエキストラの動き方など、2回目でも見逃していた部分を確認します。

―他に、どんな映画を繰り返し見ましたか?

デイヴィッド・フィンチャーとかイ・チャンドンの映画なんて5回くらい見ないと…見てもわからないことがあるので何度も見ます。物語がどうこうではなくて、複雑なレイヤーを分析する作業といいますか。

オリジナルは30回くらい見た

(C)2018「SUNNY」製作委員会

―オリジナルの『サニー 永遠の仲間たち』で特に「よくできている」ポイントは?

自分の映画は音楽を絡ませることが多いから、音楽が物語と無理なく馴染んでいることに感心しました。韓国映画のいいところは、良くも悪くも非常に直情的というか、喜怒哀楽がはっきりしているところで、『サニー』はそのバランスがものすごく取れている。前半であれだけ笑わせておくからこそ、後半を牽引する力になっていると思います。

―リメイクが決まってからも見ましたか?

さらに30回くらい見ていると思います。

―それはなぞらないようにするためですか?

むしろなぞるようにするためです。小説や漫画を2時間の映画にするときは、もう一度生まれ変わらせるために換骨奪胎の作業が必要です。でも、今回のリメイクではオリジナルの構成を崩す必要がないと思ったので、何度も見ながら脚本に起こしました。そして、過去パートを90年代の女子高生に、現代パートを今のアラフォー世代に置き換えたものを一回作ってみて、そこから出汁を効かせて、味を調えて、日本食にアレンジしたみたいな。

コギャルの時代ならイケるかも

(C)2018「SUNNY」製作委員会

―そもそも、過去パートをオリジナルの80年代から90年代に変えたのはなぜですか?

プロデューサーの川村(元気)君から「リメイクできるんじゃないですか?」って言われて、僕は「無理だよ」と言いました。オリジナルは、80年代の民主化運動という、韓国社会におけるターニングポイントが背景だから、そのまま日本の80年代に置き換えても成立しない。川村君から「じゃあどうやったらできますか?」と聞かれて、「90年代のコギャルの時代ならイケるかもね」と。

―確かに、コギャルの時代ほど画的に強い時代はないですよね。

当時“女子高生ブーム”と言われていたし、音楽業界も派手だった。時代設定を明確にはしていないんですけど、奈美(広瀬すず/篠原涼子)は95 年の震災で被災して引っ越してきたので、95〜97 年のどこかです。バブルが弾けて、10年くらいかけて不景気の波が押し寄せてきて、大人たちの元気がなくなっていく社会情勢のなか、女子高生たちだけがむちゃくちゃテンションが高くて、世紀末パーティーみたいなものを謳歌しているように見えたんです。

―広瀬さんや池田エライザさんからは「当時のギャルたちはどんな気持ちで日々を過ごしていたのですか?」と質問されたそうですが、どう答えましたか?

コギャルだった人たちにレクチャーをしてもらいました。今は上品な奥様たちが、「何 も考えていなかったよね〜」「なんか調子に乗ってたよね〜」と、ちょっと恥ずかしそうでした。何も考えていないからあのテンションでいられたことが大事なのかなと。

記事の続きは『キネマ旬報』9月上旬号に掲載。本号では、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』のほか『検察側の罪人』や「2018年 アニメーション映画のゆくえ」と題したアニメーション映画の特集などをおこなった。

構成・文=須永貴子/制作:キネマ旬報社