美しいが才能はないニナ役の土屋太鳳と、容姿に自信はないが演技の才溢れる累役の芳根京子が、キスで顔を入れ替え完璧な女優になる映画『累-かさね-』。難易度の高い演技に挑戦した2人が、その苦労と喜びを語った。

共に挑んだ難役

Q:キスで顔が入れ替わる設定ですから、お二人のキスシーンという見どころが何度もあります。そのシーンの撮影はいかがでしたか?

土屋太鳳(以下、土屋):きょんちゃん(芳根)の唇は、素敵に決まっているじゃないですか(笑)。でも、それどころじゃなくお芝居が大変だったので、正直、あまり覚えてないんです。

芳根京子(以下、芳根):このキスは感情のキスではなく生活の一部ですと、(佐藤祐市)監督はおっしゃっていました。ですから、最初こそ緊張しましたけど、そんなに抵抗はなかったです。

土屋:大事なシーンなので大切に演じましたけど、普通のラブストーリーのキスと同じく、ドキドキよりもアクションシーンに近いです。そのシーンをどう見せるか、ということが主なので。

芳根:「見どころの1つ」ということを、わたしたちも忘れていました(笑)。

Q:それだけ、2人で1つの役になるお芝居が難しかったということですね。

土屋:感情をぶつけあうシーンが多かったですし、同じテンションで感情を受け渡さないといけなかったので、苦しかったし、難しかったです。

芳根:特に屋上のシーンは、精神的にも物理的にもきつかったです。ひどいことを言われる累に気持ちが重なってしまったうえに、アクションもありましたので。

土屋:この作品は女優として試される作品だなとすごく不安でしたけど、そのシーンでは、きょんちゃんと監督と意見を重ねながらどんどん太くなっていくのを感じ、映画として大丈夫だと安心しました。

芳根:ありがとうございます。わたしも太鳳ちゃんと一緒だったから、とても安心できました。

土屋:きょんちゃんは話し合って受け入れてくださる方だったので、わたしも本当に助けられました。

共演に震えるほどの感動

Q:お二人はこれが初共演でしたが、お互いにどんな印象をお持ちになりましたか?

土屋:連続テレビ小説「花子とアン」でご一緒したときはしっかりお芝居することはなかったので、大人しい方なのかなという印象を受けました。でも実際はエネルギッシュで、花火が打ちあがるみたいなパワーがありました。

芳根:わたしはいま太鳳ちゃんの隣にいること自体が嘘のようです。朝ドラのオーディションに行ったときに、ちょうど撮影中だった太鳳ちゃんがわたしたちの控室に激励に来てくださったことがあって、一方的にすごくうれしい思い出だったんです。

土屋:あの大勢の中にきょんちゃんがいたんだね!

芳根:そう! だからがっつりご一緒させてもらって、たくさんお話できたことだけでもすごいこと。エンドクレジットで並んで名前が出たときは震えました。

Q:そんな素敵な関係のお二人ですから、お互いにあこがれるところや、その力は自分もほしいなと思うような部分があるのでは?

土屋:きょんちゃんは、本当にみんなに愛される人です。笑い声を聞いただけでみんなが幸せになる。累みたいな意味で「ほしい」というのではなく、「ずっとこのままでいてほしい」と思います。

芳根:撮影中は役の気持ちに引っ張られてつらい思いもしましたけど、太鳳ちゃんだから気持ちが楽でした。その存在にあこがれます。

コンプレックスに寄り添えたら

Q:ニナと累は自分のコンプレックスを解消するために顔を交換しますが、お二人はご自分のコンプレックスにどう向き合いますか?

土屋:コンプレックスはなかなか解消できないし、なくすことより戦うことが必要だと思っています。わたしはいつもどうやったらキレイになれるか、演技がうまくなるかと思っていますが、そのために努力をすることが大事だと思います。なりたいものになれているかはわからないですけど、近づいていると思いたいです。

芳根:わたしも、たぶんコンプレックスは一生そのままだと思います。でも、自分の嫌なところが人から見たらよく映る場合もありますよね。以前演じさせていただいたクラゲオタクの女の子は自分に自信を持てずにいましたけど、わたしから見たら、それだけ夢中になれるものがあるなんて素晴らしいことです。自分の個性を大切にして、そこに向けて努力を重ねると、世界が明るくなるなと思います。

土屋:コンプレックスってきちんと言葉にまとめられないのかもしれませんね。そういうときに、この作品が寄り添えるといいなと思いました。

Q:この作品を経て、得たことはありますか?

土屋:ニナも累も劇中劇のサロメも孤独で、自分の闇を誰かと共感できなかった。闇も共感すれば愛に変わるんです。自分の闇にしっかり向き合って、少しずつでも誰かに伝えていくのが大事だと思いました。

芳根:この作品では見たことのない自分の表情や声を知って、この先に踏み出す自信につながったと思っています。すごく大切な、一生忘れられない作品です。

土屋:そんな大事な作品にご一緒できてすごくうれしいです!

取材・文:早川あゆみ 写真:高野広美