9月22日公開の『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』は、カンニングを題材としたタイ映画です。タイのアカデミー賞で史上最多の12部門を受賞。世界16か国で大ヒットし、米映画批評サイト「Rotten Tomatoes」で92%FLESHを獲得した一級品です。

その中身は青春映画であり、社会派であり、同時にクライムサスペンスでもあるという盛り沢山なものでした。

少女が始めた危険なビジネス

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』/ (c) GDH 559 CO., LTD. All rights reserved.

これまでのカンニングを題材にした作品では、“いかにして答えを盗み見るか”や、“試験会場に答えを持ち込むか”が描かれていましたが、この映画が斬新なのは発想を逆転したことです。

本作の主人公は、子どものころから天才的な頭脳をもつ女子高生のリン。特待奨学生として進学校に入学した彼女は、あまり成績のよくない金持ちの子女を相手に、テスト中に答えを教えるビジネスを始めます。つまり“いかにして正解を周りに教えるか”が描かれているのです。試験は4択のマークシート方式なので、リンはピアノの指使いを利用したブロックサインを考案します。

世界を股に掛けた大胆不敵なカンニング作戦

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』/ (c) GDH 559 CO., LTD. All rights reserved.

次第にリンの行為はエスカレートしていきます。彼女が狙いを定めたのは、アメリカへの留学のために必要な、全世界で行なわれる大学統一入試「STIC」。ここで、リンは時差を利用したカンニング方法を思いつき、世界で一番早く「STIC」が行なわれるオーストラリアへ乗り込むのでした。

「STIC」を舞台にしたカンニング大作戦は、スパイ映画顔負けのサスペンス。果たして彼女の試みは成功するのか? スリリングな展開から目が離せません。

アジアの学歴社会に対する風刺も

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』/ (c) GDH 559 CO., LTD. All rights reserved.

受験シーズンになると、韓国の学歴偏重への過熱ぶりがよく報じられますが、実はこれはアジア全体の問題。タイでも社会問題となっているのです。この映画は実際に中国で起きた集団不正入試事件がモチーフとなっており、こうした“受験戦争”に対する風刺が込められています。

リンの顧客になるのは女優志願の今どき女子高生や富豪の息子など、“金で成績を買おう”という連中ばかり。監督のナタウット・プーンピリヤは、そんな社会状況や貧富の差によるスクール・カーストにも、問題提起をしたかったに違いありません。

リンを演じたのは、モデル出身でこれが映画初出演のチュティモン・ジョンジャルーンスックジン。9頭身のルックスと不敵な表情が印象的で、アジアで最も注目を集める新進女優です。“悪いことをした奴らが大笑い”という展開にはならず、ちゃんと因果応報の結末を迎えるのは、宗教心篤いタイならでは。リンの成長を描いた、ほろ苦い青春映画としても楽しめます。

(文/紀平照幸@H14)