あばら骨が浮き出た痩身の体に、枝のようにすらりと伸びた異常に細長い手足……。女性の上に折り重なったキャラクターは、一見すると「CGなのでは?」と思ってしまう強烈なインパクトを放っています。

9月15日(土)から公開されるサバイバル・ホラー『HOSTILE ホスティル』に登場するこのキャラクターは、CGではなく本物の人間。唯一無二の体格を活かし、“怪優”として現在ホラーやファンタジーのジャンルで欠かせない存在になっているハビエル・ボテットです。

(c)French Post Apocalyptic Film

デル・トロ、ジェームズ・ワンらビッグネームのお気に入り!

ボテットは、1977年生まれのスペイン人。2メートル4センチの長身に45キロの体重という超痩身なプロポーションですが、これはマルファン症候群という先天性の難病によるものです。彼はそのハンディキャップを役者としての個性にし、2005年に『デビルズ・レジェンド』(日本未公開)でスクリーンデビュー。日本でもヒットしたスペイン産ホラー『REC/レック』シリーズをはじめ、幽霊やクリーチャーを多数演じ、これまで80本にも及ぶ作品に関わってきました。

いまやホラーで引っ張りだこのボテットですが、一躍名をあげたのが、凶暴な女性の霊を演じた『MAMA』(2013年)です。床を這いつくばったり、体を予想外の方向にねじらせたりと、特殊メイクで誇張しているとはいえ、あまりにも衝撃的な彼の演技は「CGIにしか見えない」と騒がれるほどでした。

(c)French Post Apocalyptic Film

『死霊館 エンフィールド事件』(2016年)でボテットを“Crooked Man”役で起用したジェームズ・ワン監督は「彼の体が作り出す動きは最高だね。生きたストップモーション・パペットそのものだ」と絶賛。現在、“Crooked Man”に焦点をあてたスピンオフ映画を製作するほど、ワン監督はその才能に入れ込んでいるのです。

『MAMA』で製作総指揮を務めたギレルモ・デル・トロは、監督作『クリムゾン・ピーク』(2015年)でも、ボテットを真っ赤な見た目の幽霊としてキャスティング。また、『MAMA』で監督を務めたアンディ・ムスキエティの出世作『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)にも起用されたほか、ホラー以外のジャンルでもアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『レヴェナント:蘇えりし者』(2015年)やリドリー・スコット監督の『エイリアン:コヴェナント』(2017年)に出演するなど、映画界の重要人物たちに重宝されてきたのです。

ボテットの個性でしか生み出せない説得力抜群の演技

ホラー映画で重要なのは、当たり前ですが“恐怖”です。幽霊でもおばけでも怪物でも、その対象が存在し得ると思えるかどうかで、恐怖は半減したり倍増したりします。その点で言うと、ボテットはそこに“いる”だけで、リアリティのある恐怖を表現することができます。彼の細長い手足を使った奇妙な動きは、理屈ではない直感的な恐ろしさを現実のものにしてしまうのです。

(c)French Post Apocalyptic Film

そんな彼の魅力が存分に発揮された重要キャラクターを演じている作品が『HOSTILE ホスティル』です。爆発的な伝染病により、わずかな人類だけが生き残った世界。車の横転事故で荒野のど真ん中に取り残されてしまった主人公・ジュリエットに、ボテット扮する未知のクリーチャーが近づこうとします。

映画の前半でははっきりとその姿を現さないものの、彼の細長い四肢を活かした歩き方がチラっと映るだけで、得体の知れない“何か”が近くにいるという恐怖を感じさせます。さらに後半でその姿が明らかになり、四足歩行でジュリエットに迫ってくる様は、未知のクリーチャーであるにも関わらず当然ながらリアルで、不気味な感情を観るものに呼び起こさせるのです。

素顔のハビエル・ボテット。実はかなりのイケメン!

(c)French Post Apocalyptic Film

強烈な個性で怪優として名を上げてきたボテットですが、『HOSTILE ホスティル』では恐ろしいだけなく、その姿にどこか愛おしさを覚えてしまうような演技も披露しています。外見的な特徴だけではない、新たな要素を加えた彼の演技をスクリーンで観て、ぜひド肝を抜かれてください!

(文/ケヴィン太郎・サンクレイオ翼)