ウォルト・ディズニーによって映画化され、世界中の人気者となった“くまのプーさん”。初の実写作品となる『プーと大人になった僕』(公開中)では、まん丸お腹とモフモフボディが愛らしい、イメージそのままの姿でスクリーンに登場します。

すっかり大人になった大親友クリストファー・ロビンとの再会が描かれる物語は、ファンタジックな展開……と思いきや、むしろ現代社会に生きる大人たちに刺さりまくるメッセージが満載。プーさんが親友に向けて語りかける含蓄に富んだ言葉とともに、本作の奥深い世界観に迫ります。

心温まる “プーさん”ワールドがリアルに展開

“くまのプーさん”にまつわる物語は、イギリスの作家、A.A.ミルンによって1926年に発表された短編集がはじまり。“100エーカーの森”を舞台にした、主人公のクリストファー・ロビン少年とプーさんや森の仲間たちとの心温まる日々から数十年――。本作では、愛する妻と娘のいる大人になったクリストファーと、森を飛び出したプーさんと仲間たちの再会が描かれます。

この世界観を実写で表現するにあたって、様々な創意工夫が施されました。例えば劇中に登場する“100エーカーの森”のシーン。

この森は、もともとA.A.ミルンが執筆するための別荘があった“Ashdown Forest”がモデルとされていますが、撮影自体もこの土地で敢行。ロンドンから約30マイル(48キロメートル)離れたハートフィールド村にあるこの森は、プーさんファンにとっては“聖地”ともいえる場所。それゆえ、スタジオのグリーンバックには頼らず、物語にぴったりの森がそのままの風景で登場するのです。

さらに、プーさんをはじめ、お調子者のトラ“ティガー”や、心優しいコブタの“ピグレット”、お人好しなロバの“イーヨー”ら、森の仲間たちの撮影には実物大のぬいぐるみが用いられました。写真からも、モフモフとした毛並みやぽってりとしたプーさんのボディが確認できますが、特にこだわったのが“抱き心地がいい”まん丸のお腹だとか!

アカデミー賞を受賞した“アニメーテッド・エキストラズ”のクリーチャー・ビジュアル・エフェクト・チームが実際に創作したというぬいぐるみは、各シーンのキャラクターの動きや、立ち位置を確認するために使用。“共演”した役者たちも、このぬいぐるみと実際に触れ合いながら撮影できたため、より自然体の演技を見せているのです。

(c)2018 Disney Enterprises, Inc.

実際に娘をもつ父親、ユアン・マクレガーも共感

実写版の再現度につい目が行きがちですが、本作のストーリーで軸になるのは、ロンドンで仕事中心の忙しい日々を送る“大人になった”クリストファーのこと。

責任の重い仕事を任されたクリストファーは、家族と過ごす時間が取れずに、妻や娘がオカンムリ……。そんな会社と家族との板挟みに悩む彼の前に、かつての親友プーが現れるのです。ものの見方も、時間の使い方も、少年時代とはすっかり変わってしまったクリストファーに対し、昔となんにも変わらないプーさん。そんな対照的な2人のやり取りが描かれる中で、プーさんが語りかけてくる言葉が心に刺さります。

例えば、再会したばかりの2人が、クリストファーの家で一緒に過ごした翌朝。大慌てで仕事に行く準備をしている彼に対して、プーさんは「僕は“何もしない”を毎日やってるよ」と一言。

また、100エーカーの森へプーさんを連れて帰ろうとするシーン。その道すがら、クリストファーに風船を買ってもらい、「風船があれば幸せ」とご満悦な様子のプーさん。しかしロンドンからハートフィールド駅へ向かう電車の中でも、クリストファーは仕事に追われてしまう羽目に……。そんな彼を見たプーさんは「それ(仕事)は風船よりも大切?」と語りかけるのです。

こうした何気ないプーさんの言動に動揺させられるクリストファーにこそ、むしろ共感してしまう“大人”もいるでしょう。本作でクリストファー・ロビンを演じた人気俳優ユアン・マクレガーもそのひとりです。

彼は「クリストファー・ロビンを僕の年代の男として描き、そんな彼が生きていく中で大変な時期を迎えた時に、プーが戻ってくることがとても気に入ったんだ」(公式プレス資料より)と本作の脚本を絶賛。さらに自身も娘を持つ父親として、演じた役柄にシンパシーを感じているようで「クリストファー・ロビンは、親密な関係を築けていない娘を持つ父親で、彼自身そのことを認識していて、もっと娘と親しくなりたいと思っている。そしてまた、娘の方も父親ともっと親しくなりたいと思っていることが伝わってくる。実際に娘を持つ父親として、父と娘が絆を深めるという物語にもの凄く魅力を感じたんだ」とも語っています。

(c)2018 Disney Enterprises, Inc.

くりくりとしたつぶらな瞳で「仕事よりも大切なものはないの?」と問いかけてくるプーさん。プーさんの生き方は、大好きな人たちと穏やかな時間を一緒に過ごすというとてもシンプルなもの。常に何かに追われている現代人にとって、ノスタルジーとも言える、そんな素朴で当たり前の時間の流れ方は、クリストファー同様、見ている私たちの心にも響くはずです。

(文/スズキヒロシ・サンクレイオ翼)