⼈気プロレスラー棚橋弘至さんの初主演映画『パパはわるものチャンピオン』の監督に抜擢され注目が集まる若⼿映画監督の藤村享平さん。⼤学受験勉強の最中に突然映画界に進路を変更。働きながら脚本を書き続ける苦悩の日々を体験しながらもまっすぐに育ててきたピュアな感性がいま輝きを増そうとしています。棚橋さんらとの撮影のエピソードも含め、映画への情熱を語ってもらいました。

絵本との運命的な出会い

©2011Masahiro Itabashi & Hisanori Yoshida. Published by IWASAKI Publishing Co.,Ltd. Printed in Japan.

Q:映画『パパはわるものチャンピオン』の企画には、どのようなきっかけで携わられたのですか?

プロレスラーの方を使った企画があることを聞いて、プロットを書いてみることになりました。プロレス雑誌を出版されている方に取材に伺って「最近プロレスって、どうなんですか」というところから教えてもらい、その過程でプロレスラーの棚橋弘至選⼿が⼩学校の読み聞かせで絵本を読んだという話を聞きまして、それがこの絵本(「パパのしごとはわるものです」「パパはわるものチャンピオン」岩崎書店刊)だったんです。⽗親の仕事を⼦どもが調べたら、ヒールレスラーだったと分かるという設定が⾯⽩いんですけど、何よりこの作品が持っているテーマ性がすごく普遍的だと感じたんです。働くとはどういうことかが書かれているし、⼦どもがお⽗さんの仕事を知ってちょっと⼤⼈に成長するということが短いストーリーの中に詰まっているから魅⼒を感じました。プロレスを知らない僕にも脚本が書けそうだと感じ、映画用のプロットを書いて、その企画書が通ったということなんです。

Q:脚本家として惹きつけられたんですね。

そうですね。プロレスだけでなく家族の要素もあるから、その2つを合わせれば⾏けるかなと。だからこの絵本に出会えたのは本当に⼤きかったです。

Q:運命的ですね。

ええ、僕もそう思います。

Q:監督に決まった時はどうでした?

監督として長編映画が撮れるという喜びはありましたが、プロットは書けても、それを物語の中の具体的なシーンとしてつなげていくというのは大変な作業なんです。それに僕は結構変な作品ばかりを作って来た監督なので、こんな普遍的で王道の作品は初めてでした。だから嬉しい反⾯、プレッシャーでしたね。

主人公はこのままの棚橋さんでいい

©2018「パパはわるものチャンピオン」製作委員会

Q:棚橋さんとの初対面はどうでしたか?

怖い方なんじゃないかと緊張していましたけど、めちゃくちゃいい⼈でした。どんな方なのかをすごく知りたかったので、最初はいろいろとお話を聞きましたけど、とても魅力を感じましたね。主人公のキャラクターはこのままの棚橋さんでいいと感じました。だからかなりあて書きをしました。棚橋さんにとってもすごいプレッシャーだったと思います。映画で初主演っていうのは相当なことだったと思います。

Q:会ったことで脚本は変わりましたか?

変えたというよりは、具体的にいろいろ浮かんだということです。映画の中で子どもにプロテインをあげるシーンは、棚橋さんが話したエピソード。やっぱりプロットから脚本に落とし込む時ってそういうディテールがすごく重要なので、⼤きかったかもしれません。

Q:役者ではない棚橋さんや子役の寺田心君への演出についてはいかがでしたか?

©2018「パパはわるものチャンピオン」製作委員会

棚橋さんと(息子役の)寺田心君で2週間リハーサルに参加してもらい演技をしてもらいました。棚橋さんには役者さんが滑舌の練習をするときに使う「外郎売(ういろううり)」(歌舞伎の演目の中の外郎売の長ぜりふで、日本では俳優やアナウンサーの発声・滑舌の練習に使われることが多い)という⽂章を渡して、声に出して読んでもらっていましたが、リハの時は⼼君も⼀緒にやってもらいました。それと、普段、リングでしているマイクパフォーマンスとはちょっと違うので、あまりやりすぎるとちょっと嘘くさくなっちゃう。だから棚橋さんには(過剰に)演技をさせない方向を目指しました。心君と棚橋さんからはそういうものをなるべく取り除きたいなと思ったんです。2⼈とも努力家なので、ぐんぐん成長しましたね。

(インタビュー前編はここまで)

取材・文 阪 清和(エンタメ批評家)

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藤村享平(映画監督/脚本家)
1983年⽯川県⽣まれ。⽇本映画学校
(現・⽇本映画⼤学)を2005年に卒業後、⽂化 庁の若⼿映画作家育成プロジェクト「ndj c」の対象者に選定され、監督として『逆転のシンデレラ』を撮った。『バルーンリレー』などの映画  や、「たべるダケ」「ああ、ラブホテル」「恋愛時代」「ラブリラン」などのドラマで存在感を⾼め、ミュージックビデオも⼿掛ける。

『パパはわるものチャンピオン』
原案・原作:「パパのしごとはわるものです」「パパはわるものチャンピオン」
作・板橋雅弘 絵・吉⽥尚令(岩崎書店刊)
監督・脚本:藤村享平
出演:棚橋弘⾄ ⽊村佳乃 寺⽥⼼ 仲⾥依紗
オカダ・カズチカ ⽥⼝隆祐 / ⼤泉洋(特別出演) ⼤⾕亮平 寺脇康⽂
配給:ショウゲート
©2018「パパはわるものチャンピオン」製作委員会
2018 年9⽉21⽇(⾦)全国ロードショー!!