今年だけで4本の映画が公開され、そのうちの3本は主演である。自身の身体性の高さを活かしたアクションから一転、今回は肉体の動きを封じ、しかし猫とのロードムービーという形で福士は移動する。移動する時間、その過程で何かを失いながら何かを得る青年、それは悟の幼少のころから現在までを、時間を追って辿りかえす旅でもあった。しかも旅の相棒は一匹の猫! というなかなかの難役。そんな福士に聞く自分にとっての大切な映画、そして今回の『旅猫リポート』のこと。

当時は自分が俳優になるなんて予想もしていなかった

(C)2018「旅猫リポート」製作委員会 (C)有川浩/講談社

以前から、アクション、アフレコ、CGの撮影といった技術的なことから、イベント、ドラマと映画を同時に撮影する期間の忙しさなど、俳優として必要な基礎を一年間で経験できた「仮面ライダーフォーゼ」が自分の特別な作品と公言してきた福士蒼汰。

では、自分の出演作でなければ、どうだろう。彼の俳優人生を支える、指針のような作品は? 問いかけてみると、「いろいろ、ありますが」と前置きして、なかでもとっておきの一本を明かした。

「細田守さんの『時をかける少女』です。アニメ映画ですが、人の温かさを感じることができて、とても心に残りました。初めて観た時はちょうど自分も高校生だったので、高校の話ということもあり、より身近に感じて、印象的だったのだと思います」

当時はまさか自分が俳優になるなんて予想もしていなかった。ましてやそのほんの数年後に「時かけ」男の子版ともいわれている『江ノ島プリズム』で主演を果たすのだから、なんとも不思議なめぐりあわせである。

「人に感動を与えたい、そういう作品に出たいと考えるようになったのは、それこそやはり『仮面ライダー~』の時からです。仕事を始めて子供たちが喜んでくれる姿を見て、自分が人に影響を与えるパワーを感じて、“これってすごいことかもしれない”と嬉しく思うようになったんです」

新しい発見がとても多かった

(C)2018「旅猫リポート」製作委員会 (C)有川浩/講談社

自分の強みはその頃から培った殺陣やアクション、それを厭わない経験と姿勢だと自ら分析する。だが、新作『旅猫リポート』ではその強みのアクションではなく、心温まるヒューマンドラマに挑んだ。

「アクションはもちろんですが、実は人の内面を描いていたり、生死について考えさせられるヒューマンドラマも大好きです。特に今回のような作品は演じていて、やりがいを感じます。しかも相手が猫ですから。猫だからこそ抱ける思わぬ自分の感情に気づいたりすることもあり、新しい発見がとても多かったと思っています。もちろん、猫中心の現場は戸惑うこともあり、難しかったですが、本音をいえば、自分が真ん中に立つより、支える側の方が性に合ってるんです(笑)」

決して、自分から前に出ていくタイプではない。むしろ、一歩、引いて、ものごとを観察しているようなタイプ。前作『BLEACH』の黒崎一護のような真っすぐで明るく元気なキャラクターは作るのが難しいと話していたが、それに比べると、周囲を温かく見守る陽だまりのような『旅猫リポート』の悟はかなり本人に近いキャラクターといえそうだ。

自分と共通している部分は多い

(C)2018「旅猫リポート」製作委員会 (C)有川浩/講談社

「背景は別にして、悟は自分自身と似ているところがいろいろありました。三木(康一郎)監督も撮影前、初対面ですぐ『そのままの福士君がいいよね』って言ってくださったので、自分の動物に対する目線や愛情をそのまま映像にしていただければいいのかなという気持ちでやっていました。彼の行動や感情に関しても、自分と共通している部分は多いと思います。

例えば、自分も仲がいい人はかなり限られていますけれど、一度仲よくなった人には、とてもよくうち解けられます。ただ、似ているからといって福士蒼汰のままでいるわけにはいかない。実際、悟の境遇は悟にしかわからない部分が絶対にあるものでしたから。生い立ちや育ってきた環境から、彼はここまで優しくなれたのだと思います。物語のなかにもいろんなヒントがあるような気がしていて、悟という名前も“悟り”という言葉からきているんじゃないかなと思ったんです。

名は体を表すじゃないけど、悟はいろんなことを悟っている人、そういう気がします。(原作者の)有川(浩)さんがどのような意図で、この名前をつけられたのか、ちゃんとお聞きしたわけではないのですが、自分としてはそんなことも意識しながら、役作りをしていきました」

インタビューの続きは『キネマ旬報NEXT Vol.21』に掲載。今号は俳優・岩田剛典30ページ大特集と題して『パーフェクトワールド 君といる奇跡』で表紙・巻頭特集を行った。岩田剛典のほか、岩田剛典×杉咲花、山下健二郎×佐藤寛太×佐藤大樹、山田裕貴、橋本愛×成田凌×山内マリコら新作公開を控える俳優陣のインタビューや対談を掲載している。(敬称略)

取材・文=髙山亜紀/制作:キネマ旬報社