9月に閉幕した第75回ベネチア国際映画祭で披露され、賛否両論を巻き起こした傑作ホラーのリメイク『サスペリア(原題)』(2019年1月公開)をはじめ、企画段階でありますがスティーブン・スピルバーグ監督による『ウエスト・サイド物語』や、ニール・ブロムカンプ監督による『ロボコップ』など、ハリウッドで名作映画のリメイクが相次いでいます。

リメイク作品は、映画ファンに納得してもらう上でオリジナル版へのリスペクトが欠かせません。ファン目線でいうならば、オリジナル版との着眼点や演出、構成などの違いを比較してリメイクを楽しむのもまた一興です。

そこで注目したいのが、“ホラー映画の新帝王”と称されている鬼才イーライ・ロス。彼は、企画をセレクトするセンスが独創的で、自身が影響を受けた大好きなカルト映画をリメイクしまくっているのです。

我が道を行く!ホラー界の新帝王イーライ・ロス

イーライ・ロス監督は、自主製作の低予算映画『キャビン・フィーバー』(2002年)で監督デビュー。森の小屋で騒いでいた若者たちが、謎のウィルスへの恐怖によって狂っていく姿を残忍に描いたこの映画は、出品されたトロント映画祭で配給権を巡って争奪戦が起こるほどの注目を浴びます。

次いで、旅行先で監禁される若者たちの悲劇を描いた『ホステル』(2005年)が世界中で大ヒットし、一躍ブレイク。観る人を選ぶような強烈な映画を作り続けながらも、映画愛に溢れた彼のスタイルは、ホラーファンから絶大な支持を集めていきます。

また、監督業と並行して俳優としても活躍し、彼と似たスタイルを持つ兄貴分クエンティン・タランティーノ監督の『デス・プルーフ』(2007年)や『イングロリアス・バスターズ』(2009年)などに出演。さらに数々のホラー映画のプロデュースにも携わるなど、精力的に活動しています。

イーライ・ロス監督(c)2018 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

とはいえ、なぜ“ホラー映画の新帝王”とまで称されるようになったのでしょうか? 彼の人柄を物語る有名なエピソードがあります。

『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)で知られるジョン・ワッツ監督が学生時代に冗談で作ったホラー映画のフェイク予告があるのですが、この予告に“製作”としてロス監督の名前を無断で使用。しかし、これを知ったロス監督は怒るどころか、ワッツ監督にコンタクトを取り、『クラウン』(2014年)として長編映画化してしまうのです。

自分が「面白い!」と思ったことに対して素直に行動できる、ナイスな心意気の持ち主――それが、ホラーファンに支持される理由なのかもしれません。

リメイクやモチーフでよりストレートに愛情を表現!?

そんなロス監督の個性は、彼の近作でより色濃く現れています。これまでの作品では、自分が影響を受けてきた映画へのオマージュを捧げてきましたが、近年はリメイクやモチーフとして、よりストレートな形で表現。アマゾンの熱帯林を舞台に、学生活動家たちを襲う恐怖を描いた『グリーン・インフェルノ』(2013年)もその一例です。

同作は、森林伐採の不正を暴こうとアマゾンに向かった学生活動家たちが、エンジントラブルによって飛行機がジャングルに墜落し、そこで暮らす食人習慣のある部族に捕らえられてしまう物語。石斧で人間を解体したり、生きた人間を踊り食いしたりと、ゴアすぎる食人描写とともに、未知なる土地での恐怖を描き出しています。

都会で暮らしていた若者が、未開の地に足を運び、自分たちの常識では考えられない蛮行とも思えることを目の当たりにするという同作の構成は、モンド映画の傑作『食人族』(1980年)がモチーフ。『グリーン・インフェルノ』では、実際に現地で生活しているカラナヤク族という少数部族がキャスティングされているのですが、彼らに作品のイメージを伝えるため、一緒に『食人族』を鑑賞したと、ロス監督はインタビューで明かしています(『グリーン・インフェルノ』公式サイトより)。

『グリーン・インフェルノ』に続く監督作品が、美女2人組によって引き起こされる、家族想いの父親を襲う不条理劇をキアヌ・リーブス主演で描いた『ノック・ノック』(2015年)。知る人ぞ知るカルト映画『メイク・アップ』(1977年)のリメイクです。

家族が留守にしている大雨の日に、道に迷ってしまった美女2人を家に上げ、思いがけず肉体関係を持ってしまった主人公・エヴァン(キアヌ・リーブス)。翌朝から美女たちの言動が狂気じみていくお話なのですが、終始理不尽な展開など、オリジナルにおおむね忠実に描きつつも、ラストの部分を大きく変更。SNSの恐ろしさを意図的に入れ込んだ現代的な演出になっています。また同作は、これまでロス監督が得意としていた流血を伴う残語描写を抑えていて、スリラーという新たなジャンルに挑戦した作品となりました。

(c)2018 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

そしてロス監督最新作となる『デス・ウィッシュ』(10月19日公開)は、1974年に公開され、全5本がシリーズ化された伝説的な作品『狼よさらば』のリメイクです。ブルース・ウィリスを主演に迎えた本作でもホラーではなく、これまで手掛けたことのないジャンルである“アクション”に挑戦しました。

主人公は、警察の手に負えない犯罪都市となったシカゴで救急患者を診ている外科医ポール。彼は愛する家族を殺され、悪に対し自ら手をくだす処刑人へと変貌。復讐心を燃えたぎらせる制裁シーンには、一切の容赦がなく、良質なヴィジランテムービーに仕上がっています。

『ノック・ノック』の終盤と同様、SNSを利用した斬新な演出が本作にも盛り込まれていますが、そうした現代的な一面をプラスしている点は近年のロス監督の傾向かもしれません。

(c)2018 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

クセの強いカルト映画を、愛情を持ってリメイクしながら、新たなジャンルにも挑戦し、監督として進化し続けているイーライ・ロス。独自のセンスを活かし、今後どのような作品を作り上げていくのか、ずっと目が離せない監督です!

(文/ケヴィン太郎・サンクレイオ翼)