つりあがった邪悪そうな目。耳元までさけた、牙ビッシリの大きな口。そこから伸びているグロテスクな舌……映画館や街に貼ってある『ヴェノム』(11月2日公開)のポスターです。

このビジュアルを見てホラー映画だと思った方も少なくないでしょう。しかしこの作品はアメコミ・ヒーロー映画であり、スパイダーマン映画のバリエーションでもあるのです。

(c)&TM 2018 MARVEL

ヴィランだけど、ヒーロー面が描かれる?

(c)&TM 2018 MARVEL

元々ヴェノムはスパイダーマンの悪役(ヴィラン)としてコミックでデビューしました。スパイダーマンの能力等をコピーしたドロドロの寄生宇宙生物・シンビオートと、スパイダーマンの正体であるピーターを憎む記者・エディが融合し生まれました。スパイダーマンを黒いモンスターにしたようなキャラです。

ヴィランでしたが人気が出て、“彼ら”を主役にしたコミックシリーズも作られるようになります。“彼ら”と書いたのは、ヴェノムはシンビオートとエディが合体しているので「俺たちヴェノムだ」と、自ら複合人称を使うため(笑)。

2007年に『スパイダーマン3』の敵役の一人して映像化されていますが、今回はその時の設定等を一新し(スパイダーマンとの関連も描かず)、ヴェノムが主役の新たな映画として製作されました。悪者が主役のヒーロー映画? と思われるかもしれませんが、原作でヴェノムは彼らなりに人助けとか、もっと悪い奴と戦ったりもしています。ですので、映画でも、ヴェノムのヒーロー面が描かれるハズ。

時代は悪者ヒーローを求めてる!?

(c)&TM 2018 MARVEL

こういう風に“毒をもって毒を制す”型のヒーローをダーク・ヒーローと言ったりします。日本で言うなら元犯罪者が巨悪に挑む「ワイルド7」、悪魔を倒すための悪魔「デビルマン」。「寄生獣」のミギーもこの部類に入るかな。

ヒーローというのは基本的には“清く正しい”存在で人々の理想的な姿を目指します。しかしその一方で、ちょっと悪い者にも人は惹かれてしまう。いい例が、バットマン。バットマンを「ダーク・ヒーロー」という人も少なくない。“ダークナイト”という異名があるぐらいですから。バットマンの人気が出た理由は、先にデビューして大人気だったスーパーマンとの差別化をうまくはかれたからのようです。

そもそもスーパーマン=宇宙人、バットマン=人間という大きな違いがあるのですが、バットマンはもともと「バット」という殺人鬼が出てくるお芝居・映画からインスパイアされ生まれたらしく、作者は“悪のイメージ”を持ったヒーローを狙っていた。だからこそ明るくて健全なイメージのスーパーマンとは異なる魅力を放つことに成功したと。

ヴェノムもまたしかりで、赤や青の派手なコスチュームが多く乱舞するヒーロー世界に、いかにも邪悪なルックスのヴェノムが乱入してくる痛快さ、ワイルドさが新鮮でウケたのかもしれません。

映画でいえば、正統派ヒーロー集団「アベンジャーズ」に対し、訳あり曲者集団「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」、ネーミングから正義ど真ん中の「ジャスティス・リーグ」に対し、悪者軍団「スーサイド・スクワッド」、シリアスな路線の「X-MEN」に対し、はちゃめちゃバイオレンスの「デッドプール」が人気急上昇です。

だからこそヴェノムが映画でも支持される可能性は高いし、さらに本作はこれらの映画とは今のところ連動しない、オリジナルな世界観でのお話になりそうなので、なおさら他のヒーローたちとの関係を一切気にせず(笑)、暴れまわってくれそうです。

トム・ハーディの演技に期待大!

(c)&TM 2018 MARVEL

ヴェノムはグロい造形ですが、不思議とスイカお化けとかハロウィンのかぼちゃに通じるかわいらしさもあります。(実際彼をモチーフにした雑貨には愛らしい物も多い)

一方、本作ではヴェノム化するエディ・ブロックをトム・ハーディが演じます。彼も『ダークナイト ライジング』(2012年)のベイン、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)のマックスと、バイオレンスな役が多い名優であり、この男が変身するなら、マイルドなヒーローになるわけがないと納得してしまいますね。

トム・ハーディはエデイを演じながら、彼にとりつくシンビオートの声も担当しており『レジェンド 狂気の美学』(2015年)の時の双子役(一人二役)の経験が役にたったとか(笑)。

そう、今までのアメコミ・ヒーロー映画とのしがらみも少なく、本格的なダーク・ヒーロー映画の誕生であり、キモカワのキャラとイケメン俳優の組み合わせも楽しみ。新鮮な気持ちで『ヴェノム』を楽しめそう、と期待してしまうのです。

(文・杉山すぴ豊)