女優・黒木華の勢いが止まらない!

一体何のことかというと、2018年初秋から冬にかけて、彼女が出演した映画やドラマが続々と披露されているのだ。

思えば今年上半期あたりまでにそれらの作品群へ出演し続けていて、たまたま下半期に公開&放送が集中したのだろうか。しかし、それにしてもこの快進撃ぶりは、現在の彼女の実力と勢いの証左たりえている気もしてならない。

では、さっそく現在、そしてこれからの黒木華の出演作品群を紹介していこう。

2018年下半期の黒木華出演作品ラッシュ!

まず9月29日に公開された木村大作監督の時代劇映画『散り椿』では、岡田准一扮する主人公の亡き妻の妹で、ひそかに彼を慕っている里美をしっとりとした情緒で演じている。

10月13日公開の大森立嗣監督作品『日日是好日』(にちにちこれこうじつ)では、ひょんなことからお茶を習い始めることになった主人公・典子の人生がたおやかに描かれていく。

日日是好日

(C)2018「日日是好日」製作委員会

一転して10月19日公開の大友啓史監督作品『億男』では、兄の借金返済のことしか頭にない主人公(佐藤健)に愛想をつかし、娘を連れて家を出ていった妻・万左子役。そして11月1日公開、三島有紀子監督作品『ビブリア古書堂の事件手帖』では、古書にまつわる数々の謎を紐解いていく古本屋の店主・葉子を、観る側のオタク心をくすぐらせながら好演。

さらには12月7日公開、中島哲也監督作品『来る』は第22回日本ホラー大賞を受賞した『ぼぎわんが、来る』を原作とするホラー映画で、『散り椿』の岡田准一と全然異なるテイストでの再共演を果たしている。

これらに加え、テレビでは今年のNHK大河ドラマ『西郷どん』では西郷隆盛(鈴木亮平)の妻・いとを、さりげなくも圧倒的な存在感で好演している。明治維新後のいさかいで西郷が新政府を離れて薩摩に帰郷し、西南の役を迎える12月の最終話まで彼女の出番が増えることも必至だ。

また10月10日から日本テレビ系で毎週水曜夜10時放送開始されたばかりの『獣になれない私たち』では、ヒロイン(新垣結衣)の天敵でストレスの原因となる朱里を演じている。

7月に公開された細田守監督のアニメーション映画『未来のミライ』では、未来からやってきた幼い主人公の妹役で声の出演を果たしていたが、これまた実にお見事であった。

このように、黒木華の2018年下半期はものすごいことになっているのだが、どれひとつ似たような役がないことも特筆的で、彼女の演技の幅の広さ、演者としての懐の深さなどを改めて感じさせられる。淑女から等身大のごく普通の娘、そして悪女まで多彩にこなし、ジャンルも時代劇に現代劇、ミステリ、ホラー、アニメ、主演でも助演でも、シリアスな役でもコミカルな役でもなんでもござれなのだ。

日日是好日 黒木華

(C)2018「日日是好日」製作委員会

輝かしい女優としてのキャリアとそれを裏打ちする優れた才能

ここで黒木華の略歴をざっとふりかえってみると、幼い頃から演劇に魅せられ、演劇の名門・追手門学院高等学校演劇部を経て京都造形芸術大学映画学科俳優コースで林海象監督や東陽一監督といった名匠に師事。大学在学中の2009年に野田秀樹の演劇ワークショップに参加し、翌2010年のNODA MAP公演『ザ・キャラクター』でプロ・デビュー。

その後、数々の舞台で期待の新人として注目を集め、2011年に『東京オアシス』で映画初出演。2012年には『おおかみこどもの雨と雪』で声優デビューも果たし、2013年の映画『シャニダールの花』ではキネマ旬報など7つの映画新人賞を受賞。

そして2014年、山田洋次監督の『小さいおうち』で第64回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞。また本作と2015年の山田監督作品『母と暮せば』で、2年連続日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞という快挙が続く。

2016年には『重版出来!』でテレビ連続ドラマ初主演も果たし、2017年の映画『海辺のリア』では名優・仲代達矢と共演し、一歩も引けを取らない存在感を示した。

個人的に初めて彼女に注目したのは、2012年のBS日本映画専門チャンネルのトーク番組『岩井俊二映画祭presents マイリトル映画祭』での岩井監督のアシスタントだった。一見素朴で声もか細く、そのときは正直地味に思えたものだが、それだけに同年秋に始まったNHK連続テレビ小説『純と愛』でのヒロインの腹黒い同僚役には仰天したものである。

それ以降、彼女の活躍ぶりからは毎回目が離せないものがあるのだが、この秋の出演作ラッシュの中、やはり特に目を引くのは『日日是好日』の主人公・典子役だろう。

日日是好日 黒木華 感想

(C)2018「日日是好日」製作委員会

惜しくも先ごろ亡くなった名優・樹木希林を茶道の先生役に迎え、彼女からお茶だけでなく人生の機微までも教わっていく典子の淡々としつつも奥深い心象風景、その発露の素晴らしさ!

実際、真面目で理屈っぽい典子の人生は決して華やいだものではなく、むしろ地味で、さほど大きな幸福感に包まれたものでもない。しかし、それゆえに「すぐにはわからないこと」も時間をかけて「ようやくわかる」術を、お茶と人との長い交流の中から五感を通して自然に身に着けていくようにもなっていく。

それは同時に人としての成熟を体得していくことにも繋がっていくのだ。

大学時代からおよそ24年におよぶ歳月を何ら違和感なく演じきるあたりも、黒木華ならではの実力の賜物ではある。

ベストセラー小説の映画化『ビブリア古書堂の事件手帖』での古書オタクぶり丸出しの好もしいヒロインにしても何ら違和感なく、まるで彼女を想定して原作も書かれていたのではないかと疑いたくなるほどだ。『来る』のホラー演技にも大いに期待しつつ、そもそも大阪出身の彼女、お笑いも大好きと聞くだけに、それこそ吉本新喜劇的なコメディも見てみたいと思う。

ホント、彼女のような優れた存在の作品群に接するにつけ、日本の映画演劇界にもまだまだ期待が持てるというものである。

(文・増當竜也)