ハイペースで良質作を連打する廣木隆一監督が、山内マリコの同名小説を映画化した『ここは退屈迎えに来て』。夢をあきらめて東京から地元に戻った「私」と地元に残り元カレをあきらめきれない「あたし」など、地方都市でゆらゆら生きる若者を描く青春群像劇。高校時代、みんなの憧れの的だった椎名を演じた成田凌が、自身の高校生時代や今後の俳優業について語った。

とても共感できた椎名役

Q:最初に台本を読んだとき、もっとも深く感情移入したのは誰でしたか?

どの役を演じるのか決まっていない段階だったので、自分が演じたいのは(渡辺)大知くんが演じた新保かな? 椎名かな? と思いながら読みました。椎名はいいなと思える役だけど、ちょっと感情移入できないところがありました。お芝居をするなら新保のほうが面白いかもしれない……新保だな! と。でも配役が決まって、改めて台本を読んでも出来た映画を観ても、やっぱり椎名は僕だよな~と思いました(笑)。

Q:椎名のどのあたりがそう思わせたのでしょう?

僕自身、高校時代はサッカー部でしたが、それ以外では放課後の部活が終わったあとの短い時間、それが高校時代のすべてでした。あの何もない、特別なことは何も起きない、ただ楽しいだけの時間。ずっとこれが続けばいいのに……と思う時間を、椎名と同じように経験していたんです。そして椎名と同じように、何も考えないままに人生を進んできたような気もするので、ものすごく共感できました。

Q:地方に暮らす高校生が「ここには何もない」と感じる感覚についてどう思いますか?

僕から見ると、逆に彼らが自由に見えていいなと思いました。その自由さが心の豊かさと比例している気がして。自然とつながった人間の生きる力みたいなものを感じて、とても魅力的に思えました。

Q:ご自身はどんな高校生でしたか?

クラスのみんなが椎名で、収拾がつきませんでした。もうヤバかったです(笑)。担任の先生が「面白そうなヤツをみんな集めた」と言っていましたが、とんでもなかったです。公立の普通校で、意外とみんなテストではちゃんと点数を取っていたんですが、わ~! となると授業にならないし、ひたすらはちゃめちゃでした。

芝居は無責任でいい!?

Q:椎名を演じた感想は?

椎名という役は彼自身に特別な何かがあるのではなく、周りが椎名という存在を作っているんです。周りのいろいろな人がずっと椎名の話をしていて、その中に椎名が登場してくる。それでいて椎名のバックボーンはほとんど描かれないから、そのまま撮影現場で感じる感情のまま演じようと思いました。僕はただそこにいればいいと。とても面白かったです、どこか他人任せみたいで(笑)。それで出来た映画を観たときに、椎名ってこういう人間なんだ! と認識することが出来ました。

Q:過去のインタビューでもたびたび「無責任に」とおっしゃっていますが、それはどのような意味合いなのでしょう?

実際には無責任のときとそうでないときと、作品によって大きく違うと思います。脇役だから主役だからという違いでもなく、お芝居以外の問題かもしれません。もちろんすべてに責任感を持って取り組んでいます。でも芝居としては無責任でいいときがある、ということです。ただ相手の役者さんが考えてくれたものにリアクションしていく。事前に何も考えていないわけだから、撮影現場に行くまでは不安ですけど。

Q:完成した映画を観た感想は?

若い子を演じたみんながみんな、いいと思いました。それぞれがいろいろな想いを抱え、ラストに向けて物語がどんどん集約されて最後に一つになっていく、その感じがまたよかったです。

役者としての第二段階へ

Q:2017年で役者としての第一段階を終えられた気がする、2018年はもっといろいろなことをやりたいとおっしゃっていました。今のところ、いろいろなことをやれている実感がありますか?

楽しめています。これまでは、いただいた仕事に対して、いい結果を残していきたいと思ってやってきましたが、最近は自分の意志も含め、より責任感を持って日々向き合っています。

Q:公開待機中の映画は、興味深い作品ばかりですね。

面白そうな映画ばっかりに出たいじゃないですか。映画もドラマもどちらもやっていきたいと思っているんですけど、結局はタイミングです。映画とドラマでは作り方が全然違うんです。ドラマだと、ハッキリとしたキャラクターがないと成立しなかったりします。椎名みたいな役柄はこの映画の物語の中では機能するけど、ドラマでこの演技をしていたらドラマとして成立しないかもしれません。

Q:以前「映画の面白さは、まだちょっとわからないかも」とおっしゃっていました。ここのところ立て続けに映画に出演されて、その考えは変わりましたか?

たしかに、もうずっと映画を撮っているという感覚ですけど……わからないですね。いい大人が集まって一つの作品をコツコツと作っている、その感じは好きです。

Q:同世代の俳優の中に、動向が気になる人はいますか?

みんな気になりますよ。世の中にはたくさんの作品があって、面白そうな作品があると気になります。この人が出ていたら観ようと思うのは、染谷(将太)さんとか池松(壮亮)さん。この映画で共演した(門脇)麦ちゃんもそうです。彼女はお芝居が素晴らしいのはもちろんですが、撮影現場での集中力がスゴイんです。雑談をしていて助監督に呼ばれても「え? 何て言った?」とはならずにすぐ応えられるし、スタッフさんの名前は全部言える。芝居以外のところで、人として当たり前のことを完璧にやって頭がいいです。それでいて「自分は下手くそ」って言うんです。上手くなりたい欲が強い。多くの作り手に求められるのも当然だと思います。

取材・文:浅見祥子 写真:日吉永遠