ハリウッドの映画スタジオといえば、ユニバーサル、フォックス、ワーナーといったメジャースタジオが有名ですが、近年は良質な映画を製作している独創的なスタジオにも注目が集まっています。

例えば、第1弾作品『バットマン ビギンズ』(2005年)で製作をスタートさせたレジェンダリー・ピクチャーズ。『GODZILLA ゴジラ』(2014年)や『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年)のようなオタク心をくすぐるジャンルムービーを作り続けている製作スタジオです。

そのほか、ギレルモ・デル・トロやウェス・アンダーソンといった作家性の高い監督をサポートするフォックス・サーチライト・ピクチャーズなど、独自のブランド力を打ち出すスタジオは多数存在します。そんな中、設立したばかりにも関わらず、飛ぶ鳥を落とす勢いの映画会社が「A24」です。

(c)2017 Under the LL Sea, LLC

設立から数年でアカデミー賞作品を誕生させた!

A24は、2012年にニューヨークで設立されたインディペンデント系の製作・配給を行う映画会社です。チャーリー・シーンが“お騒がせセレブ”に扮した2013年の『チャールズ・スワン三世の頭ン中』を皮切りに、同年、ハーモニー・コリン監督の『スプリング・ブレイカーズ』を配給し、一躍ヒットを記録。ソフィア・コッポラ監督作『ブリングリング』(2013年)やドゥニ・ビルヌーブ監督作『複製された男』(2013年)など、気鋭監督の作品も手掛けたことで、一気にその存在が知れ渡るようになります。

その後、年間10~20本の作品に携わってきたA24は、2015年に『エクス・マキナ』や『ルーム』といったアカデミー賞に絡む作品を手掛けるようになると、2016年の『ムーンライト』で初のアカデミー賞作品賞を獲得。勢いそのままに、作品賞を含む主要5部門にてノミネートされた『レディ・バード』(2017年)を配給するなど、設立からわずかな期間でアカデミー賞の常連になります。その目利きの確かさからも、“ハズレ知らずのスタジオ”として映画ファンから一目置かれているのです。

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インディペンデントだからこその“尖った”作品セレクト

A24が映画ファンを魅了するのは、手堅いウェルメイドな作品を作っているからではありません。むしろその真逆を行くような、個性的な題材にチャレンジする“攻めの姿勢”に人気が集まっています。

例えば、前述の『スプリング・ブレイカーズ』は、刺激を求める女子大生4人組が春休みにドラッグディーラーと出会い、裏社会へと足を踏み入れて行く様子を描いています。ヌードあり、流血あり、ドラッグ描写あり……と、決してお行儀の良い作品ではありません。ジェームズ・フランコ、ヴァネッサ・ハジェンズ、セレーナ・ゴメスといった旬な若手スターを起用しながらも、どこまでも享楽的で、痛々しい青春映画に仕上がっています。

トム・ハーディが主演を務めた『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』(2014年)は、携帯電話を巧みに使った演出で、全編を車中のワンシチュエーションのみで描き切った意欲作。さらに、ダニエル・ラドクリフが奇妙な水死体役で登場する下ネタ満載の『スイス・アーミー・マン』(2016年)など、数々の尖った作品を世に送り出してきました。

個性的な若手監督とも積極的にタッグを組み、不条理な世界を描くヨルゴス・ランティモス監督の『ロブスター』(2015年)、『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2017年)や、全編iPhoneで撮影された『タンジェリン』(2015年)で知られるショーン・ベイカー監督の『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017年)、ジェレミー・ソルニエ監督の『グリーンルーム』(2015年)など、独自路線を突き進んでいます。

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『イット・フォローズ』の最注目監督とタッグ!

そんなA24の最新作が、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の『アンダー・ザ・シルバーレイク』(10月13日公開)です。ミッチェル監督は、約2億円の製作費ながら世界中で150億円以上を稼ぎ出し、あのクエンティン・タランティーノも絶賛した『イット・フォローズ』(2014年)を手掛けたことで、一躍脚光を浴びた人物です。

今作の舞台となるのは、セレブが集う米ロサンゼルス。アンドリュー・ガーフィールド演じる無職の主人公・サムが、突如姿を消してしまった近所の美女を探すうちに、ハリウッドを取り巻く陰謀を解明していくというストーリーです。

デヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』(2001年)の世界観とも共通するハリウッド特有の不穏な空気が漂いますが、色彩は超ビビッドというバランス感覚が絶妙。何が真実なのか……? 主人公と同様、観る者の神経も研ぎ澄まされていくような斬新かつ幻想的な映像です。

2018年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門でいち早く上映されましたが、観客からは賛否両論。とはいえ、「ヒッチコックとリンチを融合させた悪夢版『ラ・ラ・ランド』だ!!」「ヘンテコで深遠な、愛すべきカルト映画!」という海外メディアの評に表れているように、チャレンジ精神溢れるA24らしい怪作と呼べるでしょう。

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良作を連発してきた“ハズレなし”の映画会社・A24。本作以降も『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』(11月17日公開)や『イット・カムズ・アット・ナイト』(11月23日公開)と日本公開を迎える作品が待機中です。監督や出演者だけでなく、今後は“A24”というスタジオ名で映画を選ぶ……そんな楽しみ方はいかがでしょうか?

(文/ケヴィン太郎・サンクレイオ翼)