すっかり秋らしくなってきた今月の5つ星映画は、先月急逝した樹木希林さんの劇場公開最新作に名優デンゼル・ワシントン初のシリーズものアクション大作、全米で大ヒットした異色スリラーに、猫好きにはたまらない猫と青年の旅物語、そして人生最後のときをテーマに父と息子の交わりを描いたインド映画などをピックアップ。これが10月の5つ星映画5作品だ!

『イコライザー2』 (10月5日公開)

世直しデンゼル再び!単なる強いオヤジでない深みは彼でこそ

 名優デンゼル・ワシントン初のシリーズもの。世の不正を抹消するイコライザーのマッコールが帰ってきた。タクシードライバーとして勤勉に働く表の顔の一方で、人と深く関わるのを避けてきた彼が、自主的に悪者を退治し弱者を救ったり、同じアパートに住む青年マイルズと疑似父子関係を築くなど、前作の事件をきっかけに変わった様子がまずは描かれる。だが、そんな彼にとっての平和な日常が、心の支えだった親友スーザンの死によって一変する。彼女の死の真相を追う中で、敵が彼と同様のスキルを持つイコライザーだと判明し、対峙するのが今作のもう一つの見どころとなる。吹き荒れるハリケーンの中、イコライザー同士の対決によるクライマックス。マッコールがどれだけのトップエージェントだったかを思い知らされ、次はどんな手を繰り出すのか、緊迫感と興奮の渦にどっぷりとのみ込まれる。そして、その嵐の後に訪れるのは、彼にとって新たな平穏。単なる強いオヤジの物語ではなく、マッコールの人生の深みも味わえるのは、やはり名優デンゼルのなせる業なのだろう。マイルズ役のアシュトン・サンダース(映画『ムーンライト』のあの青年!)の新境地も実にいい!(編集部・浅野麗)

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『日日是好日』(10月13日公開)

(C) 2018「日日是好日」製作委員会

茶道の心を体現した樹木希林さんの名演に心洗われる

 「日日是好日」(にちにちこれこうじつ)とは耳慣れない言葉だが、映画を見終えるころには黒木華演じるヒロインと同様、この言葉の奥深さを噛みしめ、心洗われた気分になる。森下典子のエッセイに基づき、20歳から24年間にわたって五感でたしなむ茶道の未知なる世界に触れ、人生の悲喜こもごもを経験していくヒロインの心の旅路を描いた本作。特に記しておきたいのは、やはりヒロインの茶道の師匠となる武田先生を演じた樹木希林さんの演技だ。このキャラクターに、お茶の精神が集約されていると言っても過言ではない。終始、優雅なたたずまいで、まさにハマり役なのだがお茶は未経験というから驚く。「わたし、最近思うんですよ。こうして、毎年同じことができるのが幸せなんだって」といった武田先生の名言の数々が、有無を言わせぬ説得力を持って響いてくるのは樹木さんだからこそ。2018年は『モリのいる場所』で名優・山崎努とあうんの呼吸を見せ、是枝裕和監督と6度目のタッグを組んだ『万引き家族』ではにこやかだが少し怖さをはらんだ老女を演じ、鮮烈な印象を放った。『日日是好日』は、「老いてなお盛ん」な名演で観客をくぎづけにし続けた樹木さんの晩年を語るのに外せない一作となっている。(編集部・石井百合子)

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『search/サーチ』(10月26日公開)

PC画面と化したスクリーンで展開する謎解きと浮かび上がる娘の素顔

 パソコン画面の中でストーリーが展開する異色のサスペンススリラー。突如謎の失踪を遂げた娘の居どころを探るため、父親は娘のSNSを手がかりにして警察と捜索を開始する。しかし、SNSの投稿やデータを辿っていく過程で、娘の驚くべき一面が暴かれることに……。馴染みあるPCの起動音から本編が始まると、すぐさまスクリーンがPC画面に変化。オープニングのモンタージュ映像からその世界観に引き込まれていき、違和感なくストーリーに入り込むことができる。主人公が次々と辿っていく娘のSNSのページに、物語のカギとなる伏線がいくつも張られており、一瞬たりとも気が抜けない。二転三転と状況が変化する展開に、思わず凍り付いてしまう場面も用意されている。時間の経過と共に精神状態が不安定になっていく父親を、『スター・トレック』シリーズなどに出演するジョン・チョーが見事に演じているのも見どころ。新鋭・アニーシュ・チャガンティ監督が仕掛ける斬新な映像と、最後まで予想がつかないストーリー展開に驚かされる一本だ。(編集部・倉本拓弥)

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『旅猫リポート』(10月26日公開)

(C) 2018「旅猫リポート」製作委員会

ツンデレ猫にメロメロ!愛が詰まった物語

 有川浩の小説を映画化した本作は、福士蒼汰演じる主人公の悟と愛猫・ナナが、ナナの新しい飼い主を探すために旅をする物語。全編を通して、美しい風景と愛くるしい猫の魅力がたっぷり! 高畑充希が声をあてたナナは、冒頭では「猫がしゃべった!?」と驚かされるが、すぐにナナそのもののようにナチュラルな雰囲気をかもし出す。誇り高いツンデレ猫のナナの感情が声として伝わることで、くりくり動く目からモッフモッフの毛の流れ、あっちこっちを向いたヒゲの1本1本まで「演技かも!」と期待が膨らんでしまうくらいだ。ナナがほかの犬猫とふれ合う場面で垣間見える、動物同士のやり取りにも心惹かれる。彼らの周りにも魅力的な人ばかりが集まっており、悟が人生で出会ってきた人々と再会する場面は甘酸っぱい。そんな切ない場面もありながら、いつも前を向く悟の笑顔に観ているこちらが元気づけられる。愛が目いっぱい詰まった世界で起こる、人と猫という垣根を取り払った愛情のやり取りが、疲れ切った心に染みわたる……。(編集部・小山美咲)

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『ガンジスに還る』(10月27日公開)

(C) Red Carpet Moving Pictures

父子の絆とガンジス河の美しさに心打たれる

 死期が近づき、ガンジス河の畔の聖地・バラナシで死を迎えることを決意する老人・ダヤと、その家族の物語。ダヤは息子のラジーヴに付き添われて“死”を迎えるために人々が暮らす「解脱の家」に行く。最期のときが近づいているのにどこか前向きなダヤと、社会に疲れて頭が凝り固まってしまっているラシーヴのかみ合わない会話は、ユーモアにあふれ、父と子が次第に打ち解けていく過程は心がじんわりと温まっていく。ダヤや、自分の意志で「解脱の家」にやってきた人々は“死”が近づいているにもかかわらず、スクリーンからは不思議な生命力があふれる。また、荘厳なガンジス河の景色は息をのむほど美しく、全編に渡り漂う静けさは心地よい。登場人物たちから少し距離を置いたようなカメラワークや家族の複雑さを描くさまは、小津安二郎の『東京物語』を彷彿させ、異国の地の景色にどこか懐かしさが感じられる。メガホンを取った、27歳のシュバシシュ・ブティアニ監督の今後にも期待が高まる。(編集部・梅山富美子)

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シネマトゥデイ編集部