文=金田裕美子/Avanti Press

メインキャストが全員アジア系のハリウッド映画が3週連続全米興収ナンバーワン! 多様化しつつあるアメリカ映画界に一大旋風を巻き起こしたのが『クレイジー・リッチ!』(原題は『クレイジー・リッチ・エイジアンズ』)です。でもこの映画、観ているうちに「『ジョイ・ラック・クラブ』以来25年ぶりのオール・エイジアン・キャストのハリウッド映画」なんてことはさっさと忘れて物語に引き込まれ、笑って泣いて、ゴージャスな気分にも浸れる、元気の出るロマンティック・コメディなのであります。

『クレイジー・リッチ!』 新宿ピカデリーほかにて ロードショー中
2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT
配給:ワーナー・ブラザース映画

主な舞台はシンガポール。マーライオン公園からラッフルズ・ホテル、マリーナ・ベイ・サンズのインフィニティ・プール、近未来のような植物園、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイまで、シンガポールの有名観光スポットがばんばん出てきます。もちろんシンガポールのおいしいものもふんだんに登場。今回は映画の大ヒットを祝して、このシンガポール料理に挑戦してみます!

予想は全て大ハズレ! 驚きの彼の正体とは?

ニューヨーク大学で経済学を教える中国系アメリカ人のレイチェル(コンスタンス・ウー)は、若くして教授の座についた才媛。彼女の専門は人の意思決定や行動を分析する「ゲーム理論」、行動経済学と並んで経済学の中でも近年大注目を集めている分野です。

ラブラブの恋人ニック(ヘンリー・ゴールディング)は、映画でははっきり描かれませんが、原作によると同じ大学の歴史学教授。ふたりはニックの親友の結婚式に出席するため、彼の故郷であるシンガポールに向かうことになります。

『クレイジー・リッチ!』新宿ピカデリーほかにて ロードショー中
2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT
配給:ワーナー・ブラザース映画

ニックは家族のことを話したがらないし、レイチェルのデザートをいつも半分食べてしまうし、もしかしたら貧しい家族に仕送りをしているのかも……などというレイチェルの予想は大ハズレ。空港でいきなりファーストクラスに案内され、問いただしてみると、彼はアジア屈指の不動産王・ヤン一族の御曹司だったのでした。

「それならそうと言ってよ!」って感じですが、財産目当ての女性たちにうんざりしているニックは、財産など関係なく彼にゾッコンのレイチェルに、これまたゾッコンなのでしょう。

立ちはだかる“セレブ一族の壁”

中国からの移民であるシングルマザーに苦労して育てられたレイチェルは、お世辞にも上流階級の人間とは言えません。とはいえ努力して掴んだ大学教授という地位もあることだし、彼の家族に拒絶はされないよね……という予想は、またまた大ハズレだったのでした。

特にニックのお母さんエレノア(ミシェル・ヨー)は、オックスフォード大学の法科で学んだものの結婚のためにその道に進むことを諦め、一族のためだけに人生を捧げてきた人。“自分の情熱を追い求める”レイチェルを“アメリカ人的ね”と一蹴します。

『クレイジー・リッチ!』新宿ピカデリーほかにて ロードショー中
2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT
配給:ワーナー・ブラザース映画

場違いな環境に戸惑うレイチェルを励まし、何かと世話を焼いてくれるのは、大学時代の友人ペク・リン(オークワフィナ)。ペク・リンの家も噴水があったり金ピカのベルサイユの間があったり、相当な成金一家なのですが、その彼女が「うちとは違うクレイジー・リッチ(=バカみたいに金持ち)」と表現するのが由緒正しいヤン一族なのです。

さて、何か言われたからといって簡単にへこんだりしないレイチェルが、ヤン家の人々に認められる日はくるのでしょうか?

『クレイジー・リッチ!』新宿ピカデリーほかにて ロードショー中
2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT
配給:ワーナー・ブラザース映画

シンガポールでグルメといえば……

さて、シンガポールの空港に降り立ったレイチェルとニックを、結婚式を控えたコリン(クリス・パン)とフィアンセのアラミンタ(ソノヤ・ミズノ)が迎えに来てくれます。その足で彼らが向かうのが、ニュートン・フードセンター。シンガポールにはホーカーズと呼ばれる屋台街が町のあちこちにあり、ここはその中でも特に観光客に人気のスポットなんだとか。

『クレイジー・リッチ!』新宿ピカデリーほかにて ロードショー中
2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT
配給:ワーナー・ブラザース映画

ニックは「ここのサテが一番うまい」などとレイチェルに屋台の説明をして回り、テーブルいっぱいに食べ物を注文します。これがサテやらエビやらカニやら、カラフルでとってもおいしそう! 今すぐシンガポールに行ってあれ食べたい! けれどシンガポールは遠い。なんせ赤道直下、飛行機で7時間はかかります。ならば自分で作っちゃおう! というわけで、シンガポールの屋台料理を作ってみます。

屋台定番「サテ」作ってみます!

まずはニックおすすめのサテ。東南アジアで広く愛されている串焼き、サテは、焼鳥みたいな形状ですが、たいてい焼鳥より串が長く、刺してあるお肉が小さめです。ピーナツをベースにしたソースが独特で、サテの屋台があると遠くからでもピーナツの香りで察知できてしまいます。

サテに使用される食材は、鶏、牛、豚、変わったところではヤギ、カメ、ヘビなど。今回は最もポピュラーな鶏肉と牛肉を使いました。

鶏モモ肉(ムネ肉でも)と牛サーロイン肉をそれぞれ1センチ角くらいの大きさに切ります。それをサテ・ソースに漬け込んでしばらく置き、串に刺して焼くだけ(できれば炭火で)。

サテ・ソースをもみ込んで焼くだけ

ソースはピーナツやニンニク、とうがらしなどを使って手作りすることもできますが、今回はちょっとズルして、お手軽な市販のサテ・ソースを使っちゃいました。そのほうがなんとなく屋台のジャンクな味に近いような。

焼きあがったサテはバナナの葉の上に並べ、ディップ用のソース(漬け込んだのと同じもの)、きゅうりと紫玉ねぎのピクルスを添えました。

日本でもおなじみ「シンガポール・チキンライス」

お次はシンガポール・チキンライス。海南鶏飯の名でも知られる、日本でもおなじみのメニューです。

鶏モモ肉は脂の部分を包丁で取り除き、塩と酒で下味をつけておきます。鍋に水、しょうが、ねぎの青い部分を入れて火にかけ、沸騰したら鶏モモ肉を入れて弱火で15分ほど茹でます。しょうがとねぎを取り出し、鶏を入れたままスープを冷まします。

お米は、日本のお米より粒が長く、パラっとして香ばしいジャスミンライス(インディカ米)を用意しました。お米はさっと洗って鍋に入れます。もちろん炊飯器でも可。ここに冷ました鶏肉の茹で汁を注いで普通に炊き、炊き上がったら茹でた鶏肉をのせて蒸らします。

鶏肉を取り出して食べやすく切り、お皿に盛ったご飯の上にのせます。サイドに醬油と黒砂糖を弱火にかけて作った醬油ソース、すりおろししょうがにレモン汁とサラダ油、塩を加えたしょうがソース、チリソースを添えました。

鶏肉を生のまま米と一緒に鍋または炊飯器に入れて炊く、というもっとお手軽な方法もあるので、時間のない方はそちらでどうぞ。

大エビを使った「焼きエビ」

見た目が白っぽく地味なチキンライスのあとは、赤い色がかわいい焼きエビにまいります。映画に出てきたエビはかなり大きかったので、こちらも負けずに大きな有頭ブラックタイガーを用意しました。

エビはヒゲと足をキッチンバサミで切り、きれいに洗います。竹串などで背わたを取り、さらにキッチンバサミで頭と背の殻に切れ目を入れ、背の側から包丁で開きます。

エビに塩、こしょうをふり、魚焼きグリルで焼きます。焼いている間にフライパンにバターを溶かしてみじん切りのにんにくを入れ、さらにパン粉を加えてカリッとするまで炒めます。

エビはしっかり開くとまるまりにくくなります

焼きあがったエビの上にパン粉をのせ、ライムを添えれば、出来上がり。シンガポールではスモールライムと呼ばれる金柑くらいのサイズのものが一般的ですが、普通のライムやレモンでもOK。

ゴージャス南国料理「チリクラブ」

そして本日の主役、エビよりさらに派手なビジュアルを誇るチリクラブ。こちらもシンガポールに行ったらマスト! の名物料理です。

使われるカニの種類はいろいろありますが、もっともポピュラーなのがマッドクラブ。マングローブクラブ、ノコギリガザミとも呼ばれるワタリガニの仲間で、大きな爪が特徴です。一般にはなかなか流通していないこのカニ、今回はがんばって沖縄出身の大物を1匹入手いたしました。

カニは甲羅を外してガニ(グレーのスポンジみたいな部分ですね)を取り除き、水で汚れを洗い流します。包丁で真ん中から2つに切り、さらに3等分にします。

矢印のエイリアンみたいな部分が“ガニ”

爪の部分は固いので叩いて殻を割っておきます。

解体されました

中華鍋にサラダ油を入れ、切ったカニを投入。殻が赤くなるまで炒めて一旦取り出します。

鍋をきれいにして再び火にかけ、サラダ油、しょうがとにんにくのみじん切りを入れ、香りが立ってきたらトマトジュース、チリソース、砂糖、しょうゆ、鶏ガラスープを入れて煮立たせます。

カニは炒めると真っ赤に

これらの調味料だけでも十分おいしいのですが、またちょっとズル。「シンガポール・チリクラブの素」なる瓶詰を見つけたので、これもちょっと加えてみました。「素」には、日本では手に入れにくいタマリンドやレモングラス、ガランガル、コブミカンの葉などのハーブが使われていて、使うと俄然南国の味になります。

少々水分を飛ばしたら水溶き片栗粉でとろみをつけ、カニを鍋に戻し、ソースと絡めるように炒めます。

爪、でかっ

最後に溶き卵を少しずつ流し入れ、全体に火が通れば出来上がり。お皿に盛って小口ねぎを散らします。わー、ゴージャス! ソースは揚げたマントウ(饅頭)につけていただきます。

ビール片手にアジア屋台気分!

出来上がった料理をテーブルに全部並べて、シンガポールのタイガービールで乾杯! 甘くて香ばしいサテ、ジューシーなチキンライス、にんにくのパンチがきいた焼きエビ、ちょっと辛くて味も見た目も南国そのもののチリクラブ。頭が単純なので、もうすっかりホーカーズ気分です。

映画にはペク・リンの家やパーティで出される高級料理や、ヤン家伝統の手作り餃子など、ほかにもたくさんおいしそうなものが出てきますが、私が惹かれたのは何といってもこの屋台料理。東南アジアらしいあのホーカーズの活気がたまりません。レイチェルが初めて会ったコリンとアラミンタのカップルとすぐ打ち解けるのも、このガヤガヤした庶民的な雰囲気があったからこそだったのかもしれません。ま、一見庶民的に見えるコリンとアラミンタも、実はあきれるほどクレイジー・リッチな人たちであることが後からわかるのですが。

【材料】
《サテ》
鶏モモ肉、牛サーロイン肉、サテ・ソース、竹串、つけ合わせのきゅうりと紫玉ねぎのピクルス
《シンガポール・チキンライス》
鶏モモ肉、しょうが、ねぎの青い部分、ジャスミンライス、塩、酒、水、きゅうり
 <ソース>醬油、黒砂糖、しょうが、サラダ油、レモン、チリソース
《焼きエビ》
ブラックタイガー(おおきめのもの)、にんにく、バター、パン粉、塩、こしょう、スモールライム
《チリクラブ》
カニ、にんにく、しょうが、トマトジュース、チリソース、砂糖、醬油、鶏ガラスープ、片栗粉、卵、万能ねぎ、マントウ、サラダ油
【映画っぽい雰囲気を盛り上げる小道具】
スマホ&SNS、風船、赤いドレス、ゴージャスなドレス、月下美人、麻雀、エメラルドの指輪、ヘリコプター、タンカー