ハーバード大学を飛び級で卒業したIQ185の才女でありながら、コミュニケーション能力に欠ける主人公キャリーが、セラピストから渡された「幸せになるためのリスト」を実行することで、少しずつ成長を遂げていく『マイ・プレシャス・リスト』(公開中)。

『マイ・インターン』(2015年)を手掛けたプロデューサーの最新作であり、監督と二人のプロデューサーの名前が全員「スーザン」という、女性だらけのスタッフで作った作品なのだ。

主人公は、頭が良すぎてこじらせてしまった

映画のタイトルを観て「リストを一つずつこなす過程で見えてくる物語」つながりで、まず、『死ぬまでにしたい10のこと』(2002年)を思い出した。おそらく、『最高の人生の見つけ方』(2007年)に似ている、と感じる人もいるはずだ。

余命宣告を受けずとも、「自分のやりたいことをリスト化すれば、みるみる人生が好転していく」という話は自己啓発系の本でも多数紹介されている。言ってみれば、切り口としてはそれほど新鮮味がないのだが、本作の面白いところは、主人公の性格が悪く、極度のコミュ障であるところ。

「不機嫌で頭でっかちな少女の成長物語」つながりで、ソーラ・バーチ主演の『ゴーストワールド』(2001年)に近いともいえるのだ。

(C)2016 CARRIE PILBY PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

主人公はニューヨークのマンハッタンで独り暮らしをする、引きこもり気味のキャリー。超天才だが(というよりは、頭が良すぎるばっかりに!?)、友達も仕事ももたず、1週間に17冊も本を読みあさっている文学少女。

たまに話す相手といえば、おじさんセラピストのペトロフだけ。年上のインテリに惹かれて恋に落ちたこともあるけれど、痛い目に遭ってトラウマに。

そんな彼女を見るに見かねたペトロフが提案したのが、「ペットを飼う」「子どもの頃好きだったことをする」「デートに出かける」のような、いわゆるTO DO リストを一つずつ実行していくこと。 

「何のために?」「それで問題は解決するの?」とぶつくさ言いながら、まずは金魚を2匹飼うところから始めるキャリー。遠く離れて暮らす父の勧めで法律事務所の文書校正の仕事についた彼女は、今までまわりに居なかったタイプの同僚たちと知り合い、出会い系広告で知り合った男性と興味本位でデートをする。そして新しい環境に飛びだしたことで、今まで「わかったつもりになっていたこと」と、正面から向き合うことになる。 

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「見え過ぎる」から生きるのがつらくなる、頭の良い女の子たち

「なぜリスト化して一つ一つクリアしていくと人生が好転するのか」については、頭の中では混沌としていることも、“見える化”すれば意外とシンプルなことに気づくからといえるだろう。

でも「なぜ頭の良い少女は不機嫌になりがちなのか」については、今までも映画や文学、漫画などで、そういったキャラクターが主人公になることは多くても、あまり解説されてはこなかった。“自分探し”を経て“大人になること”で、「めでたし、めでたし。」で終わることが多いからだ。

キャリーのような女の子の場合、小さい頃から人より勉強が出来たばっかりに、何事も理屈で考えるクセがつき、周囲の人を論破して怒らせたり、売り言葉に買い言葉で心にもないことまで口走ってトラブルになったりすることが多い。そのため、「どうせ自分のことなんて誰もわかってくれない」と心のシャッターを下ろしてしまう。

要は「見えてない」のではなく人より「見え過ぎている」から、自分より鈍感に思える人が周囲に多いと、生きるのが辛くなってしまうのだ。

個人的には、隣の部屋に居候している胡散臭げな青年が、実は意外なキャリアのもち主であるエピソードにグッときた。いつも見下していたはずの相手こそ、一番の良き理解者だったりすることは、人生に往々にして訪れる。

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「見え過ぎる」目をいったん閉じて、新たな気持ちで開いてみたら、つまらないとばかり思っていた冴えない日常にも、意外と面白いことが転がっている。悪態をついてばかりの不機嫌な女子的マインドをもつ人にこそ、おすすめしたい1本だ。

(文/渡邊玲子@アドバンスワークス)