シリーズ累計680万部突破の大ベストセラーを、黒木華・野村周平主演で映画化した『ビブリア古書堂の事件手帖』が11月1日より公開される。夏目漱石の『それから』や太宰治の『晩年』に隠された秘密を辿る、古本好きの心をくすぐる物語だ。本作の公開にちなみ、古書店を舞台にした「掘り出し物」的な邦画をセレクト。読書の秋にオススメしたい3本を紹介しよう。

本の街・神保町の魅力が丸ごと詰まった『森崎書店の日々』

まず1本目は、失恋して落ち込む主人公(菊池亜希子)が、本の街・神保町で叔父(内藤剛志)が営む古書店を手伝う『森崎書店の日々』(2010年)。

 書店の2階に間借りしながら時々店番をして、近所の喫茶店や雑貨屋を巡り、好きな本を読みふける日々。本の街に集う人々と交流しながら、主人公が少しずつ成長していく過程が丁寧に描かれている。まさに古本好きにとっては夢のような日々を、映画を通じて疑似体験することができるのだ。

 森崎書店の舞台となるのは、神保町の商店街・すずらん通りにある紅茶専門店の倉庫兼事務所。そのため、映画の中には実在の古書店や喫茶店、和菓子屋などが多数登場する。

 「神田古書センター」やSF・ミステリー専門店の「富士鷹屋」、路地裏の喫茶店の「きっさこ」や「AMULET」「Voici Cafe」など、映画公開当時には、ロケ地を巡るスタンプラリーも開催されていたほど。本の街・神保町の魅力が丸ごと詰まった1本なのだ。

 木村佳乃のコメディエンヌぶりに注目したい『全然大丈夫』

2本目は、劇団「大人計画」所属で今やドラマや映画にひっぱりだこの個性派俳優・荒川良々の記念すべき初主演映画『全然大丈夫』(2007年)。

 荒川演じる主人公・照男の実家である古書店を舞台に、癖のある登場人物たちが繰り広げる風変わりな日常が、ユルーく、コミカルに展開される。

 「世界一怖いお化け屋敷づくり」が夢で、友人とホラー映画制作に勤しむ照男のキャラクターは強烈。そして、バラエティ番組「世界の果てまでイッテQ!」での体当たりぶりが高く評価されている木村佳乃が、チクワと雨音を偏愛する不思議ちゃんのあかりに扮しているのも見逃せない。

古書店の店番を任されたあかりが、SM趣味全開のエロ本をこっそり買おうとする男性客相手に繰り広げる、悪気の無い「残酷非道」ぶりに笑ってしまう。出演シーンは短いながらも、鳥居みゆきの意外な役柄も印象に残る。

マニア垂涎の希少本も登場する『ビブリア古書堂の事件手帖』

(C) 2018「ビブリア古書堂の事件手帖」製作委員会

最後に紹介するのは、11月1日から公開となる『ビブリア古書堂の事件手帖』だ。

ミステリー愛好家からも熱い支持を受ける三上延のベストセラー小説を、『幼な子われらに生まれ』(2017年)の三島有紀子監督が映画化した本作。過去にはコミカライズも行われ、2013年にはTVドラマ化もされた同シリーズの実写版だ。既にアニメ映画化も決定しているなか、黒木華、野村周平以外にも、成田凌や夏帆、東出昌大といった豪華キャストの共演で実写化されたとあって、映画ならではの世界観に注目が集まっている。

物語の主人公は、鎌倉の片隅にある「ビブリア古書堂」の店主・篠川栞子(黒木華)。極度の人見知りながらも、本のことになると並外れた情熱と知識を発揮して、鋭い洞察力で次々と古書にまつわる謎を解き明かしていくのだ。まるで本がもつ不思議なパワーに導かれるかのように、過去と現在の物語が、互いに交差しながら、ロマンチックかつサスペンスフルに紡がれていく。

登場人物たちに負けないほどの存在感を放っているのが、冒頭でも触れた不朽の名作『それから』『晩年』と並び、作品の世界観に合わせて映画独自にセレクトされた、1冊数十万円もする貴重な古書の数々。文豪たちの全集や希少本がずらりと飾られた本棚は、古本好きが目にしたら涎を垂らしてしまうほどのラインナップ。本棚越しに交わされる視線にも、ドキリとさせられること請け合いだ。

(C) 2018「ビブリア古書堂の事件手帖」製作委員会

『ビブリア古書堂の事件手帖』においても、本に記された手描きのサインが謎を紐解く重要なカギになっているのだが、かつて誰かが読んだ痕跡も、古本ならではの楽しみの一つと言えるだろう。時空を超えて、一冊の本に託されたさまざまな想いを共有することは、電子書籍では得られないかけがえのない読書体験だ。

ホコリと紙の独特な匂いが漂ってきそうな古書店が舞台の映画を観た後は、きっと実際に古書店へ足を運びたくなるに違いない。読書の秋、戦利品を抱えて喫茶店でページを繰りながら、再び映画のシーンに想いを馳せてみてはいかがだろうか。

(文/渡邊玲子@アドバンスワークス)