世界に通用する日本ワイン「桔梗ヶ原メルロー」を生み出したワイン界の先駆者・麻井宇介の思想を受け継ぎ、日本ワインの常識を覆した革命児たちの実話を映画化した『ウスケボーイズ』が10月20日に公開される。原作は、第16回小学館ノンフィクション大賞を受賞した河合香織の「ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち」。

「ワイン友の会」の仲間たちは麻井宇介に憧れ、ワイン用のぶどう栽培は困難と言われた日本で、ワイン造りに没頭していく。この映画で、ワイン造りに苦悩する実直な青年・岡村を演じた渡辺大にお話を伺った。

ありのままを正直に表現したかった

Q:役作りとして、どのようなことをされましたか?

僕が演じた役のモデルとなった岡本英史さんにお会いしました。あまり感情を表に出さない方でしたので、僕が演じることをどう思っていらっしゃるのかなと思い、ドキドキしました。岡本さんが真摯に畑と向き合う姿を目の当たりにし、映画だからと言って派手に演じる必要はなく、ありのままを正直に表現したいという気持ちになりました。

Q:テイスティングの仕草がとてもお上手でした。

撮影に入る2週間ほど前に、このお店(※『ウスケボーイズ』の柿崎ゆうじ監督がオーナーを務めるレストラン、Organic Restaurant Setaのこと)などで、テイスティングの仕草の練習をしました。ウスケボーイズのワインを世界に広めたソムリエ・酒田を演じた和泉元彌さんはワインを開けるシーンがあったので、その仕草も含めてソムリエの方に教わっていました。

Q:ワインを美しく開けるのは難しいですよね。しかも映画のシーンに合わせるタイミングの良さも必要ですし。

ワンカットのシーンですから、和泉元彌さんは苦労されたと思います。ワインを開ける動作を途中で止めてしまったり、何度も繰り返したりすると、ラベルがはがれてしまうこともあります。僕らはワインを開けるシーンがなかったので、おいしいワインをグラスに注いで飲むだけでした(笑)。

『ウスケボーイズ』より (c)河合香織・小学館 (c)2018 Kart Entertainment Co., Ltd.

オーディション会場から追い出された過去

Q:多くの挫折を経て、ワインが完成していく過程は、人生に通じるものがあります。渡辺さんの俳優人生にも挫折はありましたか?

この映画のモデルとなった岡本さんは、技術と知識をきちんと持っていて、それをどこでトライするのか考えて動いていました。僕はいまでも俳優として大成功しているわけではありませんが、うまくいかないときのほうが多くて。特に10代~20代初めの頃は挫折ばかりで、心が折れそうになりました。受けたオーディションのほとんどがダメで、門前払いに近い扱いでしたから。「下手くそ」と言われ、オーディション会場から追い出されたこともあります。当時の僕は実力が伴わないまま、俳優の仕事をしていたので、痛い目を見たのは当然の結果だと思っています。

Q:度重なる挫折によって、傷ついた心をどのようにして癒していったのですか?

どんどん次に行くしかないですよね。前に進めば忘れていきます。僕の取り柄は、粘り強く続ける気持ちがあること。その気持ちがなければ、どこかで心は折れてしまい、俳優の仕事を辞めていたと思います。

Q:渡辺さんは映画『ウスケボーイズ』の演技が評価され、マドリード国際映画祭 2018 とアムステルダム国際フィルムメーカー映画祭2018 の外国語映画部門・最優秀主演男優賞を受賞されました。(※渡辺さんはミラン国際フィルムメーカー映画祭の最優秀主演男優賞にもノミネート。発表は12月8日予定)

たくさんの方からお祝いのメッセージをいただき、ありがたく思っています。自分が賞をいただいたことよりも、この映画をきっかけとして、日本ワインを楽しむ文化がもっと定着していけば、嬉しいです。一般家庭の食卓に日本ワインが並んでいる光景を見たときに初めて、この映画をやって良かったという達成感を得るのかもしれません。

(取材・文/田嶋真理)

『ウスケボーイズ』
10月20日(土)より新宿武蔵野館ほか全国公開
配給:カートエンターテイメント(配給協力:REGENTS)
公式サイト:http://usukeboys.jp/
(c)河合香織・小学館 (c)2018 Kart Entertainment Co., Ltd.