今年9月に実写映画化が発表され、2019年に全国の劇場で公開されることが決まった『ホットギミック』。本作は2000年から2005年にかけて月刊少女マンガ誌『Betsucomi(ベツコミ)』(小学館)で連載、累計発行部数450万部を突破した同名の人気少女漫画が原作だ。主人公の女子高生・初(はつみ)と、彼女と同じ社宅に住む3人の男性との恋愛模様を繊細なタッチでつづり、10代の少女の心情をビビッドに捉えた名作として今も読み継がれている。

今回は、本作で監督をつとめる山戸結希と、彼女が作品を通して描き出す思春期やアイドルの儚さに焦点を当ててみる。

少女たちのすべてを繊細に描出した『5つ数えれば君の夢』

『ホットギミック』で主人公の初を演じるのは、本作が映画初出演にして初主演となる乃木坂46の2期生・堀未央奈だ。女性ファッション誌『ar(アール)』のレギュラーモデルをつとめ、ファッションショーの出演経験も豊富な堀。その恋の相手役には清水尋也、板垣瑞生、間宮祥太朗と、映画・ドラマに引っ張りだこの今を時めく人気若手俳優が顔をそろえている。

監督をつとめる山戸結希は、大学時代に独学で撮影した『あの娘が海辺で踊ってる』(2012年)が、東京学生映画祭で審査員特別賞を受賞。ジョージ朝倉の人気コミックが原作の『溺れるナイフ』(2016年)では、小松菜奈と菅田将暉をW主演に迎え、不器用に傷付け合いながらも愛を深めていく10代の恋愛衝動を、息が詰まるほど切迫した演出で描き出した。同作は主人公たちと同世代の女性を中心に多くの支持を集めた。

そんな山戸監督の商業映画デビュー作は、映画初出演となるガールズ・ダンス&ボーカル・グループ「東京女子流」を主演に据えた『5つ数えれば君の夢』(2014年)だ。

山戸は、メンバーの個性を生かした役どころやセリフを効果的に取り入れ、女子校のミスコンを巡る独特の人間模様を浮かび上がらせた。その高い演出力から日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞を受賞。10代少女たちの美しさだけではなく、儚さや残酷さなど、複雑な感情を哲学的なセリフ回しで展開し、アイドル映画の枠を超えた作品として映画ファンたちをも唸らせた。

等身大の魅力を浮かび上がらせた青春ドラマのようなMV

思春期の少女たちの自意識を生々しく刻印する手腕に定評のある山戸監督。映画作品だけでなく、「アイドルMV(ミュージックビデオ)」の名手としても知られている。

『ホットギミック』で主演をつとめる堀が所属する乃木坂46では、先日卒業を発表した西野七瀬のソロ曲「ごめんね ずっと・・・」(2015年)と、現在女優として活躍中の深川麻衣の卒業シングル「ハルジオンが咲く頃」(2016年)などのMV監督を担当。

前者ではアイドルの西野七瀬と、「もしアイドルをしていなかったら……」というパラレルワールドの西野七瀬を、2画面を使って同時に描き、幼少期から現在までの写真を交えながら、等身大の彼女を浮かび上がらせた。

後者では、大正時代の歌劇団を舞台に、そこから退団する少女(深川)を主役に添えたパートと、制服姿で歌い踊る現在の乃木坂46のパートを巧みにオーバーラップさせながら、普遍的な少女たちの友情と別れを表現。メンバーそれぞれが流す涙をクローズアップで捉えたシーンは、演技を超えて心を揺さぶる光景になっている。

また、2017年リリースのNGT48のセカンドシングル「世界はどこまで青空なのか?」のMVでは、今やAKB48グループの中心メンバーとなった荻野由佳を主人公に、アイドルを夢見る少女たちのアイドル群像劇を全編12分に渡って展開。NGT48の拠点である新潟県の広大な景色をバックに、各メンバーから生き生きとした演技を引き出し、MVとは思えないほど濃密な青春ドラマへと昇華させた。

アイドルグループは刹那的な存在で、いつかは卒業、解散が待ち受けている。アイドルたちは大切な青春時代をアイドル活動に身も心も捧げて輝きを放ち、その儚さにファンは心惹かれていく。そんな思春期の少女たちの心情に寄り添って、若さゆえの美しさと残酷さを活写する山戸監督が、いかに『ホットギミック』で堀未央奈の“現在”を描き出すのか、期待は高まるばかりだ。

(文/猪口貴裕)