切っ先鋭い“ジャックナイフ”の異名をとったのも今は昔。若手・ベテラン問わず幅広い層のお笑い芸人から慕われ、情報番組のコメンテーターとして茶の間にも浸透。2015年に結婚、2017年には待望の第一子となる長男も誕生した。10月20日には父性がテーマの主演映画『ごっこ』が公開される。お笑い芸人であり、一児のパパであり、俳優でもある。その男・千原ジュニアに結婚後の変化や父親としての心境を聞いた。

子供に対して変にこなれていない感じがリアル

2016年10月に急逝した漫画家・小路啓之氏による原作を実写映画化した『ごっこ』。虐待されていた5歳児・ヨヨ子を誘拐し、父子関係を築こうとするニートの城宮を演じる。撮影は2015年末から翌年初頭に行われており、当時の千原は結婚したばかり。初めての父親役で、芝居を通して父性を疑似体験した。

「子供がいない時期に城宮を演じて正解だったと思います。私生活で子供と触れ合っていなかった分、そのぎこちなさが役に上手く反映されたのでは。子供に対して変にこなれていない感じがリアルに出ている」と本物の父親になった今だからこそ見えてきたものもある。

千原いわく「天才子役」というヨヨ子役の平尾菜々花には、当時も今もメロメロで「撮影当時、自分に子供はいませんでしたが、ただただ菜々花ちゃんが可愛いので、演じるというよりも自然と父親になれたという感じがある。昨年生まれた自分の子供は男の子ですが、菜々花ちゃんと接してみて女の子はまた格別なものがあるんだろうなと。撮影終盤には“ジュニアさんと共演できてよかった”と書かれた手紙と、カラフルな輪ゴムが織り込まれたブレスレットをプレゼントしてくれた。これ本当にお父さんだったらタマランやろうな~と思いましたね」と自然と饒舌に。

息子を抱っこしている自分の姿がビルの窓に反射

千原もそのお父さんに、昨年本当になった。息子は生後10カ月ほどで「喋るわけでもないし、歩くわけでもないので、まだ“父親になった”という実感はない」というも「でも奥さんがいて子供がいるという家庭を持ったことで、芸人として振り切れる、無茶苦茶できるという資格を手に入れた気がする。ブレーキがあれば、思い切りアクセルが踏み込めるのと同じ。“芸人は安定すると守りに入る”なんて言われるので、自分もどうなるものかと楽しみだったけれど、ノンストレスで踏み込めている心境。今まで言えなかったゴッリゴリの下ネタも言えるようになった」とお笑い芸人としての変化を実感している。

父親としての自覚も、徐々にではあるが芽生えつつある。「僕が家に帰ると、子供が必死になって迎えに来てくれたり、トイレに行こうと思うと後ろからついてきたりする。それは可愛いですよね。外で息子を抱っこしている自分の姿がビルの窓に反射して映っていてハッ!としたり」。

相方であり、兄である千原せいじの肩書に“先輩パパ”も加わった。「せいじが一度うちに子供を見に来たとき、あやし方が上手かった。結構雑ですけど、でも向こうの方が父親として大先輩ですから」と新たな関係性に嬉しそうだ。

平尾菜々花という大物女優の誕生を目撃できる

近い将来に向けて自分の父性を確認してみたかったのも、『ごっこ』オファー快諾の理由かもしれない。

「真正面から見ると悪だけれど視点を変えてみると正義に見える。脚本を読んでみて、単純に面白そうやなぁと思いました。現実にも起こりえることですから、リアルだなと。また自分の経験でここまでガッツリと子役の女の子と、しかも疑似親子という設定を演じたこともなかったので、やったことのないことに挑戦するのは非常に楽しみでした」と振り返る。

千原ジュニア主演、共演に優香、ちすん、秋野太作、石橋蓮司、清水富美加(現・千眼美子)と実力派が揃ったが、紆余曲折あってお蔵入りの危機も。それを乗り越えて今年、原作者・小路氏の命日にあたる10月20日に無事公開となる。

千原は「自分のことよりも、平尾菜々花ちゃんの頑張りと才能が埋もれてしまうのが可哀想だと思っていましたので、彼女のためにも公開するべきだと思っていた」とお蔵入り危機の際には一番に“愛娘”のことが念頭にあったようで「これがデビュー作ではありませんが、平尾菜々花という大物女優の誕生を目撃できる貴重な作品といえます。それが一番の見どころ。主演の僕の芝居がダメだと感じる方がいるならば、それは僕の責任ではなく、熊澤尚人監督の演出の問題ですから」と冗談を交えつつ封切りを誰よりも歓迎している。

(取材・文/石井隼人)