『S-最後の警官-奪還 RECOVERY OF OUR FUTURE』の原作者である小森陽一が恋に仕事に奮闘するヒロインを描いた小説を、『SP』シリーズの波多野貴文が映画化した『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』。この映画で西島秀俊が演じるのは、ヒロインが赴任する遊園地で働く“魔法使い”と慕われる上司・小塚慶彦。劇中で見せる、その爽やかな笑顔の秘密に迫る。

異星人のようで、ちょっと変わっている?

Q:小塚慶彦という役柄は、ご自身にとって珍しいキャラクターに思えましたが?

最近はちょっと特殊な職業やフィクション度の高いキャラクターが多かったので、今回のような等身大……というにはちょっと変わった人ですが(笑)、もしかしたら若い部下を指導している立場の方にとっては「分かる、分かる」と共感していただける役柄かもしれません。実はこの役のモデルとなった方にもお会いしたのですが、とても二枚目の方でエネルギッシュにぐいぐい人を引っ張っていくようなアイデアと情熱にあふれた方でした。僕が演じた小塚とは全然違っていました(笑)。

Q:とても爽やかな役柄ですよね。

ヒロインの波平が東京から熊本にあるグリーンランドにやってきて、個性の強いキャラクターばかりの中にぽんと入れられる。波平が地球人だとしたら、小塚らは異星人のよう。相当変わった人間だと思います。こうして取材を受けていると「よく笑っていましたね」と言われるのですが、だから全然そんな気分ではありませんでした。確かに銃を持って、人と殺し合ったりするようなキャラクターではありませんけど。

波平役とシンクロする波瑠

Q:ヒロインの波平を演じた波瑠さんとの共演はいかがでしたか?

波瑠さんと共演したいというのは、この映画に出演する動機のひとつでした。どこかクールなイメージがありましたが、実際にお会いするとそれとは全然違っていました。しっかりした人というイメージもあるけど、それとも全然違って。“全然違う”なんて言ったら怒られそうですけど(笑)。一見、気を張ってしっかりしているようですけど、内面はあれこれ思い悩んでいたりする。それで不器用なところがあったり虫が苦手だったりする、波平のキャラクターそのままのようで、ちょっとシンクロしていました。

Q:一緒にお芝居をする相手としての印象は?

本人の性格と同じように嘘をつかないというか、過剰に何かを大きく見せたりしない。上手く言えませんが、ストレートに役へ向かう感じが魅力的だと思いました。共演できて本当に楽しかったです。今回の撮影はほぼ一か月間グリーンランドで撮影して、その間はずっとグリーンランドの隣にあるホテルに泊まっていました。本当にあそこに住んでいた(笑)。夜はそのホテルのバーで役者さんたちとよく飲みに行っていました。それで「波瑠さんも来る?」と聞くと「はい、行きま~す」みたいな感じで。来るんだ! と少し驚いたんですけど(笑)。飾らない性格なので一緒にいて、ラクなんですよね。それでやっぱり不器用な感じもあって、うっかり屋さんみたいなところもあるのかなと。ほげっとしたところがあるよね? と言うと、ああそうですね、と言っていました(笑)。

Q:ちなみにプライベートで遊園地は行きますか?

この年なのでなかなかね……行きません(笑)。最後に行ったのはいつだろう? 「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」のロケで行きました。今回あまり時間はなかったんですけど、撮影の合間にいくつか乗りました。絶叫系はあまり得意じゃないです。高いところもダメなんですけど、観覧車は結構、好きかも。実際に乗っていると、高くて「うわっ……」と思うんですけどね。

Q:完成した映画を観た感想は?

波瑠さんの演じる波平は仕事を始めたばかりで、恋愛のことで悩んだり仕事の壁にぶつかったりしながら自身が持ってしまっている偏見のようなものから解き放たれ、自分がやりたいことを見つけていく。いま現在、仕事や恋愛にがんばっている方が観たら、明日からまた頑張ろう! とモチベーションを高められる映画になっていると思います。

映画とテレビドラマとで違いは感じない

Q:以前「映画とテレビドラマは別もの」とおっしゃっていましたが?

昔は映画とテレビドラマの一番の違いは機材でしたが、いまはほとんど同じになって、撮り方も正直変わらないという感覚です。機材が違うと必要な光の量が違ったり、待ち時間が変わったり、そうして撮った映像がスクリーンで流れるのと、テレビ画面で流れるという違いはもちろんありますけど。

Q:遊園地の仕事は人を騙したり、嘘をついたり、人を出し抜くことを考えたりしなくてよさそうな、いい仕事だなと映画を観ていて改めて思いました。西島さんは、本作のどこに魅力を感じますか?

日常からちょっと離れた時間なのか、逆に日常がもっと豊かに感じられるのか。今回なら、ちょっと違う気持ちになって明日を迎えられるような、日常が変わっていく映画なのかなと。いろいろな映画がありますが、観て下さった観客のみなさんに楽しんでいただくことが一番だと思っています。

Q:映画とテレビドラマと、出演作はいまのバランスがちょうどいいのでしょうか?

僕はオファーをいただく側なので、あまりペースについて考えることはありません。それに映画とテレビドラマの違いの話で言うと、両者の違いをあまり感じていないというのもあります。ですからお話をいただいて出会いたい人、共演したい俳優さん、いい台本、そうしたものを考慮して「よろしくお願いします」と。そのプロセスはこれまでもこれからもまったく変わらないと思っています。

取材・文: 浅見祥子 写真:日吉永遠