あまりに身近なテーマに「怖すぎる!」と読者が恐れおののいた話題の小説「スマホを落としただけなのに」が実写映画化。ボーイフレンドがスマホを落としたことで生活が一変するヒロインの麻美を熱演した北川景子が、撮影現場での様子や女性としての今後の目標を語った。

明るくスカッとした芝居がひとつもなかった

Q:初めての中田秀夫監督との仕事はどうでしたか?

ホラーの作品が有名な監督だと思いますが、人間ドラマをしっかり撮られる方なのだと思いました。もちろん、スリラーっぽいところはありますが、私と田中圭さんのパートはラブストーリーとして、描いていらっしゃる印象でしたし、親友役の(高橋)メアリージュンさんとのオフィスのシーンも「ちょっとイケてる会社に勤めているおしゃれな二人」と言われました(笑)。ホラーの撮影現場、ホラーの撮り方という感じはまるでなかったです。

Q:なかなか自分の感情を表に出さない麻美ですが、どのように役づくりをされたのでしょう?

最初はどういう気持ちなのか、まるでわからなかったです。彼女の生活すべてが秘密の上に成り立っていて、ひとつでもダメになったらばらばらと崩れ去っていく状態なので、バレたらどうしようという気持ちが常にどこかにあるのだと思いました。いつも安心できない状況だと考えたので、その精神状態の不安定さみたいなものと緊張感を表現できたらと思ったんですけど、なかなか気持ちを理解するのが難しい役でした。

Q:主演として、撮影現場で心掛けたことはありますか?

主演として撮影現場をしっかり引っ張っていけたら良かったんですけど、あまりそういうことを考える余裕はなかったです。毎シーン、毎シーン、どういう風に演じたらいいのかにひたすら集中していました。麻美はすごく不安定な役柄で、スカッと明るく楽しいお芝居はあんまりというか、ひとつもなかったので、出番を待っている時間も知らず知らずのうちに静かな感じでその場にいた気がします。むしろベテランの共演者の方が多かったので、皆さんが引っ張ってくださったのと、中田組のスタッフの方々が撮影現場の雰囲気をいつも明るく保ってくださっていたので演じられたという感じです。とにかく撮影をやり切ることに精一杯で、あまり撮影現場を盛り上げたりはできませんでした。

この時期に撮った写真はすべて……

Q:役柄に自分自身の気持ちが左右されることはありますか?

これまではあまり役を引きずるタイプじゃないと思っていたんですが、この時期に撮影した雑誌のスチールなどを見返してみると、なんだかうかない顔をしているように見えました。はじけてないんです(笑)。

Q:出演作が続きますが、どのように決めているのですか?

なるべく断らないようにしています。たぶん、自分のことは自分が一番見えてないのだと思うんです。自分では気付かないようなところも周りの人の方がちゃんと見てくれている。その方々が「今、このタイミングの北川に、この役をやらせたら面白いな」「こういう北川を見てみたい」と考えてくださった結果のオファーだと思いますので、やりたいと積極的に思えるものもあれば、自分にできるか不安に思うものもありますが、とりあえずはやってみる。もう片っ端から、スケジュールの許す限り、依頼が来たものから順番にやります。それはこれまでもそうでしたし、これからもそうです。「これが得意だから」とそればかりやることもなければ、やれるかどうか想像できなくてもやります。

毎日一生懸命に前を向いて生きていきたい

Q:自分で「こういう役をやりたい」と思うことは?

自分で企画することはないです。自分が思いつくことはたかが知れているので、誰よりも自分をわかってくれている人が持ってきてくれる話をやるのが一番だと思います。自分でこういう風になりたいとかも特にないです。

Q:女優業に限らず、こういう女性でいたいという指針などはありますか?

これから、年齢的にさまざまな選択を迫られていくと思います。今は夫婦共働きですが、これからいろいろな岐路に立たされていくことでしょう。どんな局面においても、なるべくどっしりと構えて、慌てずに前だけを向いていけたらいいと思っています。割と「これでいいのかな?」「あの時、こうすれば良かったのかな?」「自分のこういうところがいけなかったんじゃないかな?」と考え始めると、止まらなくなってしまうタイプなんです。何も考えず、仕事などに打ち込んでいると大丈夫だったりするので、考えすぎずに日々一生懸命に生きていきたい。あと健康でいたいです(笑)。

取材・文:高山亜紀 写真:高野広美