マーベル・コミック『スパイダーマン』の人気ヴィラン(悪役)、ヴェノムを主人公にした『ヴェノム』(11月2日公開)。マーベル映画を通して初の悪役主人公ということもあって、公開前からの注目度が高く、すでに公開された地域での全世界興収は4億6,000万ドルを突破しています。

『スパイダーマン』の実写化作品と言えば、これまでに6本が制作されていますが、どの作品にも個性的なヴィランが登場し、スパイダーマンと並ぶ人気を誇っています。彼らの多くが元は普通の人間であり、それぞれが悪に陥るに至る悲しい過去を背負っていました。ここでは、これまでスクリーンを賑わせてきた人気のヴィランたちをピックアップし、その特徴やバックボーンを紹介していきたいと思います。

サム・ライミ版『スパイダーマン』に登場した個性派ヴィランたち

『死霊のはらわた』(1981年)や『ギフト』(2000年)などの作品で、カルト的な人気を得ているサム・ライミ監督が、2002年から2007年にかけてメガホンをとった『スパイダーマン』シリーズ。3作品が製作され、世界中で大ヒットを記録しました。

シリーズの中でも特に個性的なヴィランといえば、『スパイダーマン2』(2004年)に登場するドクター・オクトパスでしょう。“オクトパス(タコ)”という名前が示す通り、四肢と背中にある機械のアームで合計8本の手足が特徴です。元々はオットー・オクタビアスという名の天才物理学者でしたが、核融合の実験中に装置が暴走。実験は失敗に終わり、愛する妻を亡くしたうえに資金援助も絶たれてしまいます。そして、彼の小脳に直結していたアームの制御チップが破壊されたことで、自我を持ったアームに精神を支配されてしまい、スパイダーマンと対立することになるのです。愛妻家としての一面があったり、成功を夢見る野心的なところもあり、人間味あふれるキャラクターとして描かれています。

シリーズ3作にわたって登場する、主人公ピーター・パーカーの親友ハリー・オズボーンも忘れてはいけません。彼の父である軍事企業「オズコープ社」の社長ノーマンは、第1作に登場したヴィランのグリーン・ゴブリンで、スパイダーマンとの死闘の末に死亡。そのことが、ハリーのスパイダーマンに対する激しい憎悪を生みだし、『スパイダーマン3』(2007年)にて“ゴブリン”を引き継ぎ、グライダーや爆弾など、多彩な武器を駆使しながら、親友に戦いを挑むことになります。

リブート版『スパイダーマン』にも人気ヴィランが続々

サム・ライミ版からキャストやスタッフを一新して、2012年から公開されたのが俗に“リブート版”と呼ばれる『アメイジング・スパイダーマン』シリーズです。2012年の1作目にはヴィランとしてリザードが登場します。もともと“爬虫類の再生能力”を人間に転用する薬品の開発に従事する優秀な科学者でしたが、自らの体で未完成の薬を実験したことから、体に異変が……。爬虫類を思わせる皮膚と、発達した筋肉、人間のふた周りほどの体躯で、スパイダーマンの前に立ちはだかります。

『アメイジング・スパイダーマン2』(2014年)に登場するヴィランの一人が電気人間のエレクトロ。本来はマックスという名の男性で、電気技師としてオズコープ社で働いていましたが、冴えない風貌と性格から孤独を抱えて生きてきました。そんなマックスは、スパイダーマンに命を助けられたことで彼を友人だと思い執着するようになります。そんな時、作業中の事故が原因で、電気を自在に操る電気人間として生まれ変わり暴走。駆けつけたスパイダーマンからも攻撃されたことで、彼への憧れは激しい憎悪に変わっていくのです。

(C)&TM 2018 MARVEL

正義と悪が共存するヴィラン“ヴェノム”がついに主役デビューへ

いよいよ公開が間近に迫った『ヴェノム』。本作の主人公で敏腕記者のエディ(トム・ハーディ)は、人体実験で死者を出しているという「ライフ財団」の真相を追う中で、シンビオートと呼ばれる地球外生命体と出会います。意思を持ったシンビオートはエディの体に寄生。徐々に彼の体を蝕み、ついに一体化。乗っ取られるのか、それとも支配するのか――壮絶なマウント合戦の幕が開きます。

マーベル・コミックを代表するヴィランとして絶大な人気を誇るヴェノムを映像化するため、本作では原作コミックに忠実なデザインでヴェノムを造形。さらに記者としての正義感を持つエディの体を、凶悪な生命体が乗っ取ることで、1つの体に善と悪が同居するという稀有なキャラクターが誕生しました。エディとシンビオートが、物語が進むにつれて“バディ”のように見えてくるのも不思議な魅力です。

ヴェノム

(C)&TM 2018 MARVEL

『スパイダーマン』シリーズはこれまで、悲劇的な境遇を持つヴィランが数多く登場してきました。そんな中で特に人気のあるヴェノムが映画の主人公となることで、これまでにないヒーロー映画になることでしょう。

今後、もしヴィランを主人公としたシリーズが制作されるとしたら、次はどんなヴィランが登場してくれるのか、目が離せません。今回、紹介したヴィラン以外にも、『スパイダーマン』には悲劇的な境遇を持つキャラクターが数多く登場しています。そんな彼らの物語にも注目しながら、シリーズを振り返ってみてはいかがでしょうか?

(文/スズキヒロシ・サンクレイオ翼)