「カワイイ」がもてはやされる昨今。映画やドラマでも愛されキャラのヒロインが圧倒的に多く、そこにピタリと収まる若手女優も多数いる。しかし、悪役として存在感を発揮する若手女優というと、あまり思い浮かばないのではないだろうか? そんな悪女役で頭角を現しつつあると言っていいのが女優、吉本実憂だ。なぜ彼女の演じる“悪女”は魅力的なのか? 11月23日より全国ロードショーとなる主演作『レディ in ホワイト』の公開を前に、彼女へのインタビューとともに紐解いていこう。

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鮮烈な印象を残した『罪の余白』での悪女ぶり

振り返ってみると、吉本がネクストブレイクの若手女優として脚光を浴びることになった『罪の余白』(2015年)は、かなり挑戦的かつ野心的な作品だったかもしれない。

そもそも彼女は、“全日本国民的美少女コンテスト”のグランプリ受賞者。武井咲や上戸彩らを輩出する「清く正しく」が求められる正統派の美少女を選ぶコンテスト出身の彼女が、その清廉なパブリック・イメージとは正反対と言っていい「悪魔」のようなドス黒い心をもった少女を演じた。これは一つのチャレンジと言えるだろう。

結果としては、この試みには先見の明があった。吉本は、スクールカーストのトップに立つ少女、木場咲を熱演。話が進めば進むほど、眼光に鋭さが増し、口調もきつく、モンスターと化していく姿をものの見事に体現。ベテラン俳優とも堂々と渡り合い、大人の男をも翻弄する悪役ぶりで、映画のキャッチコピー「死んだ娘の親友は悪魔でした」通りの非情で性根の腐った少女として鮮烈な印象を残した。

ただし、意外なことに吉本本人は、『罪の余白』で悪い女の子を演じたつもりはないと話す。

「当時はまだ10代で女優としてのキャリアもほとんどありませんでした。正直なことを言うと、まだ右も左もわからず、演じることに精一杯。木場咲という役を生きている間は、気持ちもその立ち振る舞いも彼女になっていますから、彼女はすべて正しいと思っていました。だから『悪魔』とか言われる筋合いはないと(苦笑)。公開時のインタビューも、同じ発言をしていて、記者のみなさんにドン引きされました(笑)。

もちろん客観的に見ると、飛びぬけて悪い人間だとわかるんですけど、咲として存在している分にはさほど罪深いとは思わないというか。演じた身としては、いまだに咲の『正』と『悪』の割合を考えると、『正』の割合が高いです」

レディ in ホワイト 吉本実憂 インタビュー

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ある種の無拓さをもって悪女を演じられる

悪人を悪役と捉えずに、あくまでフラットに演じ、変に悪く見えるような小細工はしない。もしかしたら、その姿勢が「悪役」として吉本が輝く理由の一つかもしれない。変に気負ったり、演じる上での装飾をしない。だからこそ、彼女は毒のある役がよく似合うのかもしれない。

実際、『罪の余白』以降、明るく快活な女の子の役よりも、TVドラマ「表参道高校合唱部!」(2015年)の谷優里亞や、『HiGH&LOW THE RED RAIN』(2016年)のヒロイン・成瀬愛華など、どこか陰のある、心に一つ何かを秘めた役が多くなったと本人も認めている。演じる人物に毒と無垢さを同居させられる彼女が、新たに本領を発揮しているのが『レディinホワイト』だ。

レディ in ホワイト

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“猛毒女子社員”は正義!?

『レディinホワイト』で彼女が演じるのは、どこからその自信が出てくるのか理解できない新入社員の如月彩花。全身が白のスーツがトレードマークの彼女は、入社面接では「私を採らないと損をする」と大口を叩き、「名古屋のGDPを私が上げる」と言い放つ。

入社してもその強気な態度は一向に収まらず、社内では誰も逆らう者はいない上司にも堂々と歯向かう、ゆとり世代の申し子ともいうべき有毒新入社員を小憎らしく演じ切っている。

パワハラ上司VS猛毒フレッシャーズ女子社員という構図によるブラック・コメディの本作は、この両者のパワーバランスが重要である。最終的に、毒をもって毒を制するというところまでもっていく吉本の悪女ぶりは大きな見どころだ。とりわけプライドの高い上司のお咎めに対し、屁理屈をこねて、逆におちょくりまくるシーンでの悪童ぶりは強烈な印象を残すことだろう。

また、高飛車で常識はない彩花だが、おおよその人間が「おかしい」と思いつつも受け流すことに、真正面から自分の意見を述べ、正論をぶつける。自分のおかしいと思ったことは許さない。芯の通った人間として吉本が彩花を存在させたからこそ、単なるブラック・コメディに収まらない日本の企業体質を風刺したドラマにも仕上がった。

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ただ、吉本本人は今回の彩花も悪い人物とは思っていなかったそうだ。

「チラシに『猛毒フレッシャーズ女子』と書かれていて、『なんで!』と思いました。確かに非常識なところはありますけど、最終的には会社にも貢献する。彩花は、むしろ正義じゃないかと思ったんですけどね(笑)。

大塚祐吉監督は『罪の余白』に続いてご一緒させていただいたんですけど、まず言われたのは、『少し太れ』と。理由はいまだに教えてくれないんですけど、とにかく『太れ』と。だから、顔がパンパン。これは彩花をふてぶてしくみせるためだったのかなぁとか考えるんですけど、本当のところはわかりません。

でも、ここまで変な顔を晒したらもう怖いものはないというか。以前は、少しでもよく見えるようにと、モニターの映りを気にする気持ちがちょっぴりあったんですけど、吹っ切れました。今回の彩花役は、今後に活きていくと思っています」

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「悪役は嫌いじゃない。ふだんドラマや映画を観ても、この人物はどんな過去を背負っているのだろうとか、悪役のほうがバックグラウンドが気になる。でも、一人の役者としては悪役に限らず、いろいろな役を演じて、幅を広げていきたいです」

そう話す彼女は、確かにまだ21歳。悪役という一つの役のイメージだけで留まっては女優としてもったいない。でも、一つのイメージを抱かれることは時として大きな武器にもなる。吉本実憂という女優が、「悪い女」役でどんな進化を遂げていくのか。今後も追っていきたい。

(文/水上賢治@アドバンスワークス)