ジャッキー・チェン、64歳。彼は数年前、本格的なアクションからの引退を宣言。しかし今回、本格派アクションの銀幕にまさかの復帰。邦題は『ポリス・ストーリー/REBORN』(11月23日公開)。そう、ジャッキーの代表作のひとつ『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(1985年)の流れを汲むタイトルだ。だが、おなじみの世界の再現ではなく、今までとは一味違う作品への挑戦でもある。ジャッキーの終わらない活劇魂のありように胸が熱くなる快作だ。

今度の舞台は…!? ジャッキー映画史は終わらない

まず冒頭のインパクトが鮮烈だ。病院で生死の境をさまよっている愛娘の元へと車を走らせる、ジャッキー扮する国際捜査官リン。だが、緊急要請が入り、隊長である彼は現場に急行しなければいけなくなる。現場を火の海に変えていたのは異様な風体の黒ずくめの男。その圧倒的なパワーを前にして、リンたち捜査官たちは壮絶な死闘を繰り広げる。凄まじい銃撃戦の果て、リンは自爆覚悟で黒ずくめの男もろとも、炎に包まれる!

ここまでの、息もつかせぬハードコアなガン・アクションは、とにかく容赦ない。雨の降りしきる中、ぬかるみに足をとられながら、凶暴すぎる相手と必死に闘うリンの姿は涙ぐましいほど。弾丸が飛び交う音響も痛さ全開で、万事休す、もはやこれまで! と観念したところで、ようやくメインタイトルが出る。そう、まだ映画は始まってもいなかったのだ。

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考えてみれば、かつても“ジャッキー死す!?”という勘違いを招き寄せる作品があった。だが、イントロダクションで主人公が死ぬはずもない。映画はそこから一気に13年後に飛ぶ。

なんとジャッキー、白髪頭である。成長した愛娘を影から見守っている。重傷を負いながらも一命をとりとめたリンと同じように、あの黒ずくめの男もまだ生きている。黒ずくめの男に娘が狙われることを回避するため、リンはあえて娘と接点を持たないようにしていたのだ。

美しき女子大生へと成長した娘をそっと見つめる、初老のパパ。ジャッキー・チェンならではの情がたんまり感じられる、実にヒューマンな設定である。

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多彩なキャストと作り上げる「待ってました!」のクライマックス

動きたいが、自分の身の上を隠しているため、それほど大胆には動けない。こういうシチュエーションがジャッキーには似合う。すべてを見せきるよりも、ある種の制限の中で奮闘する。そんな人間性にこそ、ジャッキーならではのものがある。

しかも、実はリンはめちゃくちゃ強いわけではない。部下の女性スーの方が、身体能力では優れている。このあたりの描写がニクい。だが、そのスーが慕ってやまない人間的魅力と年輪が彼にはある。俳優ジャッキー・チェンの存在感が説得力をもたらしているのだ。

共演者に花をもたせるあたりもジャッキー流である。事件にかかわるハッカー青年のへなちょこアクションを体現するのは、アイドルユニット「四大天王」出身のショウ・ルオ。成長した娘には、伯母が欧陽菲菲という美少女チェリスト、オーヤン・ナナ。前述のスーを演じるのは本作の脚本にも参加した才能あふれるエリカ・シアホウ。そして、敵の凄腕女性殺し屋を『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013年)のテス・ハウブリックが快演している。

主に周囲の女性たちに見せ場を与えつつ、自分はぎりぎりまで動かない。ジャッキーならではの優しさが滲み出る。

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クライマックスはもちろん、13年前の因縁の黒ずくめの男との再戦。それまで延々ガン・アクションだったが、ここにきてようやく肉弾戦が始まる。いよ、待ってました! と声をかけたくなるようなジャッキーの勇姿である。ここで、わたしたちはあらためて知ることになる。わたしたちが、どうしてジャッキーに惹かれるかを。

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ジャッキーは強いから愛されるのではない。愛嬌があるから、だけではない。どこかユーモアを絶やさずにいるから、だけでもない。倒されても、倒されても、立ち上がるからなのだ。

しかも、不死身なわけではない。誰が見たって満身創痍なのに、それでも立ち上がる不屈さが、ジャッキーならではのヒューマニティと合致し、「そんなの当たり前」のレベルにまで昇華されているからこそ、わたしたちは心からの喝采を送りたくなるのである。

もちろん老けメイクなのだが、白髪頭でもジャッキーはジャッキー。むしろ、彼独自のネバー・ギブ・アップ精神は、より浮き彫りになった感がある。彼が何歳になろうとも、わたしたちは叫ぶだろう。「ジャッキー、がんばれ!」と。

(文/相田冬二@アドバンスワークス)