芥川賞作家・中村文則の処女小説を原作とし、銃に魅入られた男・トオルの狂気をスリリングに描いた『銃』。本作で主人公のトオルを熱演したのは、村上虹郎。デビュー当初こそ、俳優の村上淳を父親、アーティストのUAを母親に持つ背景が話題となったが、現在は圧倒的な存在感を武器に、若手きっての実力派俳優として確固たるポジションを確立している。
『銃』の企画・製作を手掛けた奥山和由も、村上虹郎の才能に魅了されたひとりだ。奥山和由は、『いつかギラギラする日』(1992年)や『ソナチネ』(1993年)などを手掛けた映画界のレジェンド。村上虹郎は、キャストとスタッフが誰ひとり決まっていない段階で、出演を快諾したそうだ。トオルの危うさを男の色気全開で表現し、新たな代表作を生み出した村上虹郎にお話を伺った。

監督と僕のふたりがトオルとして存在していた

Q:この映画へ出演することになった経緯を教えてください。

深田晃司監督の『さようなら』(2015年)に出演した際、東京国際映画祭のレッドカーペットで、『さようなら』の製作総指揮を務める奥山和由さんと初めて対面しました。そのとき、僕は映画界に入ったばかりということもあり、奥山さんの顔を知らなくて。「奥山です」と話しかけてくださった時に、「えっ、あの奥山さん!?」と面食らったことを覚えています。そのときから奥山さんは『銃』を僕で撮りたいと考えていたそうで、後日、トオル役のオファーをいただきました。

Q:武正晴監督から、どのような演技指導をされましたか?

武監督から、細かい演技指導はありませんでした。武監督はトオルの感情をとても理解していて。撮影現場で多少は演技のすり合わせをしましたが、僕の演技プランを否定されることはなく。まるで、監督と僕のふたりがトオルとして存在しているように感じました。

Q:役作りとしてはどのようなことを?

役を作るというより、原作と台本を読んで、自分の中に湧き出る感情を表現しました。銃は子どもには扱えません。強力な武器だからこそ、人間力が試されます。子どもが武器を持ったら、何が起こるのか。そのことをリアルに描いている物語だと思いました。

父親・村上淳との親子共演で感じたことは?

Q:モノクロ映像ならではの演技の工夫は必要でしたか?

特別な工夫は必要ありませんでした。観る方が分かりやすいように、黒い服を着ているときは、動きを大きくするように意識しました。

Q:写真が大好きな村上さんから見て、モノクロの映像とは?

僕はジム・ジャームッシュの映画が大好きなんです。彼のモノクロ映像は白と黒のコントラストが強くて。『銃』はコントラストが薄いんですが、この作品には合っていると思います。コントラストが強かったら、アート映画に見えすぎてしまっていたかもしれません。

Q:『銃』は、本編が始まった瞬間から観客を一気に作品の世界へと引きずり込みます。トオルが事件現場で銃を拾うシーンはとりわけ印象的ですが、撮影で苦労したところは?

銃を拾うシーンの撮影は大変でした。クレーンで雨を降らしていますが、血のりがぜんぶ流れてしまわないようにしなければならない。血のりの問題はジェル化することで解決しましたが、雨や水の流れ方の問題もあって、僕の演技と映像の折り合いをつけることが難しかったです。すべてにOKが出ないと成立しないシーンでした。

Q:トオルと対峙する男役で、父親の村上淳さんが出演されています。村上虹郎さんのデビュー作『2つ目の窓』以来の親子共演を果たしたお気持ちは?

長く、カット割りも多いシーンですが、とても順調に進んで、1日で撮り終えました。親父の演技はさすがでした。親父は僕の演技を褒めてくれて、ふたりで“この作品に出会って良かった”という話をしました。

Q:奥山和由さんのTwitterに、“村上さんが『銃』と『ソナチネ』に共通点を感じたと発言した”という趣旨のツイートがありました。

『銃』は未熟な男の青春、『ソナチネ』は大人の青春だと思っています。主人公が死へ向かっていくという共通点もあります。2作の主人公は、死にたいわけではないのに、死を渇望していく。『ソナチネ』で北野武さん演じる村川のセリフに、「あんまり死ぬの怖がるとな、死にたくなっちゃうんだよ」というセリフがありますが、真理を突いているなと。個人的に、大好きなセリフです。

Q:最後に、『銃』の魅力はどのようなところにあると思いますか?

『銃』は時代背景を分かりやすく描いていません。大人の男性は、感情の日記を綴った青春映画と捉えるかもしれませんが、性別や観る年齢次第で違う捉え方もできる。ジャンル分けが難しい、普遍性がある作品だと思います。劇場で、『銃』ならではの映画体験をしていただけたら、嬉しいです。

(C)吉本興業

『銃』
11月17日よりテアトル新宿ほか全国公開
配給:KATSU-do、太秦
公式サイト:http://thegunmovie.official-movie.com/
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スタイリスト/松田稜平
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取材・文/田嶋真理 撮影/横村彰