1919年の創刊以来、今年で100年を迎えた『キネマ旬報』。100年という節目の年を記念する特別企画の第1弾として、『キネマ旬報』7月下旬号にて1970年代外国映画のベスト・テンを発表した。

今回はそれに続くシリーズ第4弾、1980年代日本映画のベスト・テンを『キネマ旬報』1月上旬号で発表! 世の中が空前の好景気へと向かう一方で、興行的には低迷、だが同時に、従来の常識にとらわれない、多種多様な作品が生み出された時代でもある。本誌レギュラーの評論家・ライターなどを中心とした118名からいただいたアンケートを基にお届けする。

第1位 家族ゲーム

(C)1983 日活/東宝
1983年キネマ旬報ベスト・テン第1位

日本映画史に森田芳光の名を刻んだ記念碑的作品。登場人物5人が横長のテーブルに横一列に並んで食事するシーンは、見る者を驚嘆させた。日本家屋の居間は小津や成瀬作品の座卓(ちゃぶ台)に象徴されてきたが、『家族ゲーム』が新たなイメージを造形した。ユーモアとブラックを融合させたホームドラマというところに、森田の才気とセンスが垣間見える。(文=植草信和)

第2位 ツィゴイネルワイゼン

(C)1980 写真提供:リトルモア
1980年キネマ旬報ベスト・テン第1位

伝説からの完全復活を遂げた新生・鈴木清順の耽美的怪異譚。それも移動型ドーム上映という意表を衝く復活劇。キッチュでモダンな清順美学は、新たに清順歌舞伎に装いを変え、レトロモダンに彩られた大正ロマネスクと夢うつつの幽玄美を演出する。次々と繰り出される謎めいた怖さとエロティシズムは、めくるめく外連によって観客を酔い惑わす。(文=木全公彦)

第2位 ゆきゆきて、神軍

(C)疾走プロダクション
1987年キネマ旬報ベスト・テン第2位

政治的社会的な問題から個人的日常的な視点へと変化していった1980年代以降の日本ドキュメンタリー映画史の中で、その両岸を往還して戦後日本の欺瞞を突いた傑作。昭和天皇や田中角栄に攻撃を企てる奥崎の行動原理は、宗教原理主義のテロリストと同じで容認しがたいが、時に見せるチャーミングな人間的魅力が作品を支えている。被写体とカメラがせめぎ合う緊張感が素晴らしい。(文=植草信和)

第4位 戦場のメリークリスマス

1983年キネマ旬報ベスト・テン第3位

戦争を背景に、発狂する日本軍と冷静な外国人捕虜たちという単純な対立構造を掘り下げ、恥や正義の意識や過去など、個々の人間への理解を深めていく中、葛藤を経て、美しい和解へと到達するグローバルな作品。主演のデイヴィッド・ボウイをはじめ、戸田重昌の美術、成島東一郎の撮影も異彩を放つ。ビートたけし、坂本龍一を映画界に引き込んだ功績も大きい。(文=石村加奈)

 

5位以下の作品は『キネマ旬報』1月上旬特別号に掲載。1919年の創刊以来今年で100年を迎える『キネマ旬報』が「1980年代ベスト・テン 日本映画篇」を発表。誰もが知るあの名作もランクイン!? 評論家・ライターの作品解説とともに掲載している。

制作:キネマ旬報社

 

『家族ゲーム 〈HDニューマスター版〉』
■監督:森田芳光
■出演:松田優作、伊丹十三、由紀さおり、岡本かおり、宮川一郎太、戸川純、伊藤克信
■発販:キングレコード
(C)1983 日活/東宝

 

『ゆきゆきて、神軍』
■監督・撮影:原一男
■出演:奥崎謙三
■発売:アドネス/販売:NBCユニバーサル・エンターテイメント
(C)疾走プロダクション

 

『戦場のメリークリスマス』
■監督・脚本:大島渚
■出演:デイヴィッド・ボウイ、トム・コンティ、坂本龍一、ビートたけし
■発売・販売:紀伊國屋書店
(C)大島渚プロダクション